政治献金再開中止を求める要請文
政治献金再開中止を求める要請文
全国銀行協会会長
三菱東京UFJ銀行頭取
三井住友銀行頭取
みずほフィナンシャルグループ会長(宛名は要確認)
わたしたち株主オンブズマンと政治資金オンブズマンは、メガバンクの政治献金再開の中止を要請します。
はじめに
マスコミは、三菱東京UFJ銀行が1998年から自粛してきた政治献金を9年ぶりに再開する方針を固め、献金額は2000万~3000万円の幅で最終調整に入ったと伝えています。
また、みずほフィナンシャルグループと三井住友銀行も献金再開を検討しており、三つのメガバンクがそろって政治献金の復活に踏み切る方向だとも報じています。
これは、銀行の預金者の立場からも、株主の立場からも、納税者である国民の立場からも、認めることのできない動きです。
1.企業献金そのものが許されない!
そもそも参政権とそれに基づく政治活動の自由は、憲法上個人にのみ認められているものです。これまで企業の政治献金が果たした役割から見て、巨大な資金力をもつ大企業の政治献金を認めると、大企業や財界は、政治家と政党を買収し、国の政策や税制や財政支出に影響を及ぼすことによって、献金の見返りを受けようとします。
このことは「政治とカネ」の負の歴史が証明しています。
2.メガバンクの政治献金は許されない!
こういう一般論に加えて、今回の銀行業界の献金再開の動きは、幾つかの点で特別に重大な問題をはらんでいます。
①巨額の公的資金注入の見返りだ!
第1に、銀行は自ら引き起こしたバブル経済の後遺症で、深刻な金融不安と経営危機に直面し、巨額の公的資金の注入と預金者泣かせの長期に亘るゼロ金利政策を通して救済され、ようやくメガバンクは、公的資金を完済するまでに利益を回復したという経過があります。こうして自民党とその政府によって「おんぶにだっこ」で助けられた銀行が、その見返りに、自民党に対する政治献金を復活するというのは、政治献金による買収に匹敵するものです。
②法人税ゼロなのに!
第2に、メガバンクは、最近では過去最高の利益を上げながら、法人税はまったく収めていません。これは不良債権処理に伴う過去の赤字があることを理由とする税制上の優遇措置によるものですが、庶民感覚からは、銀行が一円も法人税を払わないでいながら政治献金はするというは、重税に苦しむ国民には納得できない蛮行です。
③真っ先に預金者に還元を!
第3に、預金者は、銀行の顧客サービスが最近非常に悪くなっていることに大きな不満を持っています。ゼロ金利政策は解除されたといっても、依然として超低金利が続いています。利益が上がり、政治献金をする余裕があるのであれば、預金金利の引き上げや、サービスの改善などによって、真っ先に顧客に利益還元すべきです。
④公共性に反する!
第4に、銀行に巨額の公的資金が注入されたのは、銀行が特に公共性の高い企業であるからです。 にもかかわらず、私的な政党、それも一部の政党に政治献金をするのは、公的資金注入の理屈に反します。
⑤社会貢献ではない!
第5に、全国銀行協会の畔柳信雄会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は最近の記者会見で、「政治献金は企業の社会貢献の一環」だと述べていますが、法人税も払わず、預金者や株主への利益還元も行わないでいて、国民犠牲、預金者泣かせの銀行救済政策を進めてきた自民党に政治献金をすることが、何故、社会貢献といえるのでしょうか。
⑥日本経団連の政党買収への加担!
第6に、銀行業界が政治献金を中止するまでは、業界の政治献金トップは銀行業界であり、加えて、今では当時と事情が異なり、日本経団連が財界に都合の良い優先政策を決め、それを基準に与党第一党の自民党と野党第一党の民主党の政策を評価し、その評価に応じて傘下企業に政治献金をするよう要請している。 このような状況の下で、メガバンクが政治献金を再開することは、メガバンクが日本経団連の政党の丸ごと買収に大きく加担することを意味しています。
おわりに - 預金者・株主・納税者を愚弄するな!
銀行の政治献金の再開は預金者をも株主をも愚弄するものです。マスコミも大銀行の献金復活には世論の批判が強いと報じています。 私たちは企業の社会的責任を求める立場から、三つのメガバンクを先頭とする銀行業界が政治献金再開をしないよう強く要請します。 もし、再開を強行するようなことがあれば、私たちは、法的手段に訴えることも辞さないことを申し添えておきます。
2006年12月18日
株主オンブズマン
政治資金オンブズマン