熊谷組松本良夫元社長の名古屋高裁金沢支部での証言記録(全文)です。
森脇代理人
乙第22号証及び乙第29号証を示す
今示した乙第22号証及び乙第29号証の陳述書,これはあなたがこの裁判
で裁判所にお出しになっているものですが,記載内容については,あなた御
自身よく確認した上で,間違いないということで署名,押印なされたもので
間違いございませんか。
間違いありません。
あなたの経歴については,乙第22号証の冒頭に書いてありますけれども,
もともとの御専門は土木技術者であると伺ってよろしいでしょうか。
そのとおりでございます。
ちなみに,あなたは最近我が自及び諸外国におけるPFI事業の手法とその
問題点について書かれた研究論文で,東京大学工学部から博士号を授与され
ましたか。
はい,そのとおりです。
熊谷組で取締役に就任なさったのは,平成8年6月ということでよろしいで
しょうか。
はい,そのとおりです。
平成9年10月に会社が経営革新中期計画を発表した後の同年11月に会社
の社長に就任されておりますが,その直前の役職は何だったでしょうか。
常務取締役経営管理本部長でした。
乙第23号証を示す
今お示しした乙第23号証は,会社が平成5年7月に策定した体質改善3ヶ
年計画という計画の抜粋ですが,会社ではこれに基づいて,以後計画的に有
利子負債の圧縮,あるいは未収債権の回収といったことに取り組んできまし
たですか。
はい,そのとおりです。
乙第9号証を示す
今お示しした乙第9号証は,会社が平成9年10月に策定して発表した経営
革新中期計画という計画の抜粋ですね。
はい。
あなたは,当時経営管理本部長として,この計画の作成に関与しましたね。
はい,関与しました。
今これを仮に平成9年計画と呼ばせていただきますけれども,ちょっとその
4ページを見てください。4ページには,上には「財務体質の抜本的改革」
という表題があって,その中には会社が海外開発事業の整備あるいは国内固
定化債権の償却を一括して実施して,平成10年3月期に合計2390億円
の特別損失を計上して,財務体質の抜本的改善を図るんだということが書い
てありますね。
はい。
このとおりですね。
はい。
今伺ったように,平成5年に体質改善3ヶ年計画を立ててきたわけですけれ
ども,会社はなぜ平嘩9年10月という時期にこの平成9年計画を策定する
必要が生じたのか,簡単にその背景事情をおっしゃっていただけますか。
体質改善計画の効果があらわれまして,約4年間で有利子負債,保証
債務が約2000億円削減でき,また平成9年3月には受注量も5年
ぶりに1兆円を達成しまして,平成10年3月期にも業績が同じよう
な数値が見込まれたものですから,この期を機に。また,その当時日
本の経済の方も株価2万円を回復しまして回復基調にあると。そして,
海外の方も不動産市況も回復基調にあるということで,この際損失を
一気に処理して,経営計画を再建フェーズから発展フェーズに移行さ
せようとした次第でございます。
そうしますと,平成9年計画作成当時は,会社の本業の業績あるいは今後の
業績見込み,これは好調だったと伺ってよろしいでしょうか。
はい。業績が好調だったことがゆえに,このような計画を立てること
ができました。
好調であり,今後の業績見通しがあればこそ,思い切った損失処理あるいは
有利子負債の削減計画が立てられたんだという御趣旨ですか。
はい,そのとおりです。
その後実際の平成10年3月期の本業の業績を拝見しますと,売上高が1兆
132億円,営業利益が244億円,経常利益として155億円ということ
ですけれども,これは当時どのように評価されておりましたか。
業界順位売上高5番目だったと思います。業績としては,非常に堅調
だったと思います。
先ほどお示しした乙第9号証の平成9年計画の4ページなどを拝見します
と,その期に海外の開発事業,これを十数件売却整理して,合計1500億
円余りの海外事業整理損を計上するということですけども,整理する海外事
業の案件はどうやって選んだんでしょうか。
その当時保有コストが過大なもので,売却が早期に可能なものを選び
ました。
物件の中で,直ちに売却することはないけれども,今後次期以降整理してい
くという見込みのものについてはどうされましたか。これについては,引当
金を計上したということはありますか。
はい,引当金を計上いたしました。
原告のサイドでは,この平成9年計画によって処分した案件の多くは,既に
バブルの経済の崩壊によって,それ以前から時価が原価より大きく下落して
いたのにもかかわらず,会社が損失処理を先送りしていたものであるという
ふうに御主張なんですけれども,これらの物件の損失処理について,当時の
会計基準からすると,どうだったんでしょうか。
損失を引き当てる必要はありませんでした。
じゃ,これらの物件のいわゆる時価といったものについては,どのように考
えられていたでしょうか。
私どものやっておりました開発事業は,素地に付加価値をつけまして,
販売物件または事業物件としておりますので,ゴーイング・コンサー
ン・バリューをとっておりました。
そうすると,時価といっても考え方がいろいろあるわけですね。
はい,そのとおりです。
例えばどういった考え方があったということなんですか。
例えばそのまま事業価値を考えずに売却してしまうものとか,いわゆ
る…。
購入する側で見るとですけど。
再びその事業をつくり上げるために必要な金額を計上しておくと。
それは再調達価格ということですか。
はい。
時価については,幾つかの考え方があったということでしょうか。一
はい。
そうすると,先ほどおっしゃったのは,それより以前の期において必ずしも
損失処理必ずしなさいということでは,当時の会計基準からすると,そうで
はなかったという御趣旨ですか。
はい,そういう趣旨ではありませんでした。
あるいは会計基準を見ますと,時価が著しく下落したときとか.回復する見
込みがあるときといったような文言があるんですけれども,これらの判断基
準,これは当時の会計基準からいうと,はっきりしたものがあったというふ
