政治資金オンブズマン

松村祥史議員(熊本県選挙区)を7月実施の参議院選挙における落選対象議員第2号として告発しました


松村祥史議員(熊本県選挙区)を来年7月実施の参議院選挙における落選対象議員第2号として告発しました。

安保法制に賛成した議員であることにプラスして、「政治とカネ」についても極めて不透明な議員であると思われます。主な理由は次の通りです。

松村祥史(熊本県選出)自由民主党参議院議員

松村祥史(熊本県選出)の事務所

□ 2010年7月の参議院選挙資金として3500万円を自由民主党熊本県参議院選挙区第一支部から寄附を受けたと選挙後に提出する「選挙運動収支報告書」に記載があります。しかし同年の政党支部にはその支出したという記載は一切なく、その寄付を行える原資もありません。言わば「出所不明」の3500万円です。

 

□ 「会費」名目で政党支部が選挙区内の団体に「寄附」をしていることも公職選挙法199条の5に違反するとして告発しました。このような各種団体の会員に政党支部が入会し、「会費名目」で寄附が許されれば、地元の有権者への「結婚式での祝儀」とか「お葬式での香典」など本人出席の場合しか罰せられないとなっている制限を著しく脱法できることになるからです。

自民党熊本県参議院選挙区第一支部の会費名目の寄附一覧表
番号 支出の目的 金額 年月日 支払先 住所
1 会費(渉外費) 30,000 H22.12.4 東部地区ミニバレーボール 熊本市新生
2 会員費 70,000 H23.1.7 免田ライオンズクラブ事務局 球磨郡あさぎり町
3 会費 30,000 H23.8.4 人吉商工会議所青年部 熊本県人吉市
4 会費 30,000 H25.3.17 東部地区家庭婦人ミニバレーボール協会 熊本県熊本市東区
5 会費 20,000 H25.4.10 人吉商工会議所青年部 熊本県人吉市
6 会費 25,000 H25.12.20 人吉商工会議所青年部 熊本県人吉市
7 年会費(25年度分) 30,000 H26.3.21 東部地区家庭婦人ミニバレーボール協会 熊本県熊本市東区
8 年会費(26年度分) 30,000 H26.12.18 東部地区家庭婦人ミニバレーボール協会 熊本県熊本市東区
合計 265,000
松村祥史(熊本県選出)自由民主党参議院議員

松村祥史(熊本県選出)議員の事務所


告  発  状

 

                                                2016年1月21日

熊本地方検察庁 御 中

                            上脇博之告発人ら12名代理人

     弁 護 士   阪  口  徳  雄

(別紙代理人目録記載の弁護士31名代表)

 

松村祥史参議院議員他2名の政治資金規正法違反・公職選挙法違反告発等事件

当事者の表示 - 別紙当事者目録記載のとおり

告発の趣旨

 

 

被告発人松村祥史(自由民主党熊本県参議院選挙区第一支部の代表者)被告発人成田友孝(会計責任者)被告発人春日堅一(会計責任者)の各行為は、以下の被疑事実記載の法条にそれぞれ違反するので早急に捜査の上、厳重に処罰していただきたく告発する。

  記            

第1 被 疑 事 実

1 松村祥史参議院議員の2010年7月選挙資金の金3500万円の「出所不明」の被疑事実

被告発人松村祥史(以下松村祥史という)は2010年7月参議院議員通常選挙に際して、公職選挙法第189条第1項に定める「選挙運動に関する収支報告書」(以下本件選挙運動収支報告書という)の収入覧に、自由民主党熊本県参議院選挙区第一支部(以下本支部という)から金1000万円、500万円、2000万円、計金3500万円の寄附を受けた旨の収支報告書を熊本県選挙管理委員会に提出しているが、2010年の本支部の政治資金規正法に定める収支報告書(以下本件2010年政党支部収支報告書という)によると松村祥史に寄附した旨の記載もないし、そもそも同政党支部には当時、3500万円を支払うだけの資金もない。言わば3500万円の選挙資金は「出所不明」の資金によって調達されたことになっている。

本件選挙運動収支報告書通りとすれば、松村祥史は本政党支部の代表(支部長)であり、2010年1月1日から同年12月末まで本政党支部の会計責任者であった成田友孝と共謀の上、3500万円に見合う収入を記載せず、また支出覧には松村祥史に対し、1000万円、500万円、2000万円の合計3500万円を寄付した旨を本件政党支部報告書に記載する義務があったのに、それらを一切記載せず、同収支報告書を熊本県選挙管理委員会に2011年8月31日に提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(不記載罪)に違反したものである。

