政治資金オンブズマン

野村哲郎議員(鹿児島県選挙区)を7月実施の参議院選挙における落選対象議員第4号として告発しました

鹿児島の野村哲郎議員(自民党)を落選対象議員の第4号として2月26日付で鹿児島地方検察庁に政治資金規正法違反で告発しました。

安保法制に賛成した議員であることにプラスして、「政治とカネ」についても極めて不透明な議員であると思われます。主な理由は次の通りです。

野村哲郎参議院議員(自民党) 2016年参議院鹿児島選挙区から出馬予定 安保関連法制賛成議員

野村哲郎参議院議員(自民党)の事務所

告発理由

 

今回の告発理由の大きな理由は、「JA鹿児島県中央会」という農協団体が「鹿児島県農民政治連盟」(自民党議員らの支援政治団体)に政治献金することが本来禁止されているのに「農政事務委託」などの名目で毎年950万円の寄附行為を繰り返し、更に「JA鹿児島県中央会」が「野村哲郎後援会彩耀会」に「鹿児島県農民政治連盟」を通じて毎年360万円を「業務委託料」等偽りの名目で寄附を行っていることを政治資金規正法第21条1項違反などに該当するとして告発したものです。

 野村議員「JA鹿児島県中央会」の常務理事なども経験していることから、このようなスキームは長年農協ぐるみで継続されてきた可能性が高い、悪質な行為であると思われます告発人らが調査した2008年から2014年12月末までの間に「JA鹿児島県中央会」から「「鹿児島県農民政治連盟」に違法流出した金額は合計6650万円であり、「野村哲郎後援会彩耀会」に違法迂回流出された金額は金2520万円の巨額金額に達しています。

野村哲郎参議院議員 2016年参議院鹿児島選挙区から出馬予定 安保法制関連賛成議員

野村哲郎参議院議員(自民党)の事務所

告  発  状

                                            2016年2月26日

鹿児島地方検察庁 御 中

                              上脇博之告発人ら17名代理人                弁 護 士    阪 口 徳 雄(別紙代理人目録記載の弁護士24名代表)

 

野村哲郎参議院議員他政治資規正法違反等告発事件

 

当事者の表示 - 別紙当事者目録記載のとおり

告発の趣旨

 被告発人らの下記被疑事実記載の各行為はいずれも罪名及び罰条記載の法条に各違反するので早急に捜査を遂げ厳重に処罰されたく告発する

第1 被疑事実

1 被疑事実1(違法寄付・受領罪)

(1)違法寄附の事実関係

 「JA鹿児島県中央会」(以下「JA鹿児島」という)は政治団体「鹿児島県農民政治連盟」(以下「鹿児島農政連」という)に「農政事業」名目で毎年950万円を「委託」し、「鹿児島農政連」はこれを「受託」し、「鹿児島農政連」は松村哲郎の資金管理団体である「野村哲郎後援会彩耀会」(以下「野村哲郎後援会」という)に毎年360万円を「業務委託料」又は「委託金」名目で「委託」し、同「野村哲郎後援会」はこれを「受託」している。

 政治資金規正法では「JA鹿児島」は政党や政治資金団体以外の「鹿児島農政連」や「野村哲郎後援会」に寄附することが禁止されている。(法第21条第1項)。

「JA鹿児島」らはそれを「隠ぺい」する為に「委託契約」などと偽装しているのが実態である。

 このような仮装違法スキームは長年関係者間で継続されてきた。少なくとも2008年から2014年12月末までの間に「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」に違法流出した金額は合計6650万円であり、「野村哲郎後援会」に違法迂回流出された金額は金2520万円の巨額金額に達している。

 

(2)被告発人らの役職

 野村哲郎は、自由民主党の参議院議員(鹿児島県選挙区選出)で、「野村哲郎後援会」の代表であり、永田暹は野村哲郎後援会の会計責任者である。

 「JA鹿児島中央」の2011年~2013年の間の会長は松崎俊明であり、2014年の会長は久保茂吉である。

「鹿児島農政連」の2011年~2013年の代表は松崎俊明であり、2014年の代表は久保茂吉である。

「鹿児島農政連」の2011年、2012年の会計責任者は稲葉幹男であり、2013年、2014年の会計責任者は松下欣隆である。

 

