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「類は友を呼ぶ」~ 政党交付金残金6954万円の国庫返還逃れの松沢成文氏(2018年、2019年)を入党させ当選させた「身を肥やして誕生した政党」

はじめに(「類は友を呼ぶ」)

 「日本維新の会」が政党交付金(税金)についてどのような「身を切る改革」を提案しているのか、あるいは率先してどのような「身を切っている」のか、検証しましたが、その実態は、まったく「身を切ってはいない」どころか、脱法的な迂回寄附の手口により、政党交付金の残金の国庫返還逃れをしていた実態を紹介し、「身を切る政党」とは真逆の「身を肥やして誕生した政党」だったことを紹介しました。

「日本維新の会」も政党交付金の「身を切る改革」なしで残金を国庫に未返還(2020年は約15・4億円)

分派「おおさか維新の会」議員グループの政党交付金の脱法的残金国庫返還逃れ(2015年12月~2016年3月)と「身を肥やして誕生した政党」

 「日本維新の会」の国会議員ではなかった時に、脱法的迂回寄附の手口により政党交付金の残金の国庫返還逃れをしていた議員がいました。「日本維新の会」は、この国会議員を入党させ、2019年の参議院通常選挙で公認候補にして当選させたのです。まさに「類は友を呼ぶ」

 今回は、その議員がどのように政党交付金の残金の国庫返還逃れをしていたのか、紹介します。その議員は松沢成文議員(当時)です。

1.「日本維新の会」に入党・公認されるまでの略歴

 松沢成文氏は、神奈川県議会議員を経て1993年7月の衆議院総選挙に神奈川2区より「新生党」公認で立候補し当選し、それ以降、「新進党」「民主党」公認で立候補し当選を繰り返した後、2003年の神奈川県知事選に立候補(無所属)して当選、2007年には知事再選。2011年4月、神奈川県知事を退任後、筑波大学客員教授に就任。2012年11月の東京都知事選挙に立候補し落選しました。

 翌2013年7月の参議院選挙に神奈川県選挙区より「みんなの党」公認で立候補して当選し、翌2014年11月「みんなの党」が解党した後に「次世代の党」に参加(副党首、党幹事長)したものの翌2015年8月「次世代の党」を離党して無所属になり、2017年9月「希望の党」結党に参画しましたが、翌2018年5月、同党は分裂し、新たに「希望の党」を結党し代表に就任しました。

 しかし、松沢成文氏は、翌2019年5月「希望の党」代表を辞任し、翌6月に同党を離党して「日本維新の会」に入党し、翌7月の参議院選挙に神奈川県選挙区より「日本維新の会」公認で立候補し再選されたのです。ただし、2021年には横浜市長選挙に立候補し落選しました(松沢成文氏のプロフィール(https://www.matsuzawa.com/profile/))。

2.政党交付金の残金約6954万円の国庫返還逃れ

 松沢成文氏が代表を務めた「希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部」は2019年に解散しています。

 その2019年分政党交付金使途報告書によると、「希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部」は、政党交付金の支部基金として約1454万円余りを保有しており、同年5月末までに「希望の党本部」から計5500万円の政党交付金の交付を受けていましたが、合計約6954万円全額を使い切って解散しました。

 同支部は、その際、解散までに計6954万円余り全額を2つの政治団体に寄付していました。同支部から寄付を受けた政治団体とは、一つは「地域政経研究会」であり党支部から1000万円の寄付を受領していました。もう一つは「神奈川力」であり同支部から計5954万円余りの寄付を受領していました

希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部(代表・松沢成文)の政治団体への寄付供与(2019年)

支出の目的政治資金うち政党交付金年月日支出を受けた団体名
寄附10,000,000円10,000,000円2019年3月27日地域政経研究会
寄附10,000,000円10,000,000円2019年3月27日神奈川力
寄附34,737,462円34,737,462円2019年6月4日神奈川力
寄附14,542,790円14,542,790円2019年8月13日地域政経研究
寄附320,827円262,538円2019年11月28日地域政経研究
合計69,601,079円69,542,790円

3.休眠状態に近い2つの政治団体を利用する手口

 「神奈川力」は代表が松沢成文議員であり、主たる事務所の所在地も会計責任者も電話番号も「希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部」のそれらと全く同じでした。

 「地域政経研究会」は松沢議員の資金管理団体であり、主たる事務所の所在地は東京地内ですが、電話番号を含め「神奈川力」と全く同じでした。

松沢成文議員の政党支部・政治団体の基本情報(2019年)


 
希望の党参議院
神奈川県選挙区第1支部
神奈川力地域政経研究会
主たる事務所の余罪地神奈川県横浜市西区戸部町(以下、略)神奈川県横浜市中区蓬菜町(以下、略)東京都世田谷区奥沢(以下、略)
代表者松沢成文松沢成文松沢成文
会計責任者持丸優持丸優持丸優
事務担当者岡田香織岡田香織岡田香織
政治団体の種類国会議員関係政治団体国会議員関係政治団体資金管理団体、国会議員関係政治団体
党費・会費納入人数0人0人0人

なお、「松沢なりふみ後援会」は代表者以外、「希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部」と同じである。

 「神奈川力」の2016年から2018年までの政治資金収支報告書によると、「神奈川力」は、収入も支出も0円で休眠状態でしたので、「希望の党参議院神奈川県選挙区第1支部」が政党交付金の国庫返還逃れをするために利用した政治団体であったと言っても過言ないでしょう。

 「地域政経研究会」の収入は2016年から2018年まで1000円未満で収入はほとんどありませんでしたので、「神奈川力」と同様の役割を果たした政治団体でした。

松沢成文議員の2つの政治団体の収支(2016年~2018年)

政治団体の名称収支2016年2017年2018年
地域政経研究会本年の収入857円86円70円
地域政経研究会支出0円約200万円約1・1万円
神奈川力本年の収入0円0円0円
神奈川力支出0円0円0円

「地域政策研究会」の2017年の支出のうち200万円は「希望の党」への寄附

 要するに、松沢成文議員は、休眠状態に近かった2つの政治団体を受け皿にして計6954万円余りの政党交付金の国庫への返還逃れを行っていたのです。

 「身を肥やして誕生した政党」であった「日本維新の会」は、「身を肥やした議員」だった松沢議員を入党させ、2019年参議院通常選挙では公認候補として当選させたのです。「身を肥やして誕生した政党」としての体質はその後も維持され続けていたのです。

※以上については、上脇博之『政党助成金、まだ続けますか? ~安倍自民党本部主導選挙・河井議員夫妻「1億5千万円買収事件」から』(日本機関紙出版センター・2021年)の「第2章 政党交付金の基金問題と残金返還逃れ問題」の「第5節 「希望の党」(代表・松沢成文)の支部の残金返還逃れ(2018年、2019年)」の多くの記述を、出版社の担当者の了解を得て転載させていただき、本ブログ投稿用に若干の加筆修正を行いました。

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