うに御理解いただけますか。
明確な基準はありませんでした。
そうすると,これら平成9年計画で売却した物件は,それまでの前年度以前
については,まだ時価が著しく下落しているとは言えない,あるいは今後時
価が回復する見込みがあるという御判断のもとに保有を続けていたという
ものでしょうか。
はい,そのとおりでございます。
平成9年計画の時点では,事業をなお継続するという方針で売却しなかった
物件の中で,後で触れますけれども,3年後の平成12年に立てた新経営革
新計画,これに基づいて損失処理した案件というものがございますか。
あります。
そのような案件について,この3年前の平成9年計画の時点で損失処理すべ
きだったということはお考えでしょうか。
その時点では考えませんでした。
そうすると,先ほど保有コストが過大なものから処分していったというふう
に伺いましたけれども,残した案件というのは保有コストから見るとどうだ
ったんですか。
保有コストが収支均衡しておりまして,長期に持つことが可能であり
まして,市況価格の回復を待つこと,また事業を継続することが可能
でありました。
そうすると,平成9年の時点では,それは残したというのは正しい判断だっ
たというふうにお考えなんですね。
私は,正しい判断だと確信しております。
それを平成12年計画では,なぜ処分することになつたんですか。
新会計制度が平成13年3月から適用されるということで,強制評価
減をとらなければならないとなったことであります。
じゃ,海外を離れて,若干国内のことについて聞きますが,平成9年計画で
は国内の長期滞留債権,これについてはどのような方針で損失処理をなさい
ましたか。
回収が困難なものについては,できるだけ引き当てをとりました。
この引き当てというのは,かなり積極的にとられたという考えですか。
はい,積極的にとりました。
ところで,熊谷組では以前より会社の決算については監査法人の監査を受け
ておりますね。
はい,そのとおりです。
平成9年度以前の決算についても,監査法人の監査を受けていますね。
はい。監査法人の方から適切な会計処理であったということで監査報
告を受け,また株主総会でそのように報告し,承認を受けております。
監査法人から適正意見を受けていたということですね。
はい。
平成9年度,年でいうと平成10年3月期,この決算についても監査法人の
適正意見を得て,決算として確定しておりますね。
はい。
この平成10年3月期の決算では,合計488億円の欠損金を計上されまし
たが,これはその年の6月の定時株主総会で法定準備金を取り崩してすぐに
欠損を解消した,こういう理解でよろしいですね。
はい,そのとおりです。
じゃ,次に平成11年3月期の業績について若干お伺いしますが,会社の平
成11年3月期の決算,これは記録を拝見すると,売上高約9000億円,
営業利益が261億円,経常利益が76億円という業績ですが、この業績に
ついてはどのように評価されておりましたか。
売上高につきましては,計画より未達でございましたが,一般管理費
の削減,営業利益の増ということで,業績としては堅調であったと考
えております。
今おっしゃった営業管理費の削減というのは,目標であった500億円を下
回ったということでしょうか。
はい,一般管理費でございます。
営業利益は,前年よりよかったということですね。
はい,そのとおりです。
そうすると,この当時会社の経営が行き詰まっているとか,逼迫していると
かという認識はあったんでしょうか。
全くありませんでした。
じゃ,次に平成12年3月期の業績のことについてお伺いしますけども,平
成12年3月期の決算,これは記録を拝見すると,売上高が6914億円,
営業利益が176億円,経常利益が55億円だったということで,これはち
ょっと平成9年計画よりは低いようですけれども,この業績については,ど
のように評価なさっておりますか。
売り上げについては,市場が非常に厳しくなっておりまして,未達で
ございましたが,一般管理費の削減は前年度より大きくでき,また売
り上げ利益につきましては,前年度より1ポイント向上し,前々年度
より2ポイントばかり向上しておりまして,経営計画が進んでいると
いうことで私は考えておりました。
今売り上げ利益とおっしゃったのは,売り上げ利益率が改善されておったと
いうことですか。
はい,そのとおりです。売り上げ利益率です。
が前年より1パーセント,前々年度より2パーセントよくなっていたと。
はい。
会社にとって売り上げ利益率というのを1ポイント上げるというのは,どの
程度大変なことなんですか。
この当時9.数パーセントだったと思いますので,1パーセント上げ
るということは,約10パーセント前年度より上げるということで,
大変な努力が必要だったと考えております。
甲第13号証を示す
次に,平成12年の新経営革新計画のことについてお尋ねいたします。今お
示しした甲第13号証は,これは会社が平成12年9月18日に発表された
新経営革新計画という計画の書類でございますね。
はい,そのとおりです。
これを今仮に平成12年計画と呼ばせていただきますが,この作成にはあな
たは会社の社長として関与なさいましたね。
はい,そのとおりです。
この計画の主要な柱の一つは,不良資産の一括処理ですね。
はい,そのとおりです。
ちょっと7ページをあけてごらんください。ここを見ますと,グラフが書い
てありますが,ちょっと左側読みにくいですが,海外事業資産の処理で約2
800億円,それから国内債権の処理で2000億円など合計5700億円
の特別損失を計上するんだという内容ですね。
はい,そのとおりです。
平成12年計画,これを作成するための作業,これはいっごろから開始され
たんでしょうか。
平成12年7月,前年度の株主総会が終了した後開始いたしました。
定時株主総会は6月末ですね。
はい。
その直後ごろから開始したということですか。
はい,そのとおりです。
どういうチームで作成していますか。
