２０２０年の馬場伸幸・維新幹事長時代の高額使途不明金から浮かび上がる疑惑

はじめに

（１）「日本維新の会国会議員団」の「政策活動費」使途不明金問題の既投稿

　「日本維新の会国会議員団」の２０１６年から２０２０年までの政治資金収支報告書を分析しました。その結果、「日本維新の会国会議員団」が「政策活動費」名目で数名の国会議員に寄附支出しており、それが使途不明金になっている問題があることを確認し、以下の２つの投稿をしました。

「身を切る改革」に矛盾する「日本維新の会国会議員団」の使途不明金は５年間で２億円超

馬場伸幸維新共同代表の幹事長時代の使途不明金は５年間で１億８７７３万円超

さらに、当該使途不明の金額が一番多かった２０１９年に絞って分析した結果についても１回投稿しました。

馬場伸幸・維新幹事長時代の高額使途不明金から浮かび上がる疑惑（２０１９年）

（２）二番目に高額だったのは２０２０年

　今回は、「日本維新の会国会議員団」の上記使途不明金が一番高額だった２０１９年（５８６５・８万円）の次に高額だった２０２０年（４４９７・２万円）に絞って分析して見ましょう。

２０２０年は、馬場伸幸幹事長（当時。現在は共同代表）が受領して使途不明金になっている「政策活動費」名目の寄附も２０１９年（５６００万円）に次いで高額の４２８０万円でした。

それぞれの一覧表を再掲しておきましょう。

2016年～2020年の「日本維新の会国会議員団」の「政策活動費」名目での

国会議員への寄付支出（使途不明金）　　　　　　　　

馬場伸幸幹事長が「政策活動費」名目で受領した寄附（使途不明金）のまとめ

（３）２０２０年、馬場幹事長に「李下に冠を正さず」の倫理感はあるか？

　前回の投稿では、２０１９年年の「日本維新の会国会議員団」の「政策活動費」名目の寄附（使途不明金）とその受領日に注目して調査した結果をご紹介しましたが、その結果を見ると、使途不明金が密かに日本維新の会にとって重大な出来事に投じられたのではないかとの疑惑を生じさせるがゆえに、「瓜か田でんに履くつを納いれず、李下に冠を正さず」という諺にも反する行為でした。

では、２０２０年は、どうだったのでしょうか？

２．２０２０年の特徴

（１）衆議院総選挙のあった２０１７年よりも多かった２０２０年

　馬場幹事長は、これまでの投稿で確認したように、５年間で受領回数総計１０９回のうち１回の受領額が５０万円未満は１回もないどころか、全て５０万円以上で、３５０万円以上に限定しても１０回ありました。その一覧を再掲しましょう。

馬場伸幸幹事長の受領した寄附額とその回数

（２）馬場幹事長、５月と６月に３００万円２回、４００万円と４５０万円各１回

　以上のうち、２０２０年は３００万円が２回、４００万円が１回、４５０万円が１回あり、それらは５月と６月でした。

２０２０年も国政選挙はありませんでしたが、衆議院総選挙のあった２０１７年よりも上記使途不明金は多かったのです。

（３）大阪市廃止等の是非をめぐる大阪都構想住民投票（１１月１日投開票）とそれに至るまで

　「日本維新の会」にとって２０２０年の重要な出来事とは、何だったのでしょうか？

　それは、大阪市を廃止し特別区再編を行う２度目（１度目は２０１５年）の大阪都構想住民投票（以下「大阪市廃止等住民投票」という）が１１月１日に行われたことでした。

　この点につき、注意を要するのは、前回の投稿で紹介したように大阪維新の会と公明党大阪府本部は２０１９年５月２５日、大阪市廃止等住民投票を実施することで最終合意しており、１年をめどに都構想案をまとめ、２０２０年秋から冬に住民投票を実施する考えだと報じられていたことです（「大阪都構想、再び住民投票　来年秋から冬　維・公が合意」朝日新聞2019年5月25日 20時29分」（https://www.asahi.com/articles/ASM5T53R8M5TPTIL013.html））。

