政治資金オンブズマン

末松信介議員(兵庫県選挙区)を7月実施の参議院選挙における落選対象議員第3号として告発しました

兵庫の末松信介議員(自民党)を落選対象議員の第3号として2月2日付で神戸地方検察庁に政治資金規正法違反などで告発しました

告発理由の第1は2010年7月の参議院選挙において金1157万3000円の選挙資金が「出所不明」のカネで捻出していることです。第2は「会費」名目で地元の団体や同窓会に支払っていますが、およそ政治団体が加盟する団体であるとは思われません。このような団体への支払は公職選挙法が禁止している「寄附」に該当すると判断したからです

末松信介(兵庫県選出)自由民主党参議院議員

末松信介(兵庫県選出)参議院の事務所

末松信介後援会
番号 支出の目的 金額 年月日 支払先 住所
1 会費 20,000 H22.9.28 高砂会 神戸市垂水区
2 会費 21,600 H23.4.12 高砂会 神戸市垂水区
3 会費 21,600 H24.2.17 高砂会 神戸市垂水区
4 会費 26,500 H24.6.13 三田学園同窓会 三田市南が丘
5 会費 11900 H24.6.22 附属明石中同窓会ユーカリ会 明石市山下町
6 会費 21,600 H25.2.20 高砂会 神戸市垂水区
7 会費 15,000 H25.7.24 三田学園同窓会 三田市南が丘
8 会費 31,600 H26.2.27 高砂会 神戸市垂水区
9 会費 15,000 H26.9.21 高砂葡萄酒倶楽部 高砂市曽根町
10 会費 20,000 H26.11.23 明石ヨットクラブ 明石市大観町

 

告  発  状

 

2016年2月2日

神戸地方検察庁 御 中

    上脇博之告発人ら13名代理人

  弁 護 士    阪 口 徳 雄

(別紙代理人目録記載の弁護士30名代表)

 

末松信介参議院議員他2名の政治資金規正法違反・公職選挙法違反告発等事件

 

当事者の表示 - 別紙当事者目録記載のとおり

告発の趣旨

被告発人末松信介(自由民主党兵庫県参議院選挙区第一支部及び末松信介後援会の代表者)被告発人山本敏夫(自由民主党兵庫県参議院選挙区第一支部の会計責任者)被告発人大西太三(末松信介後援会の会計責任者)の各行為は、以下の被疑事実記載の法条にそれぞれ違反するので早急に捜査の上、厳重に処罰していただきたく告発する。

 

               記            

第1 被 疑 事 実

1 末松信介参議院議員の2010年7月選挙資金の金1157万3000円の「出所不明」の被疑事実

被告発人末松信介(以下末松信介という)は2010年7月参議院議員通常選挙に際して、公職選挙法第189条第1項に定める「選挙運動に関する収支報告書」(以下本件選挙運動収支報告書という)の収入覧に、自由民主党兵庫県参議院選挙区第一支部(以下本支部という)から金1157万3000円の寄附を受けた旨の本件選挙運動収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に提出しているが、2010年の本支部の政治資金規正法に定める政治資金収支報告書(以下本件2010年政党支部収支報告書という)によると末松信介に寄附した旨の記載もないし、そもそも同政党支部には当時、1157万3000円を支払うだけの資金もない。言わば1157万3000円の選挙資金は「出所不明」の資金によって調達されたことになっている。

本件選挙運動収支報告書通りとすれば、末松信介は本政党支部の代表(支部長)であり、2010年1月1日から同年12月末まで本政党支部の会計責任者であった山本敏夫と共謀の上、1157万3000円に見合う収入を記載せず、また支出覧には末松信介に対し、合計1157万3000円を寄付した旨を本件政党支部報告書に記載する義務があったのに、それらを一切記載せず、同収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に2011年2月28日に提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(不記載罪)に違反したものである。

 

2 後援団体の「会費」等名目の「寄附」に関する被疑事実

(1)公職選挙法違反

末松信介後援会は末松信介の資金管理団体であり、いわゆる国会議員関係政治団体であるが、末松信介はその代表であり、その収入、支出を検討すると末松信介参議院議員の公職選挙法第199条の5第1項に定める「後援団体」であるが、このような場合は「後援団体」は末松信介の選挙区内にある者には寄附をしてはならないところ、末松信介は会計責任者である大西太三と共謀の上、別紙寄附記載目録記載の6乃至10記載の参議院兵庫県選挙区内にある者に対して同記載の日時に、同記載の金額を「会費」名目で各寄附をし

