政治資金オンブズマン

告発状 細田博之、立脇邦彦、日本道路興運株式会社

2004年8月24日

東京地方検察庁 御 中

告発人ら代理人(代表)
弁 護 士  ○ ○ ○ ○
                                               

当事者の表示 - 別紙当事者目録記載のとおり

告発の趣旨

 被告発人立脇邦彦の下記の行為は政治資金規正法25条1項2号に、被告発人細田博之は同法2項に、被告発人日本道路興運株式会社は同法26条1号にそれぞれ違反するので、早急に捜査の上、厳重に処罰していただきたく告発する。

第1 被疑事実
 1 被告発人立脇邦彦は、自由民主党島根第一選挙区支部の会計責任者であった者であるが、同政党支部は被告発人日本道路興運株式会社(代表取締役山口哲也)から運転手の派遣を受けていたところ、このような無償の労務の提供による財産上の利益の収受は政治資金規正法4条3項によって寄附に該当しているのであるから、
 (1) 同支部は、2001年(平成13年)1月1日から同年12月末日までの間に無償の労務の提供による財産上の利益合計金3,795,575円の寄付を受けたことを知りながら、同党支部の本法12条に定める収支報告書を島根県選挙管理委員会に提出するに際しては、その寄付を受けた者の氏名(日本道路興運株式会社)、金額(金3,795,575円)年月日(平成13年12月25日)住所(東京都新宿区西新宿6-6-3新宿国際ビル新館8階)、代表者(山口哲也)と記載すべく規定されていたのにそれを記載せず、2002年(平成14年)3月12日、島根県選挙管理委員会に収支報告書を提出し、
 もって本法25条1項2号に違反し、
 (2) 同党支部は、2002年(平成14年)1月1日から同年12月末日までの間に無償の労務の提供による財産上の利益合計金3,637,245円の寄付を受けたことを知りながら、法12条に定める収支報告書を島根県選挙管理委員会に提出するに際しては、その寄付を受けた者の氏名(日本道路興運株式会社)、金額(3,637,245円)年月日(平成14年12月25日)住所(東京都新宿区西新宿6-6-3新宿国際ビル新館8階)、代表者(山口哲也)、を記載すべく規定されていたのにそれを記載せず、2003年(平成15年)3月18日、島根県選挙管理委員会に収支報告書を提出し、
 もって本法25条1項2号に違反したものである。
2 被告発人細田博之は同党支部の代表者であるが、収支報告書に重要な収入を記載しない者を同党支部の会計責任者として選任し、かつ監督について相当の注意を怠ることにより、
 もって法25条2項に違反したものである。
3 被告発人日本道路興運株式会社の資本金は8000万円であるので、法21条の3による政党(支部を含む)及び政治資金団体に対する寄附の総額の制限は年間750万円であるから、
(1) 同社は、自由民主党の政治資金団体である国民政治協会に対して、2001年(平成13年)5月31日、金400万円、前記支部に同年12月25日、金3,795,575円、合計7,795,575円を寄附して、法21条の3の1項の総額規制に違反し、
(2) さらに、同社は、国民政治協会に対し、2002年(平成14年)6月25日、金400万円、同支部に同年12月25日に金3,637,245円、合計7,637,245円を寄附して法21条の3の1項の総額規制に違反し、
 もって法26条1項に違反したものである。
第2 罪名及び罰条
 被告発人立脇邦彦は、政治資金規正法25条1項2号違反。
 被告発人細田博之は、政治資金規正法25条2項違反。
 被告発人日本道路興運株式会社は、政治資金規正法21条の3の1項、同26条1項違反。

告発の理由

1 (自由民主党島根第一選挙区支部の収支報告書の提出)
 (1) 被告発人細田博之は、1996年(平成8年)1月頃より日本道路興運株式会社から運転手の派遣を受けていた。このような無償の労務の提供による財産上の利益の収受は、法4条3項によって寄附として法12条に定める収支報告書に記載すべく定められている。このような無償の労務提供を受けた場合は、法12条の収支報告書に収入としてその寄附者の氏名、住所、代表者、金額、年月日を法9条に定める会計帳簿に記載し、その上、法12条の収支報告書に記載する必要があった。
 告発人立脇邦彦は自由民主党島根第一選挙区支部の、会計責任者として、2002年(平成14年)3月12日、法12条の収支報告書を島根県選挙管理委員会に提出するに際して、寄附を受けた者の氏名、住所、金額、年月日を記載すべき旨定められているのに、その収支報告書に一切それを記入せずに提出し、
 (2) 同人は、2003年(平成15年)3月18日、法12条の収支報告書を島根県選挙管理委員会に提出するに際して、寄附を受けた者の氏名、住所、金額、年月日を記載すべき旨定められているのに、その収支報告書に一切それを記入せずに提出し、
 もって、法25条1項に違反したものである。
2 (代表者の責任)
  細田博之は自由民主党島根第一選挙区支部の代表者であり、運転手の無償提供に自ら関与しているのであるから、会計責任者の上記1の行為を知らなかったとは考えられず、仮に故意がなくとも、その会計責任者の選任、監督に相当の注意を怠ったことは明らかである。
3 (日本道路興運株式会社の責任)
 (1) 同法人は資本金8000万円、国土交通省、日本道路公団等に運転手等を派遣する業務を遂行し、従業員約2500名、年間約164億円余の株式会社である。
 同社が政党(支部を含む)又は政治資金団体に政治献金をする場合、その総額は750万円を超えてはならない(法21条の3、1項)。これに違反すると罰則がある(同26条1項)。
 (2)① 同社は、自由民主党の政治資金団体である国民政治協会に、2001年(平成13年)5月3日、金400万円を寄附している。他方、同年12月25日、前記のとおり同支部に金3,795,575円を寄附したので、合計7,795,575円を寄附したことになり、750万円を超えた部分は法21条3の1項に違反する。
② 同じように、2002年(平成14年)6月25日に国民政治協会に400万円、他方、同年12月25日、前記のとおり同支部に3,637,245円、合計7,637,245円を寄附したことになり、750万円を超える部分は法21条3の1項に違反する。
 (3) 同社は、前記細田博之議員以外に塩谷立衆議院議員(静岡8区)、栗尾敏信元議員、松野頼三元衆議院議員等にも同様に無償の労務提供をしている旨報道されている。そうすればもっと法が定める総額規制違反の抵触することは明らかである。同社は、国土交通省、日本道路公団等に対する運転手派遣業務による収入が大半を占める企業であるから、国会議員との上記のような癒着を是正することが求められる。
 政治家のカネの問題は実にルーズに処理されている。その責任の一端は、このような政治家(国会議員など)を罰する条文があり、且つ、この条文で罰金の刑に処せられれば法28条1項により選挙権及び被選挙権を有しない(公民権の停止)ことになるのに、この条文が「死文化」していることにある。この条文を法律に定めるとおりに運用すれば、このような杜撰な収支報告することは出来なくなるはずである。その役割は公訴権限を独占している検察の役割である。多くの国民は検察にその役割を期待し望んでいる。そのために告発した次第である。
3 以上のとおりであるので、御庁において、上記の金の収支状況について厳重な捜査をしていただきたく告発する次第である。

以上

添 付 書 類

1、委任状 8通

告発人目録

告発人ら代理人目録

被告発人目録

〒107-0052 東京都港区・・・
被 告 発 人    細   田   博   之
〒690-0851 島根県松江市・・・
被 告 発 人    立   脇   邦   彦
〒160-0023 東京都新宿区・・・
被 告 発 人    日本道路興運株式会社
               代表者代表取締役 山   口   哲   也

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