財務本部と経営企画本部からメンバーを集め,チームを編成いたしま
した。
なぜこの時期にこの計画の作成が必要になったのかということについて,あ
なたの陳述書には,第1にこの年に新しい会計基準が変更になって適用され
るようになったと。それから,第2に当時会社を取り巻く環境が一段と厳し
くなったということを挙げておられますけど,まず最初のこの会計基準の変
更ということについて,もともと会計の御専門家ではないでしょうけれども,
どのあたりが変わったというふうに理解されておりますか。
特にたな卸不動産については,強制評価減をとらなければならないと
いうことで,時価が50パーセント以上傷んでいるものについては,
強制評価減をとらなければいけないと。また,たな卸不動産につきま
しては,不動産鑑定士の評価が必要であるという新しい基準が明確に
平成12年7月に採用され,それにのっとって平成13年3月期に損
失処理をするようにという基準でありました。
今おっしゃった強制評価減,減損処理をしなければいけないということです
ね。
はい。
著しく価格が下落しているということの解釈として,50パーセント以上取
得価格がほかより下落しているときはそれに当たるんだということですね。
そのとおりです。
基本的には,不動産鑑定士の評価をとりなさいといったことですね。
そのとおりです。
評価の仕方として,売却見込額をもって基本的に考えなさいということもあ
ったんですか。
はい。
あるいは回復の見込みがあるかないかということを従前,先ほど余りはっき
りした基準はなかったということでしたけども,これについてはどうでした
か。
たしか期間等がある程度決められてきて,確実にそういう証拠がなけ
れば回復の見込みということが言えないような規定だったと思いま
す。
こういったものの細目がはっきり決まったのが平成12年7月なんだという
理解ですね。
はい,そのとおりです。
熊谷組は,本体あるいは海外の子会社として,多くの不動産開発事業である
とか販売用不動産を持っていましたね。
はい,そのとおりです。
この新しい会計基準の適用によって,大幅な損失処理が必要になるんだとい
うことになったわけですか。
そのとおりです。
次に,2番目の先ほど申し上げた会社を取り巻く環境がこの当時一段と厳し
くなったというようなことが書かれておりますけども,具体的にちょっと説
明していただけますか。一
熊谷組の融資を受けている準メインの銀行は新生銀行でありました。
新生銀行は,そごう,そして第一ホテルのメインバンクだったと思い
ますが,こちらの方で債務免除が適用できないということで,新生銀
行から当社へ融資している分についても信用不安が当時流れまして,
たしか6月ごろだったと思いますが,株価が額面を割ったということ
で,お客様,また納入業者,下請業者に信用不安が出てきましたもん
ですから,これを払拭するために新しい経営計画の作成が必要であり
ました。
今おっしゃった新生銀行は,旧日本長期信用銀行ですね。
はい,そのとおりです。
今おっしゃったのは,そごうあるいは第一ホテル,これが銀行に対して債権
放棄要請をしていたけれども,新生銀行がこれに応じないということだった
わけですね。
はい,そのとおりです。
このために平成12年7月にそごうは民事再生申し立てをしましたね。
はい,そのとおりです。
あるいは第一ホテル,これも平成12年5月に法的倒産に至りましたね。よ
ろしいですか。
はい,そのとおりです。
今おっしゃったのはそれとの連想で,準メイン銀行が新生銀行だった熊谷組
もいろいろマスコミに取りざたされるようになったということなんでしょ
うか。
はい,そのとおりです。
6月に株価が割れたというのは,熊谷組の株価が額面割れし之ということで
すね。
そのとおりです。
そうすると,急いで信用維持のために,こういう計画を策定する必要が生じ
たと。
はい,そのとおりです。
平成12年計画を立てる前提として,会社はその保有するほとんどすべての
資産について,新しい会計基準に基づく時価評価を実施したんでしょうか。
はい,そのとおりです。
乙第16号証を示す
今お示しした乙第16号証というのは,会社が行った資産の時価評価の方法,
あるいは評価損の処理方法が,その期から適用されることになった新しい
会計基準あるいは公認会計士協会で定めたガイドラインに照らして妥当か
どうかということを監査法人に監査してもらった報告書ですね。
はい,そのとおりです。
ちょっと2ページ目をあけてごらんになってください。この2ページの記載
によると,会社は保有する販売用不動産あるいは不動産事業,海外開発事業,
国内問題債権のほぼすべてについて不動産鑑定士による鑑定評価を実施し
て,評価額が簿価より50パーセント以上下落している物件すべてについて
減損処理を実施したとありますが,そのとおりですか。
そのとおりです。
そうしますと,会社は1件ごとに時価評価と評価損を積み上げて,必要とな
る損失処理額を出していったということでしょうか。
そのとおりです。
損失処理のためには原資が必要になりますね。
はい。
その原資を捻出するために資本の減資とか,あるいは銀行への債務免除を要
請しなければならない金額とか,そういったものを詰めていったということ
でしょうか。
はい,そのとおりです。
そういう作業は相当集中的になさったというふうに伺ってよろしいでしょ
うか。
はい,そのとおりです。
じゃ,この平成12年9月18日に計画の公表に至ったということですね。
はい,そのとおりです。
あなたは,当時社長として個別の案件の評価方法あるいは評価内容まで細か
くごらんになっていたんでしょうか。
全体的な報告は聞いておりましたが,個別の案件の詳細については聞
いておりません。
適宜必要に応じてチームから報告は受けていたと。
はい。財務本部が中心になってやっておりましたけれど,そこからの
報告は受けておりました。
実際の作業は,プロジェクトチームで行っていたということですね。
はい,そのとおりです。
原告側では,平成13年3月の決算で計上した特別損失については,実は前