もって後援団体の役職者である末松信介及び大西太三らは公職選挙法第249条の5第1項(法199条の5第1項後援団体の寄附行為)に違反したものである。

(2)政治資金規正法違反(虚偽記載罪)

末松信介は末松信介後援会の代表であり、2010年1月1日から2014年12月末まで末松信介後援会の会計責任者であった大西太三と共謀の上、

同末松信介後援会は別紙寄附目録記載の番号1乃至10記載の金員を同記載の各団体に同記載の会費を支払う義務が明白にないのに、会費を支払ったかの如く「虚偽」に記載を行い、末松信介後援会の政治資金収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に

2010年分については2011年2月24日に

2011年分については2012年1月31日に

2012年分については2013年2月19日に

2013年分については2014年2月14日に

2014年分については2015年2月17日に

それぞれ提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(虚偽記載罪)に違反したものである。

 

第2 罪名及び罰条

1 被告発人末松信介および同山本敏夫の行為は、政治資金規正法第25条第1項2号(政治資金収支報告書不記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

2 (1)被告発人末松信介および同大西太三の行為は、公職選挙法第294条の5第1項違反罪(同法第199条の5第1項違反) 刑法第60条(共同正犯)

(2) 被告発人末松信介および同大西太三の行為は、政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金規正法の虚偽記載罪)、刑法第60条(共同正犯)

 

告発の理由

 

1 2010年7月選挙資金の金1157万3000円の「出所不明」の被疑事実

末松信介は2010年7月参議院議員通常選挙において立候補し、当選した公職の候補者であった。同人の出納責任者であった椎葉鋭一郎は本件選挙運動収支報告書を同年5月7日から7月23日までの間に本支部から計金1157万3000円の寄附を受けた旨の本件選挙運動収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に「第1回目」として同年7月26日に提出している。(甲第1号証)兵庫県公報・平成22年12月28日号外2-3頁
他方、本支部の政治資金規正法に定める2010年本件政党支部収支報告書によると末松信介に寄附した記載も一切ない。また同政党支部には7月26日段階ではおよそ金1157万3000円を支払うだけの原資もない。(甲第2号証)(本件2010年政党支部収支報告書

言わば1157万3000円の選挙資金は「出所不明」の資金によって調達されたことになっている。

本件選挙運動収支報告書通りとすれば、末松信介は本政党支部の代表(支部長)であり、2010年1月1日から同年12月末まで本政党支部の会計責任者であった山本敏夫と共謀の上、支出欄に末松信介に対し同年参議院議員通常選挙の選挙運動費用として計1157万3000円を寄付した旨を、収入欄には、それに見合う収入を、それぞれ本件政党支部報告書に記載する義務があったのに、そのいずれも一切記載せず、同収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に2011年2月28日に提出し

もって政治資金規正法第25条第1項第1号(不記載罪)に違反したものである。

 

2 公職選挙法における国会議員の後援団体の寄附の禁止

(1)公職選挙法第199条の5の定め

①公職選挙法は「政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの」を「後援団体」と定義し、「後援団体」は「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない」と定め(同法第199条の5第1項)「後援団体が第199条の5第1項の規定に違反して寄附をしたときは、その後援団体の役職員又は構成員として当該違反行為をした者」は「50万円以下の罰金に処する」と定めている(同法第249条の5第1項)。

②他方「寄附」と「会費」の区別については同法第179条第2項において「債務の履行としてなされるものを党費又は会費」と定義し、「債務の履行以外の金員の交付」を「寄附」と定めている。

政治資金規正法の解説において「債務の履行とは団体への加入行為とともに予め定まっているものの支払い、売買契約に基づく物品の納入など、債務者が債務の本旨に従って債務内容の実現する行為をいう。……債務の履行とは形式的に債務の履行に該当する場合であっても社会通念上寄附と認められるものは本法の『寄附』に該当する」と定義されている(政治資金制度研究会編集『逐条解説 政治資金規正法[第二次改訂版]』ぎょうせい・2004年57頁)

