政治資金オンブズマン

「日本維新の会」も“事実上の企業献金”を受け取っている!

はじめに

 「日本維新の会」の「身を切る改革」の実態を検証するために、これまで特に、税金が原資の「政党交付金」や「文書通信交通滞在費」について取り上げてきました。

 今回は、公金ではない私的な資金の一つである「企業が政治活動のために行う寄附」(政治献金)について「日本維新の会」がどのような立場であるのか、検証いたします。

1.企業団体献金の禁止だけではなく実際に受け取らず!?

 これまでの投稿で紹介したように2015年秋に「維新の党」から分裂して大阪グループを中心に結成されたのが「おおさか維新の会」(のちに、「日本維新の会」)でした。

 「おおさか維新の会 2016参院選マニフェスト」(https://o-ishin.jp/election/sangiin2016/pdf/manifest_detail.pdf)の4頁目において、「維新は他党とここが違う」と強調して「企業団体献金の禁止」が公約に掲げられていましたし、2017年衆議院総選挙のマニフェストに相当する「日本維新の会 2017維新八策」の5頁目と7頁目でも、「企業団体献金を禁止」を公約に掲げていました(https://o-ishin.jp/election/shuin2017/common/pdf/manifest.pdf)。今でも「企業団体献金を禁止」すると政策提言しています(https://o-ishin.jp/policy/act02/)。

 「企業団体献金を禁止」は、企業や労働組合などの政治献金を法律により禁止することを意味しますが、「日本維新の会」の立場は、”企業団体献金を法律が禁止していない現状においても企業団体献金を受け取らない”というのです。

『平成 31 年(令和元年)分政治資金収支報告書の公開にあたり』(https://o-ishin.jp/news/2020/images/7ab2a44f2ecb7b8d68a533169aa8d46ee151d266.pdf)は、以下のように説明していました。

「日本維新の会」は、国家と国民生活のための行財政改革、既得権益の打破、そして、しがらみのない政治を実現するため、党内に規則を定め、政党本部から政党支部に至るまで企業・団体献金の受け取りを禁止しております。

「日本維新の会 政策提言 維新八策 2021」(https://o-ishin.jp/policy/8saku2021.html)も、以下のように同じ立場が表明されています。

 議員、政党への企業・団体・組合等による献金の全面禁止を求め、ネット献金を含めた個人献金を促進します。全面禁止の成立以前においても、所属議員は企業団体献金を受け取らない政治姿勢を堅持します。

 しかし、「既得権益の打破、そして、しがらみのない政治」の実現を目指すのであれば、実質的な(事実上の)企業献金になっている、企業(法人)の政治資金パーティー券(会費)購入の禁止まで求める必要がありますが、「日本維新の会」は、そこまで求めてはいません。また、実際には企業(法人)から政治資金パーティー券(会費)を購入してもらっているのです。

 今回の投稿では、この点を政治資金収支報告書の記載で具体的に確認して、「身を切る改革」における「企業団体献金の受け取り禁止」が看板倒れであるのかを、検証することにしましょう。

2.「大阪維新の会」は「日本維新の会」と完全別組織ではない!

 以下では、「大阪維新の会」が企業から政治資金パーティー券(会費)を購入してもらっている実態を紹介しますが、「大阪維新の会」は地方政党であり、国政政党の「日本維新の会」とは一応別組織なので、一言説明しておきましょう。

 確かに、「日本維新の会」は国政政党であり、「大阪維新の会」は地方政党ですし、また、「大阪維新の会」は「日本維新の会」の支部ではありません。

 しかし、「日本維新の会」と「大阪維新の会」の各代表は、いずれも松井一郎・大阪市長(前大阪府知事)です(ただし2020年分から吉村洋文大阪知事)し、両党の「主たる事務所」は、いずれも同じビル内にあります(大阪市中央区島之内1-17-16三栄中堀ビル)。

 また、「日本維新の会」(本部)やその支部の一つである「日本維新の会大阪府総支部」は、「大阪維新の会」に政治資金を寄附しており、「大阪維新の会」は「日本維新の会」の本部と支部の政治資金を受け取っていうのです。「大阪維新の会」は2018年に「日本維新の会」の本部から1億円も受け取っていました。なお、「日本維新の会大阪府総支部」も代表は松井一郎市長(ただし2020年分から吉村洋文大阪知事)で「主たる事務所」は同じビル内にあります。

「大阪維新の会」が「日本維新の会」等から受領した毎年の寄附

2016年2017年2018年2019年2020年
寄附者おおさか維新の会日本維新の会日本維新の会
大阪府総支部
大阪府総支部、
日本維新の会
受領寄附額約312・2万円0円1億円2500万円約2803万円

 したがって、「大阪維新の会」は形式的には「日本維新の会」とは別組織ですが、実質的にはその支部に相当するのです。

 ということで、「大阪維新の会」が企業から政治資金パーティー券(会費)を購入してもらっている実態を紹介します。取り上げる対象年は2016年以降にします。

3.政治資金パーティー収入に依存する「大阪維新の会」の政治資金収入

 「大阪維新の会」は、新型コロナ禍の2020年を除き、毎年9月に「大阪維新の会懇親会」という名称の政治資金パーティーを、大阪市中央区島之内にある「ロイヤルホテル」の「ロイヤルホール・光琳の間」で開催してきました。