の年度以前から物件の時価が低下していたんだから,以前の年度で本来処理
すべきものであって,その以前の年度も実質的には欠損状態にあったはずな
んだというふうに御主張になっていますけども,どういうふうにお考えです
か。
企業の決算は,その時々の会計基準にのっとってやっております。私
どもの決算は,その時々監査法人から適切であるという監査を受けて
おります。私としては,それぞれの年,適切に処理されていたと思っ
ております。
甲第41号証の12の73ページを示す
今お示しした甲第41号証の12とい.うのは,平成13年3月期の熊谷組の
有価証券報告書のこの73ページというのは,財務諸表の注記の部分であり
ますけれども,そこには当期から金融商品に係る会計基準を適用した結果,
従来からの方法に比べ,税引前当期純損失3520億円多く計上されている
と書かれておりますけれども,これは今あなたのおっしゃったことと関係が
あるんでしょうか。
はい,そのときの会計基準で出た損失であります。
そうすると,前年度の基準でやっていれば,この損失というのは出なかった
という趣旨の解釈ですね,そこは。
はい,そうです。
新しい会計基準を適用した結果,多く計上されているんだということですね,
損失がね。
はい,そのとおりでございます。
ここに書かれているのは,期末に保有している有価証券や債権の評価損につ
いての数字ですけれども,そうしますと会計基準の変更を機に会社がその期
中で売却した,あるいは償却を行った資産の損失,これを加えれば会計基準
の変更による損失額はこれよりもっと大きな金額になるんじゃないでしょう
か。
そのとおりでございます。
ところで,さっきもちょっとお聞きしましたけれども,平成12年計画で損
失処理した海外事業の中には,3年前の平成9年計画のときには事業を継続
するとして保有を続けた案件もあるんじゃないかと思いますけど,どうでし
ょうか。
そのとおりでございます。
そうすると,平成9年の計画のときと平成12年の計画のときとで,同じ案
件の評価が大幅に異なるというのはどういった理由によるもんでしょうか。
まず第1は,会計基準の変更であります。二つ目としては,この3年
間の間で事業環境等が変わってきておりますので,そこらを合わせた
影響となっております。
甲第13号証の3ページ~4ページを示す
これは再び新経営革新計画,平成12年計画ですけれども,3ページの上の
方に「「選択と集中」による事業構造の見直しと競争力の強化」ということ
が書いてありますね。
はい。
そして,もう一ページめくっていただいて,4ページの上の方,(2)とし
て「海外工事における得意分野,地域への特化」といったことが書いてあり
ますね。
はい。
これは,新しい会計基準の適用と何か関係があるんでしょうか。
当社の場合,世界各地で開発事業を行っておりましたけれど,新しい
会計基準からも今後は選択と集中が必要であるということで,開発事
業については改めて見直しして整理等を始めております。
新しい会計基準を機に,かなり海外の案件から撤収を図ったということです
ね。
はい,そのとおりです。
平成12年9月にこの新経営計画を発表された後の同じ年の12月に,あな
たは社長及び会社の取締役も辞任して会社の経営陣から離れられましたね。
はい,そのとおりです。
なぜこのタイミングでの辞任ということになったんでしょうか。
金融機関に債務免除を4500億円お願いしておりました。この時期
に,ほぼ金融機関から内諾を得ることができました。それを契機に経
営から退きました。
大きな損失処理のめどがついたのを機に経営責任をとったということです
ね。
はい,そのとおりです。
あなたが退任された後の2年後の平成15年3月期に,会社は約3000億
円の特別損失を計上しているようですけれども,その内容とか詳細について
あなたは御存じですか。
私は,経営から退いておりましたので,知りません。
経営には一切タッチしていないわけですね。
はい。
じゃ,次に本件で問題になっている熊谷組が行っていた政治献金のことにつ
いてお尋ねします。会社が行っている政治資金の寄附,いわゆる政治献金は,
あなたの社長在任当時は年間で総額幾らぐらいであったというふうに記憶さ
れておりますか。
2000万円から3000万円でありました。
熊谷組においては,年度ごとに会社全体の予算を立てると思いますけれども,
政治献金についても大まかな予算というものは立てておりましたか。
はい。年度末に次の年の予算をその当時の経営状況を考えながら予算
を決めますが,寄附金,政治献金等は一般管理費の中で決めております。
金額としては幾らぐらいですか。
例年約2000万円から3000万円の金額です。
熊谷組では,政治献金の所管部署は秘書部であったということですね。
はい,そうです。
会社に対して献金要請があった場合に,秘書部ではどういったことをチェッ
クなさるんでしょうか。
まず,献金金額が過大でないか。そして,選挙に絡んだ献金ではない
か。また,政治資金規正法の枠内であるかというようなことをチェッ
クして報告が来ます。
政治資金規正法の限度額というのは,当時熊谷組は幾らだったんですか,年
間。
8700万円です。
秘書部の方で,一応これは献金してもいいんじゃないかというものが決裁に
回ってくるんでしょうか。
秘書部としては,第1次の審査ということで,これは規定内というこ
とで報告が来ます。
それは,あなたに来る前にだれに回りますか。
担当の副社長であります。
副社長の承認をとってからあなたのところに回ってくるということですね。
はい。
会社は,あなたが社長になられる前から毎年自由民主党の政治資金団体であ
る国民政治協会に献金を行ってきたわけですが,その理由を一言で言えばど
ういうことになりますか。
自由経済主義の維持発展,これによって熊谷組の経営基盤も安定する
というように考えておりました。
原告側,あるいは1審の裁判所は,自由主義経済体制の維持発展というだけ
では,今日の我が国の主な政党は皆同じ経済体制を標榜しているわけだから,
