政治資金オンブズマン

馬場伸幸幹事長時代の「文書通信交通滞在費」75%私物化と「身を肥やして誕生した政党」元代表の「マネーロンダリング」指摘

1.前回の投稿

衆参の国会議員には法律に基づき公金が原資の「文書通信交通滞在費」(月100万円、年間1200万円)が交付されています。その使途を公表することは義務付けられてはいませんが、「日本維新の会」はその使途を自主公表し、それが「身を切る改革」だと広く宣言しています。

 しかし、「文書通信交通滞在費」は法律の定めによると、議員の公的活動にしか支出できない公金であるにもかかわらず、「日本維新の会」の国会議員は毎月その残金を政党支部または資金管理団体に違法寄附して私物化してきました。このことは以下で具体的に指摘しました。

日本維新の会が「文書通信交通滞在費」を「政治資金」と説明するのは“公金の私物化”のためだ!

 そこにおいては、「日本維新の会」の衆参国会議員が2015年10月~2019年3月までの期間に受け取った文書通信交通滞在費は、約7.6億円であり、そのうちの約5.7億円、すなわち公金の75%を私物化していたことを紹介しました。

2.今回は「身を肥やしている」馬場伸幸幹事長・現共同代表の場合

 今回は、具体的に特定の国会議員の使途報告書を紹介します。その議員は、これまで幹事長を務めてきた現在の共同代表である馬場伸幸衆議院議員です。

 馬場議員については、これまで以下の投稿において、如何に「身を切る政党」ではなく、「身を肥やす政党」の幹事長であるのか指摘しました。

有名投資家村上世彰氏の維新側への個人寄附を告発(政治資金規正法総枠制限違反)

馬場伸幸維新共同代表の幹事長時代の使途不明金は5年間で1億8773万円超

馬場伸幸維新幹事長時代の高額使途不明金から浮かび上がる疑惑(2019年)

2020年の馬場伸幸・維新幹事長時代の高額使途不明金から浮かび上がる疑惑

 今回は、馬場議員も、「文書通信交通滞在」の約75%を政党支部等に繰入(寄附)して私物化してきたこと、また、馬場議員の繰入(寄附)の目的も「人件費」という法律が認めていない支出目的を明記し続けていたことを紹介します。さらに、「身を肥やし生した政党」の橋下徹・元代表でさえ「日本維新の会」の手口を「マネーロンダリング」等と指摘し批判していることを紹介します。

 なお、2015年は1月からではなく、「維新の党」から分裂した10月からです。2016年からは毎月の使途報告書がインターネット公表されていますが、2021年は11月分と12月分はまだ公表されておらず、10月分までしか公表されていません。

3.馬場幹事長も約75%を私物化している!

 馬場伸幸衆議院議員の「文書通信交通滞在費」の毎月の使途報告書を確認したところ、資金管理団体への繰入はありませんでしたが、同党の他の議員同様、政党支部への繰入を行っていました。

 より具体的に紹介すると、馬場伸幸議員・幹事長は、2015年10月から同年12月までの3か月間において300万円全額を支出しており、そのうち、253万円超、つまり84%強を政党支部に繰入(寄附)し公金を私物化していました。すでに紹介した同党議員全員の2015年10月~2019年3月までの期間における私物化の75%よりも高い割合です。幹事長が率先して高い割合で私物化していたのです。

 そもそも同党は、すでに紹介したように、2015年秋に「身を肥やして誕生した政党」としてスタートしていました。

分派「おおさか維新の会」議員グループの政党交付金の脱法的残金国庫返還逃れ(2015年12月~2016年3月)と「身を肥やして誕生した政党」

 その政党の幹事長らしい高い割合の私物化です。

 2016年以降はその割合が下がりますが、72%弱(2021年10月まで)から76%強(2018年)の間です(下記の一覧を参照。毎月のものは末尾で紹介していますので、ご覧ください)。

 2015年10月から2021年10月までを集計すると、7250万円の「文書通信交通滞在費」を支出し、そのうちの5427・3万円弱を政党支部に繰入(寄附)していました。馬場議員の繰入(寄附)の割合は平均74・86%でした。2015年10月~2019年3月までの同党の全国会議員の平均の75%と同じでした。

馬場伸幸衆議院議員の「文書通信交通滞在費」の毎年の使途

支出の合計政党支部への
繰入(寄附)
支出合計に占める
繰入(寄附)割合
主な内訳備考
2015年合計3,000,0002,531,35684.382,531,356人件費
2016年合計12,000,0008,897,64474.158,897,644人件費
2017年合計12,000,0009,126,73476.069,126,734人件費
2018年合計12,000,0009,145,99176.229,145,991人件費
2019年合計12,000,0008,918,06274.328,918,062人件費
2020年合計12,000,0008,853,95573.788,853,955人件費
2021年合計9,500,0006,799,17071.576,799,170人件費
総計72,500,00054,272,91274.8654,272,912人件費