 「大阪維新の会」の政治資金収入にとって政治資金パーティー収入の占める割合は極めて高いのです。2016年から2019年までの4年の平均は70%近くもあります。

 例えば、2018年は「本年の収入」(翌年からの繰越額を除く)は約2億289万円であり、「政治資金パーティー収入」は9474万円であり、「本年の収入」における政治資金パーティー収入」の占める割合は47%弱ですが、前述した、「日本維新の会」からの1億円の寄附を除いて計算すると、割合は92%強になります。2017年と2019年はそれ以上に高い割合の94・7%と93.9%です。「日本維新の会」等からの寄附を控除して計算した4年の平均収益率は90%もあるのです。

 つまり、「大阪維新の会」の政治資金収入は政治資金パーティー収入に依存しているのです。

「大阪維新の会」の「本年の収入」と政治資金パーティー収入、その割合

本年の収入
(A)
政治資金
パーティー
収入(B)
Aにおける
Bの占める
割合
「日本維新の会」
等からの寄附
を除く収入
(C)
Cにおける
Bの占める
割合
2016年120,428,033円94,300,000円78.3%117,306,369円80.4%
2017年95,763,795円90,660,000円94.7%95,763,795円94.7%
2018年202,890,276円94,740,000円46.7%102,890,276円92.1%
2019年149,871,018円117,240,000円78.2%124,871,018円93.9%
合計568,953,122396,940,000円69.8%440,831,458円90.0%

 その政治資金パーティー収入は毎年9000万円を超え、2019年は1億円を超えており1億1724万円もあります。パーティー券(会費)を購入した支払者数は4000人台であり、2019年は5862人です。したがって、会費は2万円だとわかります。

「大阪維新の会」の政治資金パーティーの年月日・名称・会場、収入等

政治資金
パーティー
開催年月日
政治資金
パーティー
名称
会  場支払者数収入額支払者一人分
の支払額平均
2016年 9月23日大阪維新の会
懇親会
ロイヤルホテル
 ロイヤルホール・光琳の間
4,715人94,300,000円20000円
2017年 9月5日大阪維新の会
懇親会
ロイヤルホテル
 ロイヤルホール・光琳の間
4,533人90,660,000円20000円
2018年 9月13日大阪維新の会
懇親会
ロイヤルホテル
 ロイヤルホール・光琳の間
4,737人94,740,000円20000円
2019年 9月12日大阪維新の会
懇親会
ロイヤルホテル
 ロイヤルホール・光琳の間
5,862人117,240,000円20000円
 大阪維新の会
懇親会 
 ロイヤルホテル
 ロイヤルホール・光琳の間
19,847人396,940,000円20000円

4.「大阪維新の会」の高い収益率は81%超

 その政治資金パーティー事業に要する経費支出は、2019年も含め2000万円を割り込んでいます。政治資金パーティー収入から経費支出を控除した収益は7300万円を超えており、2019年は9768万円超です。収益率は80%を超えており、4年平均で81・5%もあるのです。

「大阪維新の会」の政治資金パーティー収入、支出、収益、収益率

政治資金パーティー
開催年月日
収入額(A)支出額(B)AからBを控除した
収益(C)
Aに対するCの占める
割合(収益率)
2016年9月23日94,300,000円18,583,164円75,716,836円80.3%
2017年9月5日90,660,000円16,817,593円73,842,407円81.4%
2018年9月13日94,740,000円18,665,941円76,074,059円80.3%
2019年9月12日117,240,000円19,552,591円97,687,409円83.3%
 396,940,000円73,619,289円323,320,711円81.5%

5.企業や業界団体も政治資金パーティー券を高額購入

 以上のように高額の収入と高い収益率になるのは、政治資金パーティー券を購入するのが個人よりも企業(法人)や政治団体の購入額が多いことに起因しています。これは自民党の政治資金―パーティーの実態で明らかになっており、「大阪維新の会」も同様のようです。

 実際に、どのような企業や業界政治団体がどれくらいの金額の会費を支払っているのかを各年の政治資金収支報告書の記載で確認しました。業界政治団体の購入も取り上げるのは、企業が業界政治団体主催の政治資金パーティー券を購入できるため、そこで得られた収益が「大阪維新の会」のパーティー券購入に投入されているからです。

政治資金パーティー券を購入している企業や業界団体とその購入額

企業・法人などの購入業界政治団体の購入
6年パール工業株式会社 50万円
近畿医療学園 30万円
(株)三栄建設 40万円
高島クリニック 78万円
大阪府宅建政治連盟 28万円
大阪府薬剤師連盟 30万円
全日本不動産政治連盟 30万円
ィグレフォーラム 46万円
近畿医療学園 30万円
(株)サンヨー 60万円
(株)HIRAYAMA 30万円
(株)三栄建設 40万円
高島クリニック 66万円
ティグレフォーラム 24万円
大阪府薬剤師連盟  28万円
大阪府宅建政治連盟  110万円
学校法人近畿医療学園 30万円
泰山会 40万円
(株)旭創業 40万円
(株)三栄建設 40万円
(株)HIRAYAMA 40万円
(株)サンヨー 40万円
大阪府薬剤師連盟  26万円
大阪保育推進連盟  30万円
大阪府宅建政治連盟  22万円
9年近畿医療学園 30万円
(株)三栄建設 40万円
高島クリニック 50万円
(株)HIRAYAMA 40万円
大阪府薬剤師連盟  26万円
大阪宅建政治連盟  32万円