自民党に対する献金の理由としては合理的じゃないじゃないかというふう
に言っておりますけれども,どのようにお考えでしょうか。
私の意味するところは,政党がそれを標榜しているということだけで
なく,やはり政権政党として戦後経済復興をさせてきたその実績,ま
た経済政策の立案能力,そしてその実行力に注目して支援してきた次
第であります。
あなたが社長だった時期というのは,我が国経済は長期景気低迷の中にあり
ましたね。
はい。
それとの文脈の中では,どういう趣旨になるんでしょうか。
ともかく早く不況から脱却して経済を活性化させ,長期に安定した経
済体制をつくってほしいという気持ちがありました。
そのために基盤,実績と能力のあるのは自民党であったというふうにあなた
は考えていたということですね。
はい。
次に,1審判決は,本件で問題になっている献金は会社にとっては何らの有
用性もないむだな支出であったんだというふうに断定していますけども,あ
なたとしてはどういうふうにお考えですか。
もちろん政治献金は,具体的に有用性ということではないかもしれま
せんが,先ほども申し上げましたように,経済政策が成功すれば長期
に経済が安定し,そして私どもの建設産業としましても将来の経営基
盤の安定につながると考えました。
本件で問題となっている献金の中には,国民政治協会からもともとは日本建
設業団体連合会,いわゆる日建連を通じて献金の要請があったものが相当あ
りますね。
はい。
日建連というのは,建設業界の中では最大の業界団体ですね。
そのとおりです。
幾つかの業界団体のほか,我が国の主立った全国規模で活動している建設会
社約60社が法人会員となっておりますね。
はい,そのとおりです。
もちろん熊谷組もその会員でしたね。
はい,そのとおりです。、…‘
日建連というのは,さまざまな業界活動をなさっていると思いますが,それ
に要する費用というものがあると思いますけども,それは各社どのように分
担していたのでしょうか。
各社経営規模によってグループ分けされておりまして,グループ別に
各企業が割り当てられた会費を払っておりました。
グループごとに,上の大きい会社ほど大きな割合の負担をしているというふ
うに伺ってよろしいですか。
そのとおりでございます。
経営規模とおっしゃいましたが,それは主なメルクマールは何でしょうか。
売り上げとか資本金とか,そういうものだったと思います。
当時熊谷組は,日建連のそういうもろもろの会費の負担に当たっては何番目
のグループに属しておりましたか。
第1グループに属しておりました。
第1グループは,ほかにどういう会社が所属していますか。大手何社。
大手5社が入っておりました。
プラス熊谷組で構成するのが第1グループであったということですね。
はい,そのとおりでございます。
今お尋ねしているのは,日建連全体の費用負担の割合のことですけれども,
日建連というのは業界団体ですから,さまざまな社会的な寄附の要請という
ものを受けることがありますね。どうでしょうか。
はい,そのとおりです。
例えば教育,文化,医療,福祉関係,こういった公益団体から寄附要請があ
るということがあるんじゃないでしょうか。
はい,そのとおりです。
そういう日建連に対する寄附の要請というのは,日建連ではどの場で協議し
ていたというふうな理解をしていますか。
社会貢献活動協議会という,通称十日会と呼ばれていますが,これが
日建連の法人メンバーによって構成されております。社会貢献活動
は,こちらの方でしておりました。
日建連の法人会員数十社で組織しているのが十日会,社会貢献活動協議会と
いうふうに伺ってよろしいですね。
そのとおりでございます。
各種寄附要請については十日会で協議をして,寄附をするかどうか,寄附の
金額等について決めていたということですね。
そのとおりです。
その場合の各会社の分担というのは,どうやって決まるんですか。
第1グループ,第2グループというような格好でグループ分けされて
おりまして,そのグループ分けによって分担の目安が定められており
ました。
そうすると,先ほどお聞きした日建連全体の費用負担もグループ分けで分担
していたということですけど,同じような規模別のグループ分けをしていた
ということですね。
そのとおりでございます。
熊谷組は,当時どういうグループですか。
第1グループです。
ほかの大手5社と言われるものと熊谷組ですね。
はい,そのとおりです。
政治資金の寄附要請についても,この十日会で寄附をするかどうか,寄附金
額,各社の分担目安額といったものを協議するという仕組みだったというふ
うに理解してよろしいですか。
はい,そのとおりです。
それは,グループ別の割合で大体目安金額を決めるんだということですね。
はい,あくまで目安で決められる。
実際寄附するかしないかは,どこが判断するんですか。
各企業がそれぞれ独自に判断いたします。
熊谷組では,十日会の担当の部署はどこですか。
総務部が参加しています。
日建連で第1グループに入っていろんな業界活動をなさっていたと思います
が,上位のグループに入っているということはどういうメリットがあるんで
しょうか。
委員会活動として業界活動がいろいろ行われておりますが,ここに委
員を派遣したり,委員長として参加したりすることは,企業の意見を
業界団体の中で反映させたり,またいろいろな建設業界の問題等につ
いて,また技術,そういうものについての情報が会社の方に入ってき
ます。
あるいは民間で大きな工事をやるなんていうときに,よく我々町中でジョイ
ント・ベンチャーの標識なんて見ますけれども,そういうのの受注に何か関
係がありますか。
はい。やはり建設工事の中で,かなりの部分がジョイント・ベンチャ
ーでやります。その中で,やはり業界団体でリーダーシップを持って
いる会社はスポンサー等,JVの中でのリーダーシップが認められま
す。
そうすると,ジョイント・ベンチャーのスポンサー企業としてふさわしいと
いうふうに目されやすいということですかね。
はい,そのとおりです。