4.繰入(寄附)の目的の点でも違法

 すでに紹介した法律によると、「文書通信交通滞在費」は、地方議会における政務活動費と基本的に同質のものであり議員の公的活動にしか支出できない公金ですので、政党支部に繰入(寄附)すること自体が違法ですが、馬場議員の場合は、繰入(寄附)の目的の点でも、違法の指摘ができます。

というのは。政党支部への繰入(寄附)の全額が「主な内訳」額と同額で、全額「人件費」(または「人件費(社会保険料含む)」)だったと明記されているからです。

 「文書通信交通滞在費」は、議員の公的な「文書」「通信」「交通」「滞在」にしか支出できない公金ですから「人件費」としては支出できないからです。馬場議員の場合、繰入(寄附)の目的の点でも違法に私物化していたことが確認でします。

 もっとも、これに対しては、法律には「」の文言があるので、上記のような限定はないとの反論が予想されます。

国会法第38条 議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなすのため、別に定めるところにより手当を受ける。

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第9条第1項 各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなすのため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。

しかし、上記法律の条文中の「公の書類を発送し」は「文書通信交通滞在費」のうちの「文書」に相当し、「公の性質を有する通信をなす」は「文書通信交通滞在費」のうちの「通信」に相当し、「等」は「文書通信交通滞在費」のうちの「交通」「滞在」に限定されています(この点では繰入(寄附)していないで使途報告されている支出についても違法な支出はないかチェックする必要がありますが、ここでは割愛します)。

5.橋下徹・元代表さえ維新の手口を「マネーロンダリング」等と批判

 「日本維新の会」が「文書通信交通滞在費」(文通費)を政党支部・資金管理団体に違法に寄附している問題は、寄附する議員がその寄附を受領する政党支部・資金管理団体の代表として領収書を発行する「セルフ領収書」の表現を通じて2年半前から問題視されていました。例えば以下。

「政治どこに消えた!?維新の文通費 政党助成金と二重受け取り、虚偽記載…「身を切る改革」の醜い中身」2019年07月19日

「維新に5.7億円もの“セルフ領収書”疑惑 参院選直撃は必至」日刊ゲンダイ2019/07/19 14:50

 そしてついに、「身を肥やして誕生した政党」を創立したときの代表の橋下徹・元大阪市長は、「日本維新の会」の「文書通信交通滞在費」(文通費)の私物化について、やっと昨2021年の数議員総選挙(10月31日)後に以下のように自らの「最大の責任」を認める形で批判するに至っています。

午後1:59 · 2021年11月23日·Twitter for iPhonehttps://mobile.twitter.com/hashimoto_lo/status/1463009251052630016

維新国会議員団の文通費の主張もまやかし。セルフ領収書でどうやって精算の有無が分かるの?経費の意味を分かっていない証。「政治団体に入れれば透明化する」のバカのひとつ覚え。透明化のみならず使用基準の明確化と精算が必要なのに。こんな主張、世間に通るわけがない。民間にバカにされるだけ。

午後2:00 · 2021年11月23日·Twitter for iPhonehttps://mobile.twitter.com/hashimoto_lo/status/1463009490480275457

セルフ領収書方式は僕が代表のときに国会議員に妥協して認めた負の遺産。だから僕に最大の責任あり。しかしそういうことを知らずに堂々と正当化する維新国会議員には呆れる。今までは維新国会議員が世間で注目されていないから良かったが、今後世間が注視したら大笑いされるだけ。

午後9:34 · 2021年12月3日·Twitter for iPhone(https://mobile.twitter.com/hashimoto_lo/status/1466747673592365060)

維新国会議員団の自分の政治団体への寄付はマネーロンダリングです。既存の政治資金と文通費を混在させて使途基準を曖昧にし、精算・返金を分からなくさせます。維新国会議員団はまずここを改革しなければ説得力がありません。

6.元代表の指摘・批判を今回も無視するようだ!

