橋本龍太郎元首相に対する嫌疑不十分を理由とする不起訴処分は不当であるとの検察審査会の決議。
1 政治資金オンブズマンのメンバーは、橋本龍太郎の2004年(平成16年)9月26日付不起訴処分に対し、2004年10月1日、東京検察審査会に審査の申立を致しました。その結論として、2005年1月27日、検察審査会より下記のとおりの通知がありました。
この議決書によると、検察の捜査が「十分な取り調べを行わず」「検察の機能を十分に果たしているとは言えない」等として厳しく批判されています。
2 本件事件の公訴時効は3年なので、2005年3月29日に満了します。
橋本龍太郎については、会計責任者であった瀧川俊行に対する選任、監督について相当の注意を怠ったかどうかの法解釈の問題ですから、直ちに起訴することは可能です。
国会議員が、会計責任者に対し、選任、監督について相当の注意をしたかどうかという解釈については、一般人の判断を基準にして「相当の注意」をしたかどうかを裁判官が判断すると思われます。
一般人が構成員である検察審査会が、「収支報告書に不記載、虚偽記入するような者を、長く衆議院議員秘書をしていたという実績を評価しただけで、その人物、資質、能力をよく見極めなかった過失がある。更に瀧川が1億円という多額の寄附を収支報告書に不記載、虚偽記入に至る間の橋本の監督上の過失については、当委員会は十分に過失があると考える。」と断定したことは、起訴しても裁判所が有罪と認定することを裏付ける有力な根拠になると思われます。
よって、東京地検は検察審査会の議決を重く受け止め、早急に橋本元首相らを起訴すべきであります。
3 本件検察審査会の決議によって、政治資金団体の代表者が政治資金規正法25条2項違反に関し「会計責任者の違反については知らない」「忘れた」「秘書がやっている」ということでは通用しないということになりました。
今回の議決は今後の捜査機関や政治家に対する大いなる警告になると思われます。
平成17年1月27日
審査申立代理人 東京第二検察審査会 議 決 通 知 書
あなた方から平成16年10月4日付けで審査申立てのあった政治資金規正法違反被疑事件(平成16年東京第二検審審査事件第48号)につき、当検察審査会は下記のとおり議決しましたので、検察審査会法第40条の規定により通知します。 記 1 被 疑 者 橋本龍太郎、瀧川俊行 2 事 件 名 政治資金規正法違反 3 不起訴処分をした検察官 東京地方検察庁 検察官検事 山 田 賀 規 4 不起訴処分年月日 平成16年9月26日 5 議決年月日 平成17年1月19日 6 議決書作成年月日 平成17年1月26日 7 議決の趣旨 1 被疑者橋本龍太郎について不起訴不当 2 被疑者瀧川俊行について不起訴相当 8 議決の理由の要旨 1 被疑者橋本には、会計責任者である被疑者瀧川の選任で、収支報告書に不記載、虚偽記入をするような者を、長く衆議院議員秘書をしていたという実績を評価しただけで、その人物、資質、能力をよく見極めなかった過失がある。更に被疑者瀧川が、1億円という多額の寄附を収支報告書に不記載、虚偽記入に至る間の被疑者橋本の監督上の過失については、当検察審査会は十分に過失があると考えるので、嫌疑不十分という結論には納得できない。 2 被疑者橋本は、法律を制定・施行する現役国会議員という社会的地位等にかんがみても、重大な責任を担っている。嫌疑不十分という曖昧な結論には納得がいかない。 3 被疑者橋本が、平成研究会の代表者として料亭での会食の席で1億円の小切手を受領したという事実は、日歯連の役員らの供述で明らかであるにもかかわらず、この会食を全面否定している被疑者橋本に対し、十分な取調べを行わずに、不起訴処分にしているということは、検察の機能を十分に果たしているとは言えない。 4 被疑者橋本が、平成研究会の代表者を降りただけでは世間は納得しない。 よって 1 被疑者橋本については、検察官がした不起訴処分には納得できないので、上記趣旨のとおり議決する。 2 被疑者瀧川については、本件不起訴記録並びに申立人らの提出資料を精査し、慎重に審査した結果、既に関連事件において有罪に処せられているので、上記趣旨のとおり議決する。 |