今おっしゃったジョイント・ベンチャーの受注という点は,念のために伺い
ますけども,公共工事の受注がしやすくなるといったような意味ではないで
すね。
ジョイント・ベンチャーは,公共工事でも民問工事でも行われており
ます。
特に公共工事の受注がしやすくなるから献金しているんだというようなこと
じゃございませんね。
全くそういうことではありません。
建設業界内外の地位と信用の維持のためにも,日建連経由の分担には応じた
方がいいということで考えていたということですが,そのとおりですか。
はい,そのとおりです。
じゃ,ことしはちょっと業績悪いからということで,会社が献金を断るとい
うことになりますと,どういった悪影響が考えられるんでしょうか。
債務免除も受けておらず,これだけの業績を上げている会社が業界団
体での目安として与えられた政治献金について果たすこと,2000
万円程度の献金を果たすことができないということは,財務的にも大
きな問題のある会社じゃないかということで,お客様への信用,また
納入業者,下請業者の支払い等,大変な不安を起こすと考えました。
当時建設業界の受注競争というのは相当厳しいものがあったんでしょうか。
はい。一つでもネガティブ情報が広まりますと,それを企業間の競争
の中で,ネガティブ情報として風評等を広げるというような企業も多
くありました。
会社の一般管理費は,年間大体幾らぐらいですか,当時。
約500億円でした。
会社が方々いろんな公共団体あるいは社会貢献寄附といったものに寄附して
いる寄附の総額というのは年間幾らぐらいだったでしょうか。
3億円から5億円ぐらいだったと思います。
その中で年間2000万円という程度の政治献金の占める割合は,それほど
経営上大きな金額ではなかったということでしょうか。
はい。
それよりも先ほど第1グループとして活動している中で,応分の負担を,グ
ループ分けに応じた負担をするということの方が大事だというふうにお考え
だったということでしょうか。
はい,そのとおりです。
あなたの御存じの限りでいいんですけども,法的倒産処理に入る前あるいは
銀行に正式な債務免除要請をする前の建設会社で,こういう業績不振を理由
に日建連経由の献金を断った建設会社はあるんでしょうか。
ないと聞いております。
熊谷組は,平成10年以来株主に対する配当を行っておりませんでしたね。
はい。
無配が続いていたことは,政治献金をするしないの判断に影響したんでしょ
うか,しないんでしょうか。
私どもが3円配当するのに,資金として約20億円かかります。20
00万円が直接それをセービングしたからといって配当できるもので
はありません。それよりも2000万円のコストで当社の地位,信用
を維持すること,またそれを献金して経済がよくなること,そういっ
た面の方がはるかに会社にとって長期,間接的にプラスと考えました。
先ほど秘書部からの申請は,社長決裁の前に副社長の承認をとるということ
でしたね。
はい,そのとおりです。
具体的には,どなたの承認ということになりますか。
秘書部,そして総務部担当の副社長の三井と営業総合本部担当の吸
副社長です。
個別の献金をするかしないかということについて,副社長と協議をしたとい
うことはございませんか。‘"
政治献金については,年度末の予算の時点で一般管理費の予算を決め
るとき,いろいろ協議しております。個別の献金につきましては,平
成12年度の献金につきまして受注も少なくなっているんで,これを
セービングするために第1グループから第2グループヘ下がったらど
うだろうかというようなことを協議いたしました。しかしながら,現
在の第1グループに所属することが企業経営にとって、よりメリット
があると。また,ステップダウンを申し入れることによってネガティ
ブ情報がいろいろ出るというようなことも考えまして,現在の位置を
堅持するということで献金も予定額を行いました。
それは,今おっしゃったのは平成12年4月に行った献金ということですか。
はい,そうです。
そういったことでまとめますと,会社の方でなさっていた政治献金,これは
いろんな意味で会社にとって長期的な有用性はあるんだという判断のもとに
やっていたんだというのがあなたのお考えだと伺ってよろしいですか。
はい,そのとおりです。
阪口代理人
甲第40号証の1を示す
あなたは,裁判に出るに当たって,私どもが出した書類はごらんになりまし
たか。
見たものもありますが,見ていないものもあります。
じゃ,甲第40号証の1,この表ですけれども,これはごらんになりました
か。
見ていません。
ここに熊谷組が平成8年5月29日に1176万円献金したと。これは,し
ていることは間違いないですね。
はい。
その次は,5月30日に705万6000円献金したと。
はい。
これは,献金していることは御存じですね。
数値,日にち等は記憶にありません。
あなたの方は,この当時は社長じゃないですね,平成8年ですから。‘
はい。
今言った二つの数字というのは,いわゆる十日会が決めた金額で一応の数字
が示されて,熊谷組が献金した数字というのは御存じですか。
森脇代理人
今社長の時代,前を…。
阪口代理人
前のことを聞いている。だから,御存じですかと聞いている。
覚えておりません。
平成8年当時は,社長は熊谷太一郎さんですね。
はい,そうです。
知っているのは,熊谷太一郎さんですね。
はい,そうです。
その当時のこれを決裁している人というのは,副社長はだれになりますか。
平成8年は,堀,三井だったと思います。
堀さんという人と三井さんという方なんですね。
はい。
そうすると,ちょっと社内の話を聞きますけれども,これは一般的な献金の
話なんです。十日会からこういう数字だということで数字が示されたときは,
これはまず秘書部に来るんですか。
総務部から十日会に社員が行っております。そこで協議された数値,
目安というんですか,金額を総務の担当が聞いて社内へ持ってきます。
そして,それは秘書部に伝えるわけですか。
はい,そうです。
秘書部から副社長及び社長あてに決裁の稟議書というのが上がるわけです