(3)被疑事実1(政治資金規正法第21条1項、法第26条違反)

ア 2013年(平成25年分)

① 事実関係

2013年(平成25年)「JA鹿児島」の会長であり、かつ「鹿児島農政連」の代表の松崎俊明、会計責任者である松下欣隆、「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎、同会計責任者の永田暹は共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法第21条第1項に違反する各寄附であるにも関わらず「農政事業受託」という偽りの名目で「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に950万円を寄附し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に「農政業務委託費」という偽りの名目で平成25年4月25日金120万円、平成25年8月2日に120万円、平成25年12月12日に120万円、合計360万円を迂回寄附させ、「野村哲郎後援会」はこれを受領した。

②「JA鹿児島」の会長である松崎俊明は「鹿児島農政連」への950万円の寄附については法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」代表としてこれを受領して法第26条第3号違反の寄附受領罪にも該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することが「JA鹿児島」の目的であるので360万円の迂回寄附行為も「JA鹿児島」が「野村哲郎後援会」への寄附行為であると解されるので、法第26条第1号に違反する。

③「鹿児島農政連」の会計責任者である松下欣隆は「JA鹿児島」の会長である松崎俊明らと共謀して、

「鹿児島農政連」への950万円の寄附については法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」会計責任者として、これを受領して法第26条第3号の寄附受領罪に該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画しているので、「JA鹿児島」の職員である松下欣隆の「野村哲郎後援会」への360万円の迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

④「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第26条第3号に違反して受領罪に該当する。

 

イ 2014年(平成26年)分

①事実関係

2014年(平成26年)「JA鹿児島」の会長であり、かつ「鹿児島農政連」の代表の久保茂吉、会計責任者である松下欣隆、「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎、同会計責任者の永田暹は共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法第21条第1項に違反する各寄附であるにも関わらず「農政事業受託」という偽りの名目で「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に950万円を寄附し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に「農政業務委託費」という偽りの名目で平成26年4月18日金120万円、平成26年8月4日に120万円、平成26年12月4日に120万円、合計360万円の迂回寄附をし、「野村哲郎後援会」はこれを受領した。

②2013年(平成25年)「JA鹿児島」の会長であり、かつ「鹿児島農政連」の代表の松崎俊明、会計責任者である松下欣隆、「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎、同会計責任者の永田暹は共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法第21条第1項に違反する各寄附であるにも関わらず「農政事業受託」という偽りの名目で「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に950万円を寄附し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に「農政業務委託費」という偽りの名目で平成25年4月25日金120万円、平成25年8月2日に120万円、平成25年12月12日に120万円、合計360万円を迂回寄附させ、「野村哲郎後援会」はこれを受領した。

②「JA鹿児島」の会長である久保茂吉は「鹿児島農政連」への950万円の寄附については法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」代表としてこれを受領して法第26条第3号違反の寄附受領罪にも該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することが「JA鹿児島」の目的であるので360万円の迂回寄附行為も「JA鹿児島」が「野村哲郎後援会」への寄附行為であると解されるので、法第26条第1号に違反する。

③「鹿児島農政連」の会計責任者である松下欣隆は「JA鹿児島」の会長である久保茂吉らと共謀して、

「鹿児島農政連」への950万円の寄附については法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」会計責任者として、これを受領して法第26条第3号の寄附受領罪に該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画しているので、「JA鹿児島」の職員である松下欣隆の「野村哲郎後援会」への360万円の迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

④「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第26条第3号に違反して違法寄附受領罪に該当する。

④「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第26条第3号に違反して違法寄附受領罪に該当する。

 

2 被疑事実2(収支報告書虚偽記入罪)

(1)鹿児島農政連」の収支報告書虚偽記入事件

ア 「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である松崎俊明は、2011年、2012年に、同政治団体の会計責任者である稲葉幹男と共謀し、

同法第12条が定める政治資金収支報告書を提出する際に、いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、

2011年分政治資金収支報告書は2012年3月某日(判読できず)に

2012年分政治資金収支報告書は2013年3月28日に

それぞれ鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

 「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である松崎俊明は、2013年に、同政治団体の会計責任者である松下欣隆と共謀し、

いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、同法第12条が定める政治資金収支報告書を2014年3月27日に鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

