高木毅復興大臣のスキャンダルに関するコメント
1 高木毅大臣の経歴
現在59歳、福井県衆議院第2選挙区で選出。初入閣であった。週刊誌の下着報道後のインタビューなどを見ていても決して「聡明」な印象を受けず、経歴をみても当選回数が6回というぐらいで、なぜ復興相になったか、その理由は不透明。安保法制に賛成し、憲法9条改正に積極的である。衆議院議員の中では落選対象議員のベスト10に入る議員であり、次回の総選挙ではぜひ落選させたい議員である。
2 週刊紙の報道について
高木大臣が約30年前にある女性の部屋に入り下着を盗んだという報道がある。この後の直ぐの記者団からの取材には「コメント」しなかった。その後になって「そのような事実はない」と否定したという。(最初から週刊誌の報道が虚偽報道なら瞬時に否定のコメントがあり抗議するのが一般であるが)
この事件の「真相」は今のところ一応不明である。
一般的に下着泥棒の部屋に侵入する行為は住居侵入罪(刑法130条で懲役3年以下又は10万以下の罰金)下着を盗むのは窃盗罪(刑法235条で懲役10年以下又は50万以下の罰金である。ただし30年前には窃盗犯に罰金は無意味であるとして懲役刑のみであった)に該当する。
住居に侵入する行為の態様は悪質であるので、同じ下着泥棒でも逮捕され起訴される可能性が高い。しかし初犯で反省している場合で、かつ示談が成立すれば起訴猶予という不起訴処分になる。
起訴猶予とは犯罪が成立しているが、今回は正式起訴しないで勘弁してやる検察官の処分を言う。(嫌疑不十分という不起訴処分もあるが、これは犯罪を犯した疑いが濃いが、証拠が不十分のケースをいい起訴猶予とは区別される)
警察には当時捜査した記録があり、それを情報公開請求すれば真相が解明されるのではないかという質問をよく受ける。
一般的にある人の過去の犯罪内容は起訴され有罪判決になればその判決書などは検察庁に確定記録として保管されている。利害関係人を証明すれば、刑事確定記録は制限があるものの閲覧は可能である。(刑事確定記録法第4条1項、2項)
しかし仮に逮捕された場合でも、起訴されずに不起訴で終わったような事件記録は、検察庁に保管されているが、一切公表されない。(交通事故のような場合には不起訴になっても「実況見分調書」などは被害者、加害者は閲覧謄写が可能であるが例外である)
報道され、名誉を傷つけられた「被害者」は名誉毀損だとして、報道した週刊誌などに損害賠償をすることが多い。
高木大臣が真実でないというなら、週刊誌の報道が重大な名誉毀損に該当すると思うが、提訴の動きはなさそうだ。名誉毀損事件において「勝訴」の自信がないだけでなく、提訴がやぶ蛇になりここはダンマリを決め込んでいる方が得策と判断しているのであろうか。ぜひ記者の皆さんに取材して聞いて欲しいものだ。
2 香典の支払について
- 2014年分の自由民主党福井県第2選挙区支部(代表・高木毅議員)の収支報告書の38頁を見ると、
「支払目的」香典
「金額」2万円から3万円、
「年月日」平成26年2月9日~平成26年7月14日
「支払を受けた者の氏名」○○他5件、
「支払を受けた者の住所」住所
が記載されている。
(2)公職選挙法で国会議員の「後援団体」が「選挙区」内にある者への寄附は一切禁止されている。
ア) 自民党福井県第2選挙区支部の収支報告書には政党支部が○○さんらに香典を払ったと記載されていることは明白である。
イ) 公職選挙法199条の5第1項には「後援団体」はいかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないと禁止されている。この条文に違反すると法249条の5第1項で罰金50万円以下に処せられる。罰金に処せられるのは「後援団体」でなく「役職者又は構成員」である。
ウ) 自民党福井県第2選挙区支部は高木毅議員の「後援団体」に該当しないという見解は間違いである。
政党支部は「後援団体」に該当しないという見解もある。確かに政党支部でも都道府県連支部とか、地域支部とか職域支部のような場合はその通りであるが、国会議員の選挙区支部は「後援団体」に該当する。