2 後援団体の「会費」名目の寄附に関する被疑事実

(1)公職選挙法違反

本政党支部は自由民主党の政党の「選挙区」支部であるが、松村祥史はその代表であり、その政治団体は松村祥史議員の公職選挙法第199条の5第1項に定める「後援団体」に該当し、「後援団体」は松村祥史の選挙区内にある者には寄附をしてはならないところ、松村祥史は会計責任者である春日堅一と共謀の上、別紙寄附記載目録記載の4乃至8記載の参議院熊本県選挙区内にある者に対して同記載の日時に、同記載の金額を「会費」名目で各寄附をし

もって後援団体の役職者である松村祥史及び春日堅一らは公職選挙法第249条の5第1項(法199条の5第1項後援団体の寄附行為)に違反するものである。

(別紙目録1乃至3は公訴時効の為に告発しない)

(2) 政治資金規正法違反

松村祥史は本政党支部の代表(支部長)であり、2010年1月1日から2011年12月末まで本政党支部の会計責任者であった成田友孝と共謀の上、

同支部は別紙寄附目録記載の番号1乃至3記載の金員を同記載の各団体に同記載の会費を支払う義務が明白にないのに、会費を支払ったかの如く「虚偽」に記載を行い、本政党支部の収支報告書を熊本県選挙管理委員会に

2010年分については2011年6月31日に

2011年分については2012年5月21日に

それぞれ提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(虚偽記載罪)に違反したものである。

松村祥史は2013年1月1日から2014年12月末まで本政党支部の会計責任者であった春日堅一と共謀の上

同支部は別紙寄附目録記載の番号4乃至8記載の各金員を同記載の各団体に同記載の会費を支払う義務が明白にないのに、会費を支払ったかの如く「虚偽」に記載を行い、本政党支部の収支報告書を熊本県選挙管理委員会に

2013年分については2014年5月22日に

2014年分については2015年5月26日に

それぞれ提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(虚偽記載罪)に違反したものである。

(政治資金規正法違反の虚偽記載罪の公訴時効は5年であるので別紙の会費名目の寄附を告発するものである)

 

3 2011年政党支部の収支報告書における金240万円借入金に関する不記載の被疑事実

松村祥史は本政党支部の代表(支部長)であり、同成田友孝は2011年の会計責任者であるが、

本政党支部は、松村祥史から、日時は明記されていないものの2011年内に計240万円を借り入れ、同年分の収支報告書(7頁)には「借入金」として240万円の記載があるところ、翌2012年の収支報告書の「資産等の状況」には資産等の項目別区分欄の「シ」の「借入先ごとの残高が100万円を超える借入金」に「有」か「無」の欄にチェックをすることが定められているところ「無」の欄にチェックしているところをみると、同年内に松村祥史に計240万円全額を返済しているか、または全額の債務免除を受けたか又は政党支部に寄附したかのいずれかであるにもかかわらず、その全額返済または全額債務免除、又は寄附を記載せず、成田友鋭と共謀し、2013年5月27日に熊本県選挙管理委員会に提出し、もって政治資金規正法第25条第1項第2号(不記載罪)の罪を行ったものである。

 

第2 罪名及び罰条

1 上記1の被疑事実について

被告発人松村祥史および同成田友孝の行為は、政治資金規正法第25条第1項2号(政治資金収支報告書不記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

2 上記2の被疑事実について

(1)上記2(1)の被疑事実中

松村祥史および会計責任者・春日堅一の各行為は、公職選挙法第294条の5第1項違反罪(同法第199条の5第1項違反) 刑法第60条(共同正犯)

(2)上記2(2)の被疑事実中

松村祥史および各会計責任者(成田友孝、春日堅一)の行為は、政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金規正法の虚偽記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

3 上記3の被疑事実について

被告発人松村祥史および同成田友孝の行為は、政治資金規正法第25条第1項2号(政治資金収支報告書不記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

 

告発の理由

 

1 2010年7月選挙資金の金3500万円の「出所不明」の事実

松村祥史は2010年7月参議院議員通常選挙において立候補し、当選した公職の候補者であった。同人の出納責任者であった椎葉鋭一郎は本件選挙運動収支報告書を同年4月27日から7月25日までの間に本支部から金1000万円、500万円、2000万円、計金3500万円の寄附を受けた旨の本件選挙運動収支報告書を熊本県選挙管理委員会に「第1回目」として同年7月26日に提出している。(甲第1号証(熊本県公報・11972号(平成22年12月28日)17-18頁