 「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である久保茂吉は、2014年に、同政治団体の会計責任者である松下欣隆と共謀し、

いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、同法第12条が定める政治資金収支報告書を2015年3月27日に鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

(2)「野村哲郎後援会」の各収支報告書虚偽記入事件

「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎は、会計責任者である永田暹と共謀して、

2011年分から2014年分までの各政治資金収支報告書に、

いずれも真実は政治資金規正法の「寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「鹿児島農政連」からの「業務委託料」(2011年分、2012年、各計360万円)または「委託金」(2013年、2014年、各計360万円)の受領であるとそれぞれ虚偽記載し、

2011年分政治資金収支報告書は2012年5月28日に

2012年分政治資金収支報告書は2013年4月23日に

2013年分政治資金収支報告書は2014年5月23日に

2014年分政治資金収支報告書は2015年5月22日に

それぞれ鹿児島県選挙管理委員会に提出し、

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

 

 

第2 罪名及び罰条

1 被疑事実1() アの行為の罪名及び罰条

(1)被告発人松崎俊明について

 ア 「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は、政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。

刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を通じて「野村哲郎後援会」への金360万円の迂回寄附行為も政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は「鹿児島農政連」の代表としての寄附受領行為に該当するので、政治資金規正法第21条1項、同26条第3号違反。刑法第60条(共同正犯)

(2) 被告発人松下欣隆について

 「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は、政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。

刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を通じて「野村哲郎後援会」への金360万円の迂回寄附行為も政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は「鹿児島農政連」の会計責任者としての寄附受領行為に該当するので、政治資金規正法第21条1項、同26条第3号違反。刑法第60条(共同正犯)

(3) 被告発人野村哲郎、永田暹について

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第21条1項、第26条第3号違反罪。刑法第60条(共同正犯)

2 被疑事実1() イの行為の罪名及び罰条

(1)被告発人久保茂吉について

 「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は、政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。

刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を通じて「野村哲郎後援会」への金360万円の迂回寄附行為も政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は「鹿児島農政連」の代表としての寄附受領行為に該当するので、政治資金規正法第21条1項、同26条第3号違反。刑法第60条(共同正犯)

(2) 被告発人松下欣隆について

 「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は、政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。

刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を通じて「野村哲郎後援会」への金360万円の迂回寄附行為も政治資金規正法第21条1項、同26条第1号に違反。刑法第60条(共同正犯)

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への金950万円の寄附は「鹿児島農政連」の会計責任者としての寄附受領行為に該当するので、政治資金規正法第21条1項、同26条第3号違反。刑法第60条(共同正犯)

(3) 被告発人野村哲郎、永田暹について

「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第21条1項、第26条第3号違反罪。刑法第60条(共同正犯)

3 被疑事実2の行為の罪名及び罰条

(1)被告発人松崎俊明、被告発人稲葉幹男、被告発人松下欣隆、被告発人久保茂吉の被疑事実2(1)の各行為は、政治資金規正法第25条第1項第3号(政治資金収支報告書虚偽記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

(2)被告発人野村哲郎、被告発人永田暹の被疑事実2(2)の各行為は、政治資金規正法第25条第1項第3号(政治資金収支報告書虚偽記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

告発の理由

1 被疑事実1(違法寄付・受領罪)

(1)政治資金規正法第21条1項が禁止する「会社等のその他の団体の寄附の禁止」と当該寄附の受領の禁止

政治資金規正法は、「会社、労働組合、職員団体、その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない」(第21条第1項)、「何人も、第21条第1項……に違反してされる寄附を受けてはならない」として「量的制限等に違反する寄附の受領の禁止」を定めている(第22条の2)。

同法は、第26条で、「第21条第1項……の規定に違反して寄附をした者」(団体にあっては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)も(第1号)、「第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者」(団体にあっては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)も(第3号)、「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定めている。

 

(2)違法寄附の事実関係

「JA鹿児島」は、鹿児島県内の農協や連合会の指導機関であり、JAグループ鹿児島の代表機関という性格をもっており、具体的には、経営指導・監査、教育、農政・広報活動等の事業を通じて、JAグループ鹿児島の健全な発展に努めている(

