政治資金オンブズマン

政治とカネの問題を改革できずして、郵政改革を主張する資格なし

衆議院議員総選挙の重大争点は政治改革

― 政治とカネの問題を改革できずして
郵政改革を主張する資格なし ―

総選挙の争点が郵政問題一本とは、争点の逃げ、争点隠し!

政治とカネの問題は従来からの重要テーマ。いまだにこの問題はくすぶり続け、有効な手を打たない国会は無責任。

国民の眼を逸らす選挙運動に喝!

しかし国民はしっかりと見ている。政治の浄化と透明性確保がなによりも優先されるべき改革の一つだ、と。

政党、立候補は、自らに課せられた重要なテーマを棚上げにしたまま、郵政改革を語る資格なし。

そうした基本を踏まえ・・・

政治・財界・官僚の構造的癒着の是正にある!

政治資金オンブズマン

2005年8月29日

はじめに

小泉内閣は、郵政民営化関連法案の参議院での否決直後に、すでに同法案を可決していた衆議院を解散した。第44回衆議院議員総選挙の投票は来月(9月)11日。

この総選挙で与党は法案の再議決に必要な「3分の2」以上を目標としてはいないので、解散の真の目的は、自民党が造反した衆議院議員を公認せず刺客の候補者を送り込み落選させることで、造反した参議院議員に圧力を加え参議院での郵政関連法案の可決を目指しているようである。だからこそ小泉首相は「郵政解散」と呼び、与党は郵政民営化の是非を総選挙の最大の争点にしようとしている。

しかし、私たちは、政治とカネの問題をきちんと改革し、政・官・業の構造的癒着の是正こそが今回の総選挙の緊急・重大争点の一つであると考える。だからこそ各政党、各立候補者はそれを選挙の争点として取り上げ、改革への意思を明確にする必要がある。

1. 1994年の「政治改革」は成功していない!

 1988年のいわゆる「リクルート事件」発覚を機に政治改革の議論が本格化し、それに失敗した宮沢内閣の後に誕生したのは、1993年総選挙による細川内閣であった。同内閣は、衆議院議員の選挙制度をいわゆる中選挙区制から小選挙区本位の制度に「改革」し、かつ、政治腐敗の温床となってきた企業献金を許容したうえで年間300億円を超える国民の税金を原資とした政党助成制度を新設した。

 しかし、この「政治改革」は、大政党の過剰代表と小政党の過少代表を人工的に生み出し、それに連動して各政党の政党交付金を決定するものであったために、政策抜きの政党の離合集散と政党交付金目当ての新党結成を誘発してきた。

その上、その謳い文句に反して政治腐敗は根絶されてはこなかった。中島洋次郎衆議院議員(故人)の政党交付金買収事件、新井将敬衆議院議員(故人)の株取引疑惑、中尾栄一衆議院議員・元建設大臣の汚職(逮捕)、KSD事件、「ムネオハウス疑惑」などが発覚してきた。政・官・業の癒着の構造が維持されているからである。

この構造は、1996年衆議院議員総選挙後も、2000年衆議院議員総選挙後も、さらには先回の2003年衆議院議員総選挙以後も、相変わらず基本的に維持されている。そのため、日本歯科医師連盟による一連の事件、橋本派「平成研究会」の一億円事件なども発覚してきた。

2.1999年政治資金規正法改正と迂回献金の横行、そして天下りと談合

 1999年に政治資金規正法は一定の改正がなされた。これにより政党以外への企業・団体献金が予定通り2000年から禁止され、政治家の政治資金管理団体への企業・団体献金はできなくなった。

しかし、1994年「政治改革」から5年後には抜本的に「見直し」されるはずであった企業・団体献金(1994年政治資金規正法改正附則第10条参照)が、国会の怠慢で何らの見直しもなされず温存されたため、その後は、日歯連の一連の事件で明らかになったように、政治資金団体(国民政治協会)や政党支部を通じて政治資金が個々の政治家に流れる、いわゆる迂回献金が横行するようになった。

この迂回献金は、政治資金の真の受取人が政治資金収支報告書で明らかにならない不透明な政治献金であり、政治資金の透明性を求める政治資金規正法の趣旨に反するものである。

 その上、天下りが相変わらず継続的に行われている中で、従来の小規模な談合事件の発覚に続いて、日本道路公団の鉄鋼製橋梁工事に関するような大規模な談合事件までもが発覚し、その談合が官制談合であったとの指摘もなれている。

そして小泉内閣の閣僚と副大臣の計7人がそれぞれ支部長を務める自民党支部が、「K会」や「A会」と呼ばれる談合組織に属する企業11社から2003年までの4年間に計864万円の政治献金を受けていたことも、先月(7月)下旬に、国会で明らかになっている。

3.構造的癒着の是正に不熱心な自民党・与党

 小泉自民党総裁は、「自民党をぶっ壊す」と言い、官僚政治を否定しながら、現実には、このような政治腐敗を引き起こす「政・官・業の癒着の構造」を断ち切り、根本的に是正しようと努めているわけではない。

日本経団連が、2003年に、政党の政策を評価し、それに応じて傘下の企業に政治献金を斡旋するとの方針を打ち出し、自ら発表した優先政策事項に基づき2004年に自民党と民主党の政策評価を始め、政治献金の斡旋を開始した。その間に、日本経団連が独禁法の改正に反対し、それに成功しているにもかかわらず、小泉総裁は問題のある企業・団体献金や迂回献金の禁止をいまだに主張してはいない。

また、橋本元首相の「平成研究会」一億円事件につき検察審査会が今年1月末に「不起訴不当」と議決したとき、小泉総裁は真相究明のために徹底した党内調査を指示しなかった。小泉首相の盟友で郵政関連法案の成立を推進している山崎拓議員の日歯連からの3000万円の政治資金問題・迂回献金問題について検察審査会が先月(7月)末に「起訴相当」と議決したときも、小泉総裁は真相究明に取り組まなかったし、与党は、政治団体間の献金に年間5000万円の上限を設ける政治資金規正法改正案を提出しているにとどまり、野党が提出している、迂回献金禁止のための政治資金規正法改正案の与野党協議さえ拒否し、実質的な国会審議を進めなかった。

天下りの禁止については、道路公団など特殊法人の自主的判断に委ねているようであり、高級官僚及び特殊法人の業界への天下りを法律で根本的に禁止するという明確な方針は見えてこない。

4.各政党、各候補者は構造的癒着の是正を選挙公約に!

 今こそ重要で緊急に求められるのは、政・官・業の癒着の構造を断ち切り、それを是正することである。それ抜きに政策選挙がたとえ行われたとしても、主権者国民のための政治ではなく、政・官・業に都合の良い政治が強行されるだけであろう。

私たちは現時点で最低限求められる緊急の改革は以下の4点であると考える。

① 政治資金の真の受取人が不明な迂回献金、そのほか自己の要求をカネの力で強引に実現するための企業・団体献金については、政治資金規正法を改正して禁止すること。

② また、情報公開法に基づく政治資金収支報告書の情報開示請求に速やかに応じるよう運用を改善させ、政治資金収支報告書の粉飾防止策を講じるために政治資金規正法を改正すること。

③ 企業の利益誘導になってきた天下りは、今でも談合の温床にもなっているので法律で全面的に禁止すること。

④ 独禁法違反企業に対する課徴金はその額(割合)が低ければ談合の予防に役立たないので、同法を改正し課徴金を引き上げるなどして談合に対して厳しい法的措置を講じること。

今回の総選挙に立候補する各政党、各候補者は以上のことを強く訴えて、総選挙に臨むべきである。

以上

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