政治資金オンブズマン

有名投資家村上世彰氏の維新側への個人寄附を告発(政治資金規正法総枠制限違反)

はじめに

先月(2021年11月)下旬までには、昨年(2020年)分の政治資金収支報告書のほとんどがインターネット公表されました。総務省は同省に提出されたものをネット公表しました。そこには、「日本維新の会」本部の同年分政治資金収支報告書も含まれていました。大阪府選挙管理委員会も、同委員会に提出されたものをネット公表しました。そこには、日本維新の会の各支部の同年分政治資金収支報告書も含まれていました。

私たちは、ネット公表されたそれらの収支報告書を調査・分析しました。他の都道府県選管がネット公表した日本維新の会の支部のものも調査・分析しました。

1.個人寄附の総枠制限違反を発見し告発

その結果の一つとして重大なことがわかりました。

旧「村上ファンド」で有名な投資家村上世彰氏は、

①昨2020年10月に日本維新の会本部に2000万円を寄附し、

②その翌日には、日本維新の会の幹事長(当時)の政党支部に150万円を寄附していました。

しかし、政治資金規正法が定める、個人の政党への寄附の総枠制限は、2000万円です。

したがって、それを超える150万円の寄附は政治資金規正法に違反します。

同法によると、寄附した村上氏や、それを受領した者のほか、受領した者の団体も処罰(ただし団体は罰金のみ)の対象になっていますし、違法な寄附(150万円)は没収されると定められています。

そこで、私たち研究者11名は、村上氏、馬場議員、政党支部の会計責任者、政党支部を刑事告発することにし、昨日(2021年12月10日)、告発人代表とその代理人弁護士代表で告発状を大阪地方検察庁特捜部に提出しました(告発人はさらに増えそうです)。

告発状は、以下です。

個人献金総枠違反告発状20211210

 

2.馬場議員の弁明

私たち告発人・告発代理人は、上記告発状提出2日前の8日正午過ぎに、上記告発をする旨、大阪地裁の司法記者クラブに連絡したところ、馬場議員は、同日午後5時49分自らのツイッター上に「【ご報告】令和2年分政治資金収支報告書の訂正について」を公表しました(https://mobile.twitter.com/baba_ishin/status/1468502968005984260

その内容の一部は報道されました。

弁明の内容を箇条書きすると、以下の通りです。

①昨年10月、村上世彰氏が党(日本維新の会本部)及び馬場幹事長に対し個人献金を申し出た。

②その際、村上氏は、党(日本維新の会本部)に対しすでに上限額(2,000万円)の献金をする意思を示していたので、馬場幹事長への献金は政党支部(日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部)ではなく個人後援会(馬場伸幸後援会)に行い、「実際馬場伸幸後援会の銀行口座」に振り込んだ。

③その経過については、事務方同士で行ったメールのやり取り等もすべて残っている。

④村上氏は、上限額を超える寄附をする意図がなかったことは確実である。

⑤しかし、馬場事務所のミスにより、村上氏が振り込んだ献金を政党支部への寄附として誤って計上し、収支報告書にも誤記した。

⑥12月1日に政党支部と馬場伸幸後援会の両政治団体の収支報告書の訂正を届け出た。

 

3.上記弁明は真実とは言い難くおよそ信用できない

前述の馬場議員の弁明は、到底真実とは言い難く、現実離れしたものです(なお、12月1日の訂正は政治資金規正法違反の寄附受領の件で取材を受けたので馬場事務所は訂正したようです)。

第一に、村上氏が本当に「馬場伸幸後援会の銀行口座」に金150万円を振り込んでいたら、当該後援会が村上氏には領収書を発行し、それらに基づき会計帳簿にその旨を記載して、それに基づいて収支報告書も記載したはずです。にもかかわらず、入金されていない政党支部の会計帳簿に金150万円の寄附収入を計上して収支報告書に記載するミスを犯すことなどありえないでしょう。たとえ、そのようなミスをしたとしても、後援会と政党支部の各収支も各残高も合わないことになるはずdすから、必ずミスに気付いていたはずであり、支部の収支報告書の作成段階で気が付き、訂正するはずです。

第二に、馬場議員側は、2015年分以降の政治資金収支報告書を見ると、個人からの寄附は全て政党支部で受けており、後援会では一切受けていません。昨2020年も同様です。したがって、村上氏には政党支部の口座情報を伝え、村上氏は、伝えられた政党支部の口座に金150万円を振り込んだというのが真実であると思われます。そして、寄附を受けた政党支部は、村上氏に領収書を発行しているはずです。もしも村上氏が後援会に寄付するつもりだったら、領収書の発行者が政党支部になっていることに驚き、その領収書を突き返して後援会の領収書を発行するよう求めていたはずです。しかし、それもしていないのです。村上氏は政党支部に寄附する故意を有し、馬場議員側は政党支部で寄附を受領する認識を有していたことを間違いではないと思われます。

 

4.領収書、会計帳簿、金融機関口座等の捜査を!

馬場議員の弁明は信用できませんが、馬場議員は、村上氏が党本部に2000万円の寄附をしたことを知らなかったとは弁明せず、村上氏が党本部に2000万円の寄附をしたことを知っており、それが政治資金規正法の定める個人寄附の上限額だと知っていたと認めました(上記弁明の②)。これは重要だと思っています。

検察は、村上氏が受け取った領収書、馬場議員の政党支部と後援会の会計帳簿、送金銀行口座、あるとされている事務方同士の間で送信・受信された電子メールを強制捜査で確認して、政治資金規正法違反事件の真相を解明していただき、刑事事件として立件していただきたい。国会議員側の収支報告書訂正で犯罪を不問にする「不当な特権」を許してはなりません。

なお、告発人代表・代理人代表は、検察に対し上記告発状と一緒に告発補充書を提出しました。

以上。

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