JA鹿児島県中央会 概要)。

「JA鹿児島」は、政治資金規正法第21条1項の「その他の団体」に該当するから、「政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない」ので「JA鹿児島」は、「鹿児島農政連」にも、「野村哲郎後援会」にも「政治活動に関する寄附」をすることが禁止されている。

 

 野村哲郎は、1943年(昭和18年)に鹿児島県霧島市隼人町に生まれ、1962年(昭和37年)鹿児島ラ・サール高校を卒業し、1969年(昭和44年)には「鹿児島県農協中央会」(JA鹿児島)に入会して1999年(平成11年)には、その「常務理事」に就任し、退任する2004年(平成16年)まで「鹿児島県農協中央会常務理事」であった。同年7月施行の参議院議員通常選挙で鹿児島県選挙区において自由民主党から立候補し初当選し、2010年(平成22年)7月施行の参議院議員通常選挙で同じく鹿児島県選挙区において再選され、今日に至っている(野村哲郎ー参議院HP議員情報)

野村哲郎は、資金管理団体「野村哲郎後援会」の代表でもある。

 

「鹿児島農政連」は、「わが国の食料や農業・環境をはじめ、農家経営JAグループの組織基盤を守り、発展させるため」の「農政運動」を「実現させることを目的とした組織」である政治団体で自民党の国会議員及び県議などを支援している。鹿児島県農政連の概要

「鹿児島農政連」は、政治資金規正法上は政党、政治資金団体以外の政治団体で、いわゆる「その他の政治団体」に該当する。

 

「JA鹿児島」の会長であった松崎俊明は2011年~2013年まで「鹿児島農政連」の代表を務めていた。

「JA鹿児島県中央会」の2014年会長である久保茂吉は2014年の鹿児島農政連」の代表を務めている。

 

オ 2011年および2012年、同政治団体の会計責任者であった稲葉幹男は、「JA鹿児島」の農政広報部長でもあった(「JA広報 南さつま」2012年5月号(発行日2012年4月20日)3頁)。

2013年、2014年に同会計責任者である松下欣隆も、2010年4月時点で「鹿児島県農業協同組合中央会営農・農家経営対策部部長」であった(第1回21世紀における農業試験研究会の在り方検討会会議資料)ことから推察すると、「JA鹿児島」の役職者の地位にあるものと思われる。

 

 「JA鹿児島」は、遅くとも2008年以降毎年、政治団体「鹿児島農政連」に「農政事業」という名目で支出目的を偽り、各950万円の寄附を行ない、「野村哲郎後援会」にも「業務委託料」「委託金」名目で支出目的を偽り各計360万円を迂回献金していたのである。

 

 「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」への「農政事業受託」が偽りの名目で実態のないものであることは、そもそも「JA鹿児島」が政治活動を行う政治団体に業務委託する理由・必要性が存在しないからである。同時に「鹿児島農政連」の政治資金収支報告書に明記されている支出内容を見ると、委託された業務を遂行するために必要な支出が一切見当たらないからである。

 

 「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」への「業務委託料」または「委託金」が偽りの名目で実態のないものであることは、そもそも政治団体が別の政治団体に業務委託する理由・必要性が存在しないからである。同時に「野村哲郎後援会」の政治資金収支報告書に明記されている支出内容を見ると、委託された業務を遂行するために必要な支出が一切見当たらないからである。

ちなみに「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」の間の資金移動について、「寄付」であっても政治資金規正法上は違法ではないが、「業務委託料」または「委託金」としたのは、「JA鹿児島」⇒「鹿児島農政連」⇒「野村哲郎後援会」への資金移動は一連の流れであることを「野村哲郎後援会」関係者に知らしむ為の記載であったと思われる。

 

ケ 「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に「農政事業」名目で毎年950万円を「委託」し、「鹿児島農政連」はこれを「受託」し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に毎年360万円を「業務委託料」又は「委託金」名目で「委託」し、「野村哲郎後援会」はこれを「受託」しているが、これは、政治資金規正法によると、「JA鹿児島」は政党や政治資金団体以外の「鹿児島農政連」や「野村哲郎後援会」に寄附することが禁止されている(法第21条第1項)ので、それを「隠ぺい」する為に「委託契約」などと偽装しているのが実態である。このような仮装違法スキームが長年関係者で継続されてきた。2008年から2014年12月末までの間にJA鹿児島から鹿児島農政連に違法流出した金額は合計6650万円であり、「野村哲郎後援会」に違法迂回流出された金額は金2520万円の巨額金額に達している。