③後援会などが多くの自己の選挙区内にある団体に加入し「会費」名目で「会費」を払うと前記①記載の寄附行為を潜脱できることになる。政治資金規正法は「形式的に債務の履行に該当する場合であっても社会通念上寄附と認められるものは本法の『寄附』に該当する」としているが、これは、そのような潜脱行為を防止し、脱法を規制するためである。

(2)末松信介後援会は各団体に会費を支払うことは「債務の履行」ではない

①末松信介後援会が2010年1月から2014年12月までの間に別紙添付目録記載の通り各団体に「会費」を支払っている。これらの団体はおよそ国会議員の後援会が団体として会員として加入する組織とは思われない。

ちなみに番号1乃至3、番号5および番号8記載の「高砂会」は、書道教室であり、そもそも政党支部などが加入する組織とは思われない。

番号4、番号5、番号7記載の「三田学園同窓会」「附属明石中同窓会ユーカリ会」「三田学園同窓会」は、いわゆる同窓会で、卒業生個人が加入するものであり、政治団体が加入できる組織でもない。

番号9、番号10記載の「高砂葡萄酒倶楽部」「明石ヨットクラブ」は、政治団体が加入できる組織でもない。

② 末松信介後援会がこれらの団体への「会員」でない以上、同後援会の「債務の履行」に該当しない。同後援会の「債務の履行」でない以上「会費」名目の支払は公職選挙法上の「寄附」に該当することは明らかである。このような「会費」名目で後援会が団体に加入して「寄附」が許されるとすれば、公職選挙法に199条の5において「選挙区内の者」に寄附を禁止した意味を全て脱法出来ることになる。

③選挙区内の者には自然人である個人はもちろん、団体、法人も含まれる。(安田充・荒川敦編著『逐条解説 公職選挙法(下)』ぎょうせい)

よって後援会の役職者が寄附を行なうことは公職選挙法249条の5第1項違反(法199条の5第1項違反)に違反する。この罪は公訴時効が支払日時から3年であるので、被疑事実1記載のとおり告発する次第である

 

(3) 政治資金規正法の虚偽記載罪も成立する

①国会議員関係政治団体の収支報告書における1万円を超える金額の「支出目的」の記載義務

政治資金規正法第12条1項2号、同19条の10において国会議員関係政治団体は収支報告書を総務大臣、又は選挙管理委員会に提出に当たっては、その「支出」については「その目的」及び「1万円を超える金額」「相手方」「住所」などの記載が義務付けられている。

これに違反して「支出目的」に真実の目的を記載しないと法25条1項2号の政治資金収支報告書の虚偽記載罪が成立し、禁固5年以下の刑罰に処せられる。この罪の時効は5年である

②本政党支部は別紙記載1番~10番まで「会費」名目で各年政治資金収支報告書を兵庫県選挙管理委員会に提出している。しかしこれらの本来の支出目的は会費ではなく、寄附に該当する。しかるに、各年の会計責任者(山本敏夫、大西太三)は、政党支部の代表である末松信介と共謀して、会費と記載して、被疑事実記載の通り、各記載して、兵庫県選挙管理委員会に提出したものである

③よって、被疑事実記載の通り政治資金規正法第25条1項2号で告発する次第である。

 

証  拠  目  録

甲第1号証 (兵庫県広報のうち本件選挙運動収支報告書)    1通

甲第2号証 本件2010年政党支部収支報告書)     1通

甲第3号証 2010年末松信介後援会収支報告書)     1通

甲第4号証 2011年末松信介後援会収支報告書)     1通

甲第5号証 2012年末松信介後援会収支報告書)     1通

甲第6号証 2013年末松信介後援会収支報告書)     1通

甲第7号証 2014年末松信介後援会収支報告書)     1通

添  付  書  類

1 甲各号証写し                               各1通

2 委任状                       13通

 

被告発人目録
被告発人氏名 住所
1 末松信介 〒651-2146 神戸市西区宮下2-7-2
2 山本敏夫  住所不明
3 大西太三  住所不明

 

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