か。
はい,そのとおりです。
正式な名前は,稟議書でよろしいですか。
稟議書でいいと思います。
じゃ,あなたの在任当時で結構ですけど,平成10年のときにあなたが3月
30日は決裁していますから,このときにはその秘書部から上がってくる書
類には,どんなことが書いてあるんですか。
国民政治協会からの要請によりという感じで来ていると思います。
甲第40号証の2を示す
これは,熊谷組は3月30日に1867万2000円献金していると。
はい。
これは,あなたが社長になってからの決裁でしょうから,あなたは御存じで
すね。
はい。
そのときには,じゃ日建連からこういう要請があったと。具体的には,どん
なことを書いてあるんですか。
詳しくは覚えておりませんが,要請があったということだけだったと
思います。
日建連から要請があった。
はい。
そして,金額はどうなんですか。
金額は,要請あった金額が来ております。
そうすると・3月30FIに決裁があった1867万2000円という数字が
十日会で決まったから,これを熊谷組でも献金したいがどうかと,こういう
形で秘書部から副社長を通してあなたに来ているんですね。
はい,そうです。
それ以外のことは書いていませんか。
書いてありません。
もう,じゃ端的に日建連からこういうことで決まったから,これをしていい
かどうかと,こういう形になるわけですね。
はい。十日会の方で,こういう目安があったからという口頭の説明あ
ります。
その中には,じゃ日建連,十日会で総額自民党に対してどれだけの献金をす
るかというような数字は書いていないですか。
これには書いておりませんが,十日会で協議されたと聞いております。
だけど,あなたの稟議書の中には出ていないんですか。
出ておりません。
あなたは,じゃこの3月30日の十日会で議論された内容というのは聞いて
いらっしゃるわけ。
聞いておりません。
そうすると,ちょっと十日会の話に入りますけれど,十日会は,これはあな
たの総務部の人が出ているんですか。
はい,そうです。
総務部の役員が出るんですか,それとも…。
当時は,普通は総務部長が出ておったと記憶しております。
あなたが決裁した平成10年3月30日の分,このときも総務部長でしたで
すか。
人の名前までは…。
いや,名前はいいです。
場合によっては代理もありますんで,わかりませんが。
平成11年のときも献金のときも,まず原則は,じゃ総務部長が出るという
ことで理解しておいていいですか。
そうです。
役員の人は出ないんですか。
出ていないと思います。
それで,あなたの方の稟議書が上がってきたときには,じゃ日建連全体でど
れだけの総額を自民党にするからという数字は,一切あなたはわからないわ
けですね。
わかりません。
副社長も,じゃわからないわけですね,その稟議書を見るだけだから。
それはわかりません。総務部担当の副社長もこの決裁に加わっており
ます。そういうことで,総務部がどのような話を副社長の方へ報告し
ているかはわかりません。
少なくてもこの平成10年3月30日の1867万2000円の2000円
なんていう端数が出てくるということを見ると,十日会の中で総額を決め
て,そしてあなたがおっしゃったような何グループかに分けて分担をしてい
るということになるんでしょう。
そこらは,私詳細はわかりませんけれど,グループ別に目安を決めて
いると聞いております。
後出の甲第57号証の1~4を示す
甲第57号証の1から4というので,エクセルで金額別に分けてみたんです
よ。甲第57号証の1,このときは平成8年の段階の献金ですから,先ほど
甲第40号証の1で示したように,2回に分けて献金しているんですよ。わ
かりますか。
はい。
書いてある書証だけを示しているだけなんですけど。
はい。
ちょっと話戻りますけど,何で2回にこの日に分けたというのはあなたは聞
いていないんですか。
森脇代理人
異議あります。今本人が経験していない時期のことを聞いています。
阪口代理人
ちょっと待って。だから,聞いていないかと聞いているんです。
平成8年は,私全く聞いておりません。
この数字は,5月29日にあなたの会社が1176万円して,翌日に705
万6000円分けて献金しているんです,同じ国民政治協会へ。なぜこのよ
うに2回に分けたということは,あなたは聞かなかったですか。
はい,全く。
いや,法廷に出るに当たってですよ。
全く聞いておりません。
尋間事項に書いてあるんですよ。1996年の献金は一体どういうふうに
したんだと。
全く聞いておりません。
後出の甲第49号証の1を示す
同じように平成9年度も2回に分けているんですが,2月13日と2月14
日に分けて献金しているんですけれども,これは平成10年4月7日の受け
付けですから,平成9年度の国民政治協会の。ページ数は,これはページで
言えないので,4枚目,熊谷組って書いてあるでしょう。
はい。
まず,2月10日に300万円,これはちょっと後で聞きます。2月13日
に1167万円と。
はい。
2月14日に702万円と。
はい。
これも連続して送金しているんですけれども,何かこの理由については,あ
なたは今回の法廷尋問に出るに当たって聞かなかったんですか。
全く聞いておりません。
そうすると,知っている人は熊谷太一郎さんになるわけですね。
熊谷太一郎が昔のことを覚えているかどうかはわかりませんが,熊谷
太一郎が社長時代のことであります。
先ほどあなたがおっしゃった三井さんなど,副社長はこのときのことを決裁
されていますね。
と思います。
もし2回に分けて献金しているとした場合のあなたの意見を聞きたいんです
けれども,不思議だと思いませんか。
わかりません。
何か特別な意味があると考えるんじゃないですか,これは。
森脇代理人
本人が経験していないときのことに基づく意見を求めているもんですから。
阪口代理人
いいですけど,わからないですか。
わかりません。
甲第40号証の2を示す
あなたがわからなければ,副社長なり熊谷太一郎さんに聞くしかないんです
けど。そうすると,じゃ今度あなたが知っているときの,また平成10年3