 

(3)被疑事実1(政治資金規正法第21条1項、法第26条違反)

ア 2013年(平成25年分)

①2013年(平成25年)「JA鹿児島」の会長であり、かつ「鹿児島農政連」の代表の松崎俊明、会計責任者である松下欣隆、「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎、同会計責任者の永田暹は共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法第21条第1項に違反する各寄附であるにも関わらず「農政事業受託」という偽りの名目で「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に950万円を寄附し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に「農政業務委託費」という偽りの名目で平成25年4月25日金120万円、平成25年8月2日に120万円、平成25年12月12日に120万円、合計360万円の迂回寄附をし、「野村哲郎後援会」はこれを受領した。

②「JA鹿児島」の会長である松崎俊明は「鹿児島農政連」への950万円の寄附について法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」代表としてこれを受領して法第26条第3号違反の寄附受領罪にも該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画して上記950万円の寄附行為を行っているので、「JA鹿児島」の会長である松崎俊明の「野村哲郎後援会」への迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

③「鹿児島農政連」の会計責任者である松下欣隆は「JA鹿児島」の会長である松崎俊明らと共謀して、

「鹿児島農政連」への950万円の寄附について法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」会計責任者として、これを受領して法第26条第3号の寄附受領罪に該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画しているので、「JA鹿児島」の職員である松下欣隆の「野村哲郎後援会」への360万円の迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

④「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として法第26条第3号に違反して受領罪に該当する。

 

イ 2014年(平成26年)分

①2014年(平成26年)「JA鹿児島」の会長であり、かつ「鹿児島農政連」の代表の久保茂吉、会計責任者である松下欣隆、「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎、同会計責任者の永田暹は共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法第21条第1項に違反する各寄附であるにも関わらず「農政事業受託」という偽りの名目で「JA鹿児島」は「鹿児島農政連」に950万円を寄附し、「鹿児島農政連」は「野村哲郎後援会」に「農政業務委託費」という偽りの名目で平成26年4月18日金120万円、平成26年8月4日に120万円、平成26年12月4日に120万円、合計360万円の迂回寄附をし、「野村哲郎後援会」はこれを受領した。

②「JA鹿児島」の会長である久保茂吉は「鹿児島農政連」への950万円の寄附について法第26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」代表としてこれを受領して法第26条第3号違反の寄附受領罪にも該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画して上記950万円の寄附行為を行っているので、「JA鹿児島」の会長である久保茂吉の「野村哲郎後援会」への迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

③「鹿児島農政連」の会計責任者である松下欣隆は「JA鹿児島」の会長である松崎俊明らと共謀して、

「鹿児島農政連」への950万円の寄附については法26条第1号に違反し、かつ「鹿児島農政連」会計責任者として、これを受領して法26条第3号の寄附受領罪に該当する。

同時に950万円のうち360万円については「鹿児島農政連」から「野村哲郎後援会」に順次迂回寄附することを企画しているので、「JA鹿児島」の職員である松下欣隆の「野村哲郎後援会」への360万円の迂回寄附行為は、法第26条第1号に違反する。

④「JA鹿児島」から「鹿児島農政連」を迂回して「野村哲郎後援会」への金360万円の寄附受領については、野村哲郎は「野村哲郎後援会」の代表として、永田暹は同会計責任者として、法第26条第3号に違反して受領罪に該当する。

 

2 被疑事実2(政治資金規正法が禁止する政治資金収支報告書虚偽記載罪)

(1)政治資金規正法は、「政治団体の会計責任者(報告書の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、毎年12月31日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるもの(これらの事項がないときは、その旨)を記載した報告書を、その日の翌日から3月以内(……)に、第6条第1項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。」と定めている(第12条第1項)。