他方、本支部の政治資金規正法に定める2010年本件政党支部収支報告書によると松村祥史に寄附した記載も一切ない。また同政党支部には7月26日段階ではおよそ金3500万円を支払うだけの原資もない。(甲第2号証本件2010年政党支部収支報告書

言わば3500万円の選挙資金は「出所不明」の資金によって調達されたことになっている。

本件選挙運動収支報告書通りとすれば、松村祥史は本政党支部の代表(支部長)であり、2010年1月1日から同年12月末まで本政党支部の会計責任者であった成田友孝と共謀の上、松村祥史に対し、同年参議院議員通常選挙の選挙運動費用として1000万円、500万円、2000万円、計3500万円を寄付して旨本件政党支部報告書に記載する義務があったのに、それを一切記載せず、同収支報告書を熊本県選挙管理委員会に2011年6月31日に提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(不記載罪)に違反したものである。

 

2 公職選挙法における国会議員の後援団体の寄附の禁止

(1)公職選挙法第199条の5の定め

①公職選挙法は「政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの」を「後援団体」と定義し、「後援団体」は「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない」と定め(同法第199条の5第1項)「後援団体が第199条の5第1項の規定に違反して寄附をしたときは、その後援団体の役職員又は構成員として当該違反行為をした者」は「50万円以下の罰金に処する」と定めている(同法第249条の5第1項)。

②他方「寄附」と「会費」の区別については同法第179条第2項において「債務の履行としてなされるものを党費又は会費」と定義し、「債務の履行以外の金員の交付」を「寄附」と定めている。

政治資金規正法の解説において「債務の履行とは団体への加入行為とともに予め定まっているものの支払い、売買契約に基づく物品の納入など、債務者が債務の本旨に従って債務内容の実現する行為をいう。……債務の履行とは形式的に債務の履行に該当する場合であっても社会通念上寄附と認められるものは本法の『寄附』に該当する」と定義されている(政治資金制度研究会編集『逐条解説 政治資金規正法[第二次改訂版]』ぎょうせい・2004年57頁)

③後援会などが多くの自己の選挙区内にある団体に加入し「会費」名目で「会費」を払うと前記(1)記載の寄附行為を潜脱できることになる。政治資金規正法は「形式的に債務の履行に該当する場合であっても社会通念上寄附と認められるものは本法の『寄附』に該当する」としているが、これは、そのような潜脱行為を防止し、脱法を規制するためである。

(2)本政党支部は各団体に会費を支払うことは「債務の履行」ではない

①本政党支部は松村の県や市町村の政党支部でもなく、業界の支部でもない。本件政党支部は松村という国会議員を支持することがその政治活動の主たるものであることは明らかである。まさに公職選挙法第199条の5に定める「後援団体」に該当する。

②本件政党支部は2010年1月から2014年12月までの間に別紙記載の通り各団体に「会費」を支払っている。(甲第2号証乃至甲6号証)

これらの団体はおよそ政党の支部が団体として会員として加入する組織とは思われない。

ちなみに番号1、4、7、8の「東部地区ミニバレーボール」「東部地区家庭婦人ミニバレーボール協会」は、スポーツ団体であると思われ、そもそも政党支部などが加入する組織ではない。

番号2の「免田ライオンズクラブ」は個人加盟の組織と思われ、政党支部が団体として加入する組織とも思われない。

番号3、5、6「人吉商工会議所青年部」は、商工会議所法が「商工会議所等は、これを特定の政党のために利用してはならない」と定めており、およそ「政党支部」が加入できる組織でもない。伝統ある商工会議所は政党支部が加入しているようでは迷惑を受けるであろう。

③本政党支部がこれらの団体への「会員」でない以上、政党支部の「債務の履行」に該当しない。政党支部の「債務の履行」でない以上「会費」名目の支払は公職選挙法上の「寄附」に該当することは明らかである。

このような「会費」名目で政党支部や後援会が団体に加入して「寄附」が許されるとすれば、公職選挙法に199条において「選挙区内の者」に寄附を禁止した意味を全て脱法出来ることになる。

選挙区内の者には自然人である個人はもちろん、団体、法人も含まれる。(安田充・荒川敦編著『逐条解説 公職選挙法(下)』ぎょうせい)