 2015年に「維新の党」から分派「おおさか維新の会」が作られましたが、そのときに橋下徹元代表が政党交付金の残金を国庫に返還させると公言したにもかかわらず、同党は、パーパー団体「なんば維新」をトンネルにして返還逃れをしていました。

分派「おおさか維新の会」議員グループの政党交付金の脱法的残金国庫返還逃れ(2015年12月~2016年3月)と「身を肥やして誕生した政党」

 その時と同じで、「日本維新の会」は「文書通信交通滞在費」の点でも橋下元代表の指摘・批判を無視するのでしょう。同党からは、未だにその批判に応えて政党支部・資金管理団体への繰入(寄附)の中止とこれまでの繰入(寄附)額を国庫返還するとの声は聞こえません。やはり今後も同党は公金の私物化・マネーロンダリングを続ける「身を肥やす政党」のままのようです。

7.馬場伸幸衆議院議員の文書通信交通滞在費の毎月の使途

年月支出合計 (円)政党支部への
繰入(寄附)(円)
主な内訳(円)備考
2015年10月1,000,000812061812061人件費
11月1,000,000877,378877,378人件費
12月1,000,000841,917841917人件費
2015年合計3,000,0002,531,3562,531,356人件費
2016年1月1,000,000757,432757432人件費(社会保険料含む)
2月1,000,000741,073741073人件費(社会保険料含む)
3月1,000,000572,122572,122人件費
4月1,000,000732,412732,412人件費
5月1,000,000762,470762,470人件費(社会保険料含む)
6月1,000,000755,791755,791人件費(社会保険料含む)
7月1,000,000774,833774,833人件費(社会保険料含む)
8月1,000,000738,384738,384人件費(社会保険料含む)
9月1,000,000783,859783,859人件費(社会保険料含む)
10月926,453706,457706,457人件費(社会保険料含む)
11月961,514700,111700,111人件費(社会保険料含む)
12月1,112,033872,700872,700人件費
2016年合計12,000,0008,897,6448,897,644人件費
2017年1月1,000,000764,295764,295人件費
2月1,000,000771,133771,133人件費
3月1,000,000771,056771,056人件費
4月1,000,000755,432755,432人件費
5月1,000,000775,416775,416人件費
6月1,000,000746,050746,050人件費
7月1,000,000746,745746,745人件費
8月1,000,000716,280716,280人件費
9月1,000,000768,453768,453人件費
10月1,000,000781,446781,446人件費
11月1,000,000779,260779,260人件費
12月1,000,000751,168751,168人件費
2017年合計12,000,0009,126,7349,126,734人件費
2018年1月1,000,000765,551765,551人件費
2月1,000,000779,043779,043人件費
3月1,000,000762,679762,679人件費
4月1,000,000762,679762,679人件費
5月1,000,000786,412786,412人件費
6月1,000,000765,065765,065人件費
7月1,000,000751,280751,280人件費
8月1,000,000767,052767,052人件費
9月1,000,000687,847687,847人件費
10月1,000,000771,427771,427人件費
11月1,000,000782,434782,434人件費
12月1,000,000764,522764,522人件費
2018年合計12,000,0009,145,9919,145,991人件費
2019年1月1,000,000773,529773,529人件費
2月1,000,000784,272784,272人件費
3月1,000,000765,008765,008人件費
4月1,000,000838,570838,570人件費
5月1,000,000716,052716,052人件費
6月1,000,000693,229693,229人件費
7月1,000,000773,572773,572人件費
8月1,000,000649,687649,687人件費
9月1,000,000604,844604,844人件費
10月1,000,000774,301774,301人件費
11月1,000,000772,716772,716人件費
12月1,000,000772,282772,282人件費
2019年合計12,000,0008,918,0628,918,062人件費
2020年1月1,000,000773,358773,358人件費
2月1,000,000767,301767,301人件費
3月1,000,000762,547762,547人件費
4月1,000,000749,469749,469人件費
5月1,000,000788,008788,008人件費
6月1,000,000828,409828,409人件費
7月1,000,000588,953588,953人件費
8月1,000,000729,682729,682人件費
9月1,000,000729,793729,793人件費
10月1,000,000729,649729,649人件費
11月1,000,000690,691690,691人件費
12月1,000,000716,095716,095人件費
2020年合計12,000,0008,853,9558,853,955人件費
2021年1月1,000,000746,268746,268人件費
2月1,000,000730,575730,575人件費
3月1,000,000714,173714,173人件費
4月1,000,000724,961724,961人件費
5月1,000,000734,970734,970人件費
6月1,000,000743,894743,894人件費
7月1,000,000724,543724,543人件費
8月1,000,000726,778726,778人件費
9月1,000,000707,742707,742人件費
10月500,000245,266245,266人件費
2021年合計9,500,0006,799,1706,799,170 

馬場議員は、2021年10月交付された100万円のうちの50万円を次月に繰り越しています。

(つづく)

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