「国会議員関係政治団体」とは「衆議院議員又は参議院議員に係る公職の候補者が代表者である政治団体」や「租税特別措置法 (…)第41条の18第1項第4号に該当する政治団体のうち、特定の衆議院議員又は参議院議員に係る公職の候補者を推薦し、又は支持することを本来の目的とする政治団体」のほかに、「政党の支部で、公職選挙法第12条に規定する衆議院議員又は参議院議員に係る選挙区の区域又は選挙の行われる区域を単位として設けられるもののうち、衆議院議員又は参議院議員に係る公職の候補者が代表者であるもの」も「国会議員関係政治団体とみなす」と定め(第19条の7第1項)、「国会議員関係政治団体(……)の会計責任者が政治団体の会計責任者として行う第12条第1項及び第2項……の規定による報告書及び領収書等の写しの提出に係る第12条第1項……の規定の適用については、第12条第1項中『3月以内』とあるのは『5月以内』と、……、同項第2号中「経費以外の経費の支出」とあるのは「経費以外の経費(第19条の7第1項に規定する国会議員関係政治団体である間に行った支出にあっては、人件費以外の経費)の支出」と……する、と定めている(第19条の10)。

そして、同法は、「第12条第1項……の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者」につき「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と罰則を定めている(第25条第3号)。したがって、もし収入につき収支報告書に虚偽の記載がなされた場合があると「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」という刑罰でもって収入につき真実の報告を厳しく要求しているのである。

 

(2)被疑事実2虚偽記載事件

ア 鹿児島農政連」の収支報告書虚偽記入事件

「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である松崎俊明は、2011年、2012年に、同政治団体の会計責任者である稲葉幹男と共謀して、

同法第12条が定める政治資金収支報告書を提出する際に、いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、

2011年分政治資金収支報告書は2012年3月某日(判読できず)に

2012年分政治資金収支報告書は2013年3月28日に

それぞれ鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である松崎俊明は、2013年に、同政治団体の会計責任者である松下欣隆と共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、同法第12条が定める政治資金収支報告書を2014年3月27日に鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

③ 「JA鹿児島」の会長であり、「鹿児島農政連」の代表である久保茂吉は、2014年に、同政治団体の会計責任者である松下欣隆と共謀して、

いずれも真実は政治資金規正法の「950万円の寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「950万円の農政事務受託」かのごとく虚偽記入して、同法第12条が定める政治資金収支報告書を2015年3月27日に鹿児島県選挙管理委員会に提出し

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

 

イ 野村哲郎後援会の各収支報告書虚偽記入事件

資金管理団体「野村哲郎後援会」の代表である野村哲郎は、会計責任者である永田暹と共謀して

2011年分から2014年分までの各政治資金収支報告書に、

いずれも真実は政治資金規正法の「寄附」であるのに、あたかも債務の履行であるかのごとき「鹿児島農政連」からの「業務委託料」(2011年分、2012年、各計360万円)または「委託金」(2013年、2014年、各計360万円)の受領であるとそれぞれ虚偽記載し、

2011年分政治資金収支報告書は2012年5月28日に

2012年分政治資金収支報告書は2013年4月23日に

2013年分政治資金収支報告書は2014年5月23日に

2014年分政治資金収支報告書は2015年5月22日に

それぞれ鹿児島県選挙管理委員会に提出し、

もって、同法第25条第1項第3号に違反したものである。

 

       証 拠 目 録

1  甲1号証  鹿児島農政連の2008年収支報告書要旨(鹿児島県広報)

2  甲2号証  鹿児島農政連の2009年収支報告書要旨(鹿児島県広報)

3  甲3号証  鹿児島農政連の2010年収支報告書要旨(鹿児島県広報)

4  甲4号証  鹿児島農政連の2011年収支報告書

5  甲5号証  鹿児島農政連の2012年収支報告書

6  甲6号証  鹿児島農政連の2013年収支報告書

7  甲7号証  鹿児島農政連の2014年収支報告書

8  甲8号証  「野村哲郎後援会」2008年収支報告書

9  甲9号証  「野村哲郎後援会」2009年収支報告書

10 甲10号証 「野村哲郎後援会」2010年収支報告書

11 甲11号証 「野村哲郎後援会」2011年収支報告書

12 甲12号証 「野村哲郎後援会」2012年収支報告書

13 甲13号証 「野村哲郎後援会」2013年収支報告書

14 甲14号証 「野村哲郎後援会」2014年収支報告書

添 付 書 類

1甲各号証写            各1通

2委任状              17通

 

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