公職選挙法は「後援団体」とは「政党又はその支部で、特定の公職の候補者の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの」と定義している。
自民党の選挙区支部などはその政治家の資金管理団体などと同様に、高木毅議員が代表である限り、その支援の為に資金を集め、その高木議員の政治活動の為に支出をしているのが実態であるので「後援団体」に該当することは明らかであろう。
エ) 報道が一部混乱している。
「後援団体」=政党支部名義で香典を渡した場合でもその代表が葬儀に参加した場合は許されるかのごとき報道があるが、政党支部が支払った場合は誰が参加しようがしまいがどちらでも法199条の5第1項に違反し違法である。
該当条文(法199条の5及び249条の5)には代表が参加した場合は許されるという法249条の2第3項のように政治家が葬儀に参加した場合には処罰されないという文言の記載がないからである。後援団体での香典は全て処罰される規定になっている。報道は一部法律を誤解している。
(3)葬儀に参加している時には処罰されないというのは、政治家個人が葬儀に参加して香典を支払う場合である。
- 法199条の2違反の刑罰を規定した法249条の2の条文は非常に解りにくい。整理すると次の通りである。
① 第1項=第199条の2第1項の規定に違反して当該選挙に関し寄附をした者は、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。(当該選挙に関しての寄附という限定がある)
②第2項=通常一般の社交の程度を超えて第199条の2第1項の規定に違反して寄附をした者は、当該選挙に関して同項の規定に違反したものとみなす。 (通常一般の社交の程度を超える寄附は当該選挙に関する寄附とみなす)
③第3項=第199条の2第1項の規定に違反して寄附(当該選挙に関しないもので、かつ、通常一般の社交の程度を超えないものに限る。)をした者で、次の各号に掲げる寄附以外の寄附をしたものは、50万円以下の罰金に処する。
一 当該公職の候補者等が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀の供与
二 当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む)に自ら出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む)の供与又は当該公職の候補者等が葬式の日(葬式が二回以上行われる場合にあつては、最初に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与
- 法第3項2号の場合(上記の③の場合)には国会議員が自ら葬儀に参加して「その場」で香典を親族などに渡す場合は処罰されない。参加したが、香典は秘書がその前とか後日交付した場合は処罰される。
しかし、「当該選挙に関して」香典を寄附した時とか「通常一般の社交の程度を超える程度の香典」は参加の有無に関係なく違法となる。
(4)まとめ
□ 高木大臣の自民党福井県第2選挙区支部からの6件のうち選挙区以外の者への香典1件を除き5件は後援団体の香典=寄附であるから法199条の5に違反してもともと違法である。一旦政党支部で香典を支払ったという会計帳簿にその旨の記載があったので、政治資金監査人もOKをしたのであろうと思われる。記載ミスという論理は理解不能。
□選挙区内の者への5件のうち3件の香典は2014年11月27日、同年12月4日に「削除」されている。政党支部で支出したという記載は間違いであるということらしいが、では誰が、誰名義で香典を支払ったのかが全く明らかでない。1月4日から開会する国会で会計帳簿などを開示させて追及すべきであろう。もしかすると「削除」そのものが政治資金規正法25条2号に違反する収支報告書の「虚偽記入」の可能性もあろう。
□どちらにしても訂正のない2件の香典は高木個人が参加の有無に関係せず法199条の5、法249条の5に「役職者又は構成員」が違反し処罰されるべきである。
□法249条3項違反(法250条第2項)の場合は「重大な過失」で支払った場合も処罰されるべきことになっている。適当な「訂正」でお茶を濁すことはあってはならない。