 以上のうち、例えば、2017年には「大阪府宅建政治連盟」が「大阪維新の会」のパーティー券を購入していますが、その金額は何と110万円です。会費は一人2万円なので「大阪府宅建政治連盟」は55人分のパーティー券を購入している計算になりますが、「大阪府宅建政治連盟」から実際に55人もパーティーに参加したのか、とても気になります。

 なお、「大阪府宅建政治連盟」は2016年に28万円の会費を支払ったことになっていますが、その収支報告書によると最低でも58万円購入していることになっています。政治資金規正法違反の不記載ですが、「大阪維新の会」が訂正したのかどうか未確認です。2018年は「大阪保育推進連盟」の30万円と「大阪府宅建政治連盟」の22万円の購入を当初収支報告書に記載していませんでした(同法違反の不記載)が、2019年12月に収支報告書に書き加えて訂正しています。

 また、以上について注意を要するのは、企業や業界政治団体が「大阪維新の会」のパーティー券を購入しているのは上記のものに限定されないということです。というのは、政治資金規正法によると、受領寄附の場合に寄附者の氏名などの明細を収支報告書に記載することが義務づけられているのは年間に合計5万円を超える寄附になっているのですが、それに比べ政治資金―パーティー収入の場合には、明細を記載することが義務づけられているのは、年間ではなく1回のパーティーにつき5万円ではなく20万円を超える購入者に限定されているため、20万円以下の購入者については明細の記載は義務づけられていないからです。

 それでも、「大阪維新の会」の政治資金パ―ティーは1年に1回しか開催されていないことも影響してか、上記のように高額な会費を支払っている企業や業界政治団体は複数ありましたが、20万円以下の購入企業・業界団体も多数あると思われます。

 ちなみに、2018年と2019年に限定して業界政治団体の収支報告書を少し調べただけだが、業界政治団体が「大阪維新の会」の上記各政治資金のパーティーについて20万円以下の会費を支払っていたのは、複数ありました。なお、収支報告書には5万円以上の支出しか記載が義務づけられていませんので、5万円未満の支出の記載は任意で記載される場合を別にすれば不明です(ここでは取り上げない国会議員関係政治団体の支出は1万円超なら支出の明細が記載されます)。

「大阪維新の会」に20万円以下の政治資金パーティー会費を支出していた業界政治団体

2018年2019年
ティグレフォーラム 20万円
全日本不動産政治連盟大阪府本部 10万円
政治連盟日本柔整総研 10万円
大阪府私立幼稚園振興連盟  6万円
ティグレフォーラム 20万円
大阪保育推進連盟 20万円
全日本不動産政治連盟大阪府本部 20万円
大阪行政書士政治連盟 12万円
大阪府私立幼稚園振興連盟 4万円

6.企業献金を受領できない「大阪維新の会」の資金集めに合わせたのが「日本維新の会」の「身を切る改革」の正体

 以上のように「大阪維新の会」は、企業や業界政治団体から高額の政治資金パ―ティー券を購入してもらっており、実質的には企業献金を受け取ってきたのです。

 「日本維新の会」の国会議員の政治団体・政党支部も政治資金パーティーを開催して実質的には企業献金を受け取ってきたのです(後日紹介します)。

 また、前掲の「おおさか維新の会2016参院選マニフェスト」(https://o-ishin.jp/election/sangiin2016/pdf/manifest_detail.pdf)では、「企業団体献金の禁止」を主張し実践し、企業が政治資金パーティ券を購入することの禁止を求めてきた政党(日本共産党(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2015/04/post-694.html))があるにもかかわらず、そのことは紹介されていませんでした。

 したがって、「日本維新の会」は、企業団体献金の点で「身を切る改革」を実行していると胸を張れる政党ではないのです。それどころか、事実上の企業団体献金を受け取っているのですから、「既得権益の打破」も「しがらみのない政治」の実現も目指してはいないのです。

 実は、政治資金規正法によると、政党以外の政治団体は企業や労働組合から政治献金を受領することはできませんが、政治資金パーティーを開催して、企業などに会費を支払ってもらい、収益率を高めて事実上企業献金を受け取ってきたのです。

 「大阪維新の会」も、政治資金規正法では政党ではなく、政治団体ですから、企業献金を直接受け取ることはできないので、「日本維新の会」が結成される前から政治資金パーティーを開催して事実上の企業献金を受け取ってきたのです。

 したがって、「日本維新の会」が表向き企業献金を受領せず事実上の企業献金を受け取るという方針は、政治資金規正法に基づく「大阪維新の会」の資金集めの方法をそのまま採用したにすぎないのです

(つづく)

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