　そして、翌２０２０年４月に、大都市制度(特別区設置)協議会は「特別区制度(いわゆる「大阪都構想」)(案)」をまとめインターネット公表しました（https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/37923/00000000/demaepannhu.pdf）。

　後は、公式の手続きを経て住民投票が行われることになるのですが、なんと自民党大阪府議団は６月16日、大阪府・市の法定協議会で同月19日に採決される大阪都構想制度案に賛成すると表明したのです（「大阪都構想　自民府議団が賛成へ　市議団は反対　党内で態度割れる異例の事態に」毎日新聞 2020/6/16 21:2「（https://mainichi.jp/articles/20200616/k00/00m/040/278000c））。

　８月28日には大阪府の臨時議会で、大阪市を廃止して４つの特別区に再編する大阪都構想の制度案について、大阪維新の会、公明党、自民党の一部などの賛成多数で可決されました（「大阪都構想制度案が府議会可決　自主投票の自民は反対多数　維新と公明は賛成」毎日新聞2020/8/28 18:49（https://mainichi.jp/articles/20200828/k00/00m/040/175000c））。

　また、大阪市議会は９月３日、大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決しました（「都構想案、大阪市議会で可決　11月に再び住民投票へ」朝日新聞2020年9月3日 18時39分（https://www.asahi.com/articles/ASN933DRKN92PTIL024.html））。

　そして、大阪市選挙管理委員会は９月７日、大阪市廃止等住民投票を11月1日投開票と決めました（「都構想の投開票11月1日に　衆院解散なら異例の変更も」朝日新聞2020年9月7日 19時06分（https://www.asahi.com/articles/ASN9765WJN97PTIL012.html?iref=comtop_list_pol_n03））。

（４）東京知事選挙（６月１８日告示、７月５日投開票）

　上記大阪市廃止等住民投票（１１月１日）までの期間には、任期満了に伴う東京都知事選挙が６月１８日に告示され、７月５日に投開票されました。

　日本維新の会は告示前の６月９日、東京都知事選で、無所属での立候補を表明した元熊本県副知事の小野泰輔氏を推薦すると発表しました（「維新、元熊本副知事推薦　都知事選」時事通信2020年06月10日（https://www.jiji.com/jc/movie?p=n002047））。ただし、都知事選では小野氏は落選しました。

３．馬場幹事は李下に冠を正しまくった２０２０年

（１）１月から大阪市廃止等住民投票（１１月１日）までの使途不明金

①その期間の国会議員らの受領した寄附（使途不明金）は３９６９・２万円

「日本維新の会国会議員団」の２０２０年「政策活動費」名目での寄附合計額４２８０万円を決めたのは馬場幹事長でしょう。

同年の大阪市廃止等住民投票の投開票日は１１月１日でした。１月１日から１１月１日までの期間の当該寄附額（使途不明金）は３９６９・２万円でした。２０２０年の使途不明金計４２８０万円の９２・７％を占めてしました。

②そのうち馬場幹事長の受領した寄附（使途不明金）は３７７０万円

馬場幹事長が２０２０年に「政策活動費」名目で受領した寄附額（使途不明金）は前述したように計４２８０万円でした。毎月２回の寄附がなされていました。これを決めたのも馬場幹事長本人でしょう。

そのうち、大阪市廃止等住民投票の投開票日の１１月１日までの上記寄附記額（使途不明金）は計３７７０万円でした。２０２０年の上記使途不明金計４２８０万円の８８・１％を占めました。

　では、以上についてもう少し時期を区分して調査した結果をご紹介しましょう。

（２）１月から４月までの４か月間の使途不明金

①その期間の使途不明金は１１４７・５万円、月平均２８６・９万円

２０２０年の通常国会召集は１月２０日でした。その前から「日本維新の会国会議員団」は国会委員らに「政策活動費」名目の寄附をし、それが最終的に何に使われたのか不明です（使途不明金）。

前述（１）①の３９６９・２万円のうち、１月から４月までの４か月間の上記寄附（使途不明金）は計１１４７・５万円で、月平均２８６・９万円でした（末尾で以上を含む一覧をご紹介いたします。以下、同じ。）。