⑥ 公職選挙法249条の5第1項違反(法199条の5第1項違反)の罪は公訴時効が支払日時から3年であるので、被疑事実2(1)記載のとおり告発する次第である。

(3) 政治資金規正法の虚偽記載罪も成立する

① 国会議員関係政治団体の収支報告書における1万円を超える金額の「支出目的」の記載義務

政治資金規正法第12条1項2号、同19条の10において国会議員関係政治団体は収支報告書を総務大臣、又は選挙管理委員会に提出に当たっては、その「支出」については「その目的」及び「1万円を超える金額」「相手方」「住所」などの記載が義務付けられている。

これに違反して「支出目的」に真実の目的を記載しないと法25条1項2号の収支報告書の虚偽記載罪が成立し、禁固5年以下の刑罰に処せられる。(この罪の時効は5年である)

② 本政党支部は別紙記載1番乃至8番の「会費」名目で各年度収支報告書を熊本県選挙管理委員会に提出している。しかしこれらの本来の支出目的は会費ではなく、寄附に該当する。しかるに、各年度の会計責任者(成田友孝、春日堅一)は、政党支部の代表である松村祥史と各共謀して、会費と記載して、被疑事実記載の通り、各記載して、熊本県選挙管理委員会に提出したものである

③よって、被疑事実記載の通り政治資金規正法第25条1項2号で告発する次第である。

3 2012年政党支部の収支報告書における金240万円借入金に関する不記載の被疑事実

(1)政治資金規正法における借入金に関する定め

政治資金規正法は政治団体の借入金については次の通り定めている。

第12条1項1号の収支報告書の収入覧には借入金があると「リ・借入金については、借入先及び当該借入先ごとの金額」の記載が義務付けられ、当該年度に借入金を返済していない場合には、同条第1項第3号において「12月31日において有する資産等(次に掲げる資産及び借入金をいう)について、当該資産等の区分に応じ、次に掲げる事項」として「オ・借入先ごとの残高が百万円を超える借入金 借入先及び借入残高」の記載が義務付けられている。

他方、その借入金が返済された場合は「支出」として、その「返済金額、返済日時、返済相手方」の記載が要求され(法第12条第1項第2号)、仮に債務免除を受けたときには「収入」として「債務免除金額、免除日時、免除相手方」を、「借入金」を当該政治団体に寄附したときは「寄附金額、寄附日時、寄附した者」の記載が要求されている(法第12条第1項第1号)

これにより借入金がある場合においても透明性のある収支報告書の記載を要求しているのである。

同法は、もし収支報告書に上記の記載がない場合は「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と刑罰でもって借入金の収支報告書への記載を厳しく要求している(第25条1項2号)。

(2)借入金返済または債務免除(寄附)の不記載の罪

 2012年5月21日に熊本県選挙管理委員会に提出された本政党支部の2011分政治資金収支報告書(甲第3号証7頁)「借入金」の収入として松村祥史から、日時の明記はないものの計240万円を借り入れたと記載され、同年末の時点で全額未返済であった。

他方、2013年5月27日に熊本県選挙管理委員会に提出された本政党支部の2012年分収支報告書には、「資産等の状況」における「借入先ごとの残高が100万円を超える借入金」につき「無」と記載している。

以上を前提にすると、同支部は、返済日は不明であるものの2012年内に松村祥史に借入金計240万円全額を返済したか、または松村祥史から借入金計240万円の債務免除(又は寄附)のいづれかであるが、このような場合は、政治資金規正法第12条に基づき、政治資金収支報告書を同選挙管理委員会に提出するに際しては、その返済または債務免除(寄附)を受けた、日時、金額を記載しなければならないが、同支部の2012年分の政治資金収支報告書には、その返済または債務免除(寄附)が一切記載されていない。(甲4号証)

被告発人松村祥史と同春日堅一は、共謀して、借入金240万円の全額返済またはその各全額債務免除(又は寄附)を一切記載せず、前記の通り熊本県選挙管理委員会に不記載で2013年5月27日に提出し、

もって政治資金規正法第25条第1項第2号に違反したものである。

 

証  拠  目  録

甲第1号証 (熊本県公報(本件選挙運動収支報告書の要旨)    1通

甲第2号証 2010年本件政党支部収支報告書)      1通

甲第3号証 2011年本件政党支部収支報告書)      1通

甲第4号証 2012年本件政党支部収支報告書)      1通

甲第5号証 2013年本件政党支部収支報告書)      1通

甲第6号証 2014年本件政党支部収支報告書)      1通

甲第7号証の1乃至7 (各領収書)                      各1通

添 付 書 類

甲第1号証乃至甲7号証                写し各1通

委任状

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