政治資金オンブズマン

島尻大臣の第2の「政治とカネ」問題についての報道 に関するコメント

沖縄県選出の参議院議員である島尻安伊子沖縄担当大臣(自民党)については、自身の選挙区の有権者にカレンダーを無償で配布したことが発覚し、また、島尻氏の政党支部への貸付金計1050万円が消えていた問題もあって、市民団体「政治資金オンブズマン」の共同代表と全国の研究者、計30名が、昨年公選法違反・政治資金規正法違反の容疑で、那覇地検に告発状と意見書を送付しました。

 

「島尻安伊子議員(沖縄県選挙区)を来年7月実施の参議院選挙における落選対象議員第1号として告発しました」

「那覇地検に意見書を出しました」
以上の問題とは別に、新たな「政治とカネ」問題が発覚し、アイ・アジアがスクープ報道しました。

「島尻沖縄担当相にまたカネの問題 文科省傘下法人から補助金受けた専門学校が献金 理事長は夫の昇氏」(2016年1月 8日 10:22)

その報道によると、事実は以下です。

 

  • 専門学校運営会社「JSLインターナショナル」(浦添市)は、島尻大臣の夫が理事長を務めている。
  • この専門学校は、毎年留学生支援として、文部科学省傘下の独立行政法人「日本学生支援機構」から補助金を受けている。
  • この専門学校は、島尻大臣が代表を務める自民党沖縄県参議院選挙区第2支部が、2013年12月に、その専門学校から300万円の寄付金を受けていた。

 

つまり、補助金を受けている、議員・大臣の夫の専門学校が、議員・大臣の政党支部に政治献金していたのです。これは、税金である補助金の一部が事実上政治献金として議員・大臣側に流れたことを意味しています。

 

政治資金規正法は、国から補助金を受けている会社・団体が政治活動に関する寄付(政治献金)することを禁止し、そのような政治献金を受けることも禁止しています(第22条の3第1項・第6項)。

 

第22条の3  国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金(・・・)の交付の決定(・・・)を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後1年を経過する日(・・・)までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。

・・(略)・・

 何人も、第1項又は第2項(・・・)の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。

 

そして、同法は、この「規定に違反して寄附をした会社その他の法人の役職員として当該違反行為をした者」も、この「規定に違反して寄附を受けた者(団体にあっては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)」も、「3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定めています。

 

このような寄付の制限がなされた理由は何かといえば、「国・・・から補助金等・・・を受けている会社その他の法人が、補助金等・・・を受けているということにより国・・・と特別な関係に立っており、その特別な関係を維持又は強固にすることを目的として不明朗な政治活動に関する寄附がなされるおそれがあるので、それを防止しようとするもの」であると解されています(政治資金制度研究会編集『逐条解説 政治資金規正法【第二次改訂版】』ぎょうせい・2002年、196-197頁)。

 

この寄付の制限は、企業献金そのものを禁止していない点では不満が残るのですが、企業献金を前提にしても、税金が政治献金に流れることを禁止している点では当然の制限です。

ところが、この制限は限定されていると解されています。その一つが、規制の対象になっている補助金とは、「国から直接に交付の決定を受けている場合」であり、「国から直接に交付の決定を受けていない場合」は適用除外で、ここでいう「国」には「特殊法人」などは含まない、というのです(前掲書・197頁)。

 

つまり、「国」ではない「特殊法人」が補助金の交付決定をしている場合には、たとえ国の税金(補助金)が政治献金として流されるに至ったとしても、規制の対象外なのです。

それゆえ、島尻大臣の夫の専門学校が補助金を受けていながら政治献金をしても、それは政治資金規正法上は違法とは言えないのです。

しかし、国会議員とその政治団体の場合、違法行為さえしなければ何でも許されるわけではありません。国民主権および議会制民主着のもとでは、主権者国民にその代表者である国会議員は信頼を得ていなければなりませんから、政治的・道義的に問題のある行為をしてはならないのです。

それゆえ、主権者・納税者である国民からすれば、「特殊法人」が交付決定した場合であっても、国会議員の政党支部との関係は本質的には「特別な関係」にあることに変わりはありません、また、「その特別な関係を維持又は強固にすることを目的として不明朗な政治活動に関する寄附」がなされていると疑われても仕方ないのですから、本来、国会議員の政党支部は、そのような法人献金を受けるべきではないのです。

 

それゆえ、島尻氏の政党支部は、当該寄付300万円を返還すべきですし、受け取った政治的責任をとって、大臣を辞任すべきです。

島尻大臣が返還も辞任もしないままで済ますようであれば、国会の第一党で政権政党である自民党の国会議員の場合には、政治的・道義的な点で歯止めが効かないことを証明するようなものです。

そうであれば、国会は、税金が政治団体に流れる抜け道を無くし塞ぐために、政治資金規正法を改正するしかありません。

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