②そのうち馬場幹事長の使途不明金は１０６０万円、月平均３９０万円

では、以上のうち、馬場幹事長の受領した寄附（使途不明金）は、どれくらいだったのでしょうか？

前述（１）②の３７７０万円のうち、１月から４月までの４か月間の馬場幹事長が受領した上記寄附（使途不明金）は計１０６０万円で、月平均２６５万円でした。

（３）５月１日から大阪市廃止等の大阪都構想住民投票日（１１月１日）までの使途不明金

①その期間の使途不明金は２８２１・９万円、月平均４７０・３万円

５月１日から大阪市廃止等の是非を巡る大阪都構想住民投票日（１１月１日）までの６か月の期間には、前述したように「日本維新の会」が元熊本県副知事の小野泰輔氏を推薦した東京知事選挙があり、７月５日に投開票されました。その選挙を含む６か月の期間の上記寄附（使途不明金）は２８２１・９万円。月平均では４７０・３万円でした。

②そのうち馬場幹事長の使途不明金は２７１０万円、月平均４５１・７万円

以上のうち、５月１日から大阪市廃止等の是非を巡る大阪都構想住民投票日（１１月１日）までの６か月の期間に馬場幹事長が受領した上記寄附（使途不明金）は２７１０万円で、月平均４５１・７万円でした。

具体的に紹介すると、以下の通りです。

（４）１１月２日から年末までの使途不明金

①その期間の使途不明金は５２８万円、月平均２６４万円

１１月２日から年末までの２か月の期間の上記寄附（使途不明金）は５２８万円で、月平均では２６４万円でした。

②そのうち馬場幹事長の使途不明金は５１０万円、月平均２５５万円

以上のうち、１１月２日から年末までの２か月の期間の馬場幹事長が受領した上記寄附（使途不明金）は５１０万円で、月平均２５５万円でした。

（５）まとめ

①以上をまとめると以下のようになります。

②さらに以上のうち５月１日から１１月１日までの期間について、自民党大阪府議団が大阪府・市の法定協議会（６月19日）で大阪都構想制度案に賛成すると表明（６月16日）したことを含む都知事選（７月５日）までの期間と、都知事選後の期間の２つに分けて調査したところ、前者の期間においては、月平均は７４４．８万円弱と高額となり、馬場幹事長分も７２５万円と高額になります。

（６）２０２０年も疑惑を生じさせる高額「政策活動費」使途不明金

　２０１９年と同様、２０２０年も、使途不明金になっていた上記の各寄附先と寄附額を決定したのは馬場幹事長でしょうし、そのうち一番高額・多額を受け取っているのも馬場幹事長でした。

「日本維新の会」にとって重大な出来事があった期間（上記（３）、特に（５）②）は、それ以外の期間（上記（２）（４））よりも月平均額は明らかに高くなっています。あえて高額にしたのでしょう。

　したがって、上記の各出来事、とりわけ上記（３）の各出来事と上記高額な寄附（使途不明金）の事実は、使途不明金が密かにそれら重大な出来事に投じられたのではないかとの疑惑を生じさせますから、「瓜か田でんに履くつを納いれず、李下に冠を正さず」という諺にも反する行為です。

　２０２０年も２０１９年と同じ結果でした。自民党と基本的には同じ体質です。

　「日本維新の会」はすでに紹介したように政治資金の流れについて説明責任を果たす「身を切る改革」を断行すると明言しているのですから、以上の使途不明金について、馬場共同代表（現在）は、幹事長時代における上記受領寄附の使途を具体的に説明してほしいものです。それができないのであれば政治資金の流れについて説明責任を果たす「身を切る改革」という看板は下ろすべきです。

４．「日本維新の会国会議員団」の「政策活動費」名目の寄附と出来事の一覧（２０２０年）

　以下、「日本維新の会国会議員団」の２０２０年分政治資金収支報告書に記載された馬場幹事長を含む国会議員らへの「政策活動費」名目の寄付と出来事の一覧をご紹介いたします（若干両者の間に日にちのずれがあります）。

２０２０年「日本維新の会国会議員団」の「政策活動費」名目の国会議員らへの寄附支出

以上。

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