月の話に戻りますけれども,この甲第40号証の2,1867万2000円。
2000円という端数があるから,総額は幾らだということを決めて,割り
振ったんじゃないですか。それもわかりませんか。
そうかもしれませんが,私は詳しくはわかりません。
熊谷組がどうこうというんじゃなしに,まず十日会で決めているわけでしょ
う,先ほどあなたの証言だと。
そうです。十日会でガイドラインとして目安を決めております。
ガイドラインはいいんですけど,ガイドラインで決めてきて,そして総務部
から秘書部を通してあなたの方に決裁が上がってくる。あなたの方は,それ
を是として献金したことは,これは間違いないですね。
はい。
じゃ,十日会に要請があったというのはいつごろの話なんですか。国民政治
協会か自民党というのがこのときあったというのは。
わかりません。
それも聞いていないんですか。
はい,記憶にありません。
じゃ,平成11年もあなたの方の会社が献金していますけれども,十日会に
国民政治協会か,または自民党から要請があったのはいつかと,こういうこ
とも御存じないですか。
はい。
平成12年,あなたが決裁されたものも同じですか。
はい。
一般的な話,あなたが知っている範囲で結構ですけども,十日会に要請があ
るのは国民政治協会ですか,それとも自民党ですか。
国民政治協会です。
国民政治協会,どなたさんから要請があると聞いていますか。
人の名前は聞いておりません。
いや,役職でいいです。
役職も聞いておりません。国民政治協会から十日会の方にあったとい
うことで。
具体的にどんな要請があるんですか。
具体的には,正確な内容は全く知りません。
正確な内容なくして,あなたの方は,じゃ十日会で決まったんだから,これ
はよしとして献金したと,こういうことなんですね。
はい。
本来要請があるのは自民党でしょう。自民党から十日会の方に要請があるん
じゃないですか。
国民政治協会からです。それは確認しております。
要請があってからどれくらいして十日会では議論するんですか。
現在の私には,記憶そこらは定かではありません。いつあったかとい
うことは,秘書部,総務部で口頭であったのかもしれませんが,私の
記憶にはありません。
平成10年の,じゃ3月30日の話を聞きます。1867万2000円して
いるもんですけど,これ3月30日に献金しているとすれば,実際は要請が
あるのは,じゃその1か月ぐらい前ですか,それとも寸前ですか。
わかりません。ただし,前であったことは事実だと思います。
それはそうですよね。
はい。
熊谷組の献金を見ていると,十日会の決定を見ていると,3月30日であっ
たり,9月13日であったり,翌年の平成11年の分は。
・・・・・。
甲第40号証の3を示す
甲第40号証の3,熊谷組の9月13日,1627万7000円。
はい。
何で,じゃこの時期に献金要請があったんですか。まず前に。
それはわかりません。
じゃ,わからないというのは,その稟議書が上がってくる中にそんなことは
書いていないと,こういうことですな。
はい。
なぜ9月なのかと。
はい。
その前の年は3月30日だったですが,なぜ3月30日に一斉に十日会が献
金すると。なぜこのときにしてくださいという要請が国民政治協会からあっ
たというのは,あなたは知らないわけね。
はい。
日時の指定はあるんですか,十日会の要請の場合。
ないんではないでしょうか。私が聞いたところ,別にそれは個々の企
業がやっていると聞いております。
一斉に9割以上の企業が同じ日に,今のあなたが見ているんだったら,平成
11年9月13日に献金しているんですよ。何かやっぱり示し合わせはする
んですか,十日会で。
いや,私は聞いておりません。
9月に献金するというのは,何かやっぱり時期を選択している意味があるん
じゃないんですか。
よくわかりませんが,きょうこれを見ながらの推察ですが,国民政治
協会の方の予算の関係ではないでしょうか。
もともと十日会というのは,一見国民政治協会にずっと継続的に献金してい
ますね。
はい。
継続的に献金しているんだったら,3月なら3月,5月なら5月,普通決め
ていいんじゃないんですか。
それは,国民政治協会の方の計画ですので,私は何とも言えません。
あなた方が平成10年3月30日に献金したときというのは,ちょうど衆議
院が予算が通過した時期ではなかったですか。
全く私はその関連性はわかりません。
平成10年7月に参議院選挙があったと。これは,もう参議院の選挙ですか
ら決まっていますけれども,そういうことはあなたは記憶はございません
か,当時決裁したときには。
私は,選挙とは全く関係ないという秘書部の話を聞いております。ま
た,この3月30日,これきょう今見て考えるのには,これは年度末
で,たまたまこうなっているんじゃないでしょうか。
それなら,先ほどの甲第40号証の3だと,これ9月13日。これ年度末の
中間,いわゆる五、十日でもないですね。
うん。
これも一斉に献金しているんですよ,あなたが決裁したときは。ちょっと違
っている会社もありますよ。
違っている会社もかなりあるように見受けられます。
四,五社ありますね。
はい。
甲第40号証の4を示す
その次,甲第40号証の4,熊谷組が献金したのは4月20日なんです,1200万
9000円。
これは,ばらばらになっています。
これは,かなりばらばらになっていますね。何か十日会の縛りがなくなって
きたのかな,このころは。十日会の要請がこの日に献金しろと。以前はもう
ぴったり合わせているんですけども,平成12年のときになってきたら全部
ばらけてきているんですよ。
私が社長で聞いている範囲には,各社の自由意思ということを聞いて
おります。
じゃ,先ほどの平成10年3月30日したときは,7月に参議院選挙があっ
たということについては,一切考慮しなかったですか。
私は,その具体的なことはちょっと記憶にありませんが.秘書部の方
からは選挙とは関係ないという話を聞いております。
ただ,国民政治協会を通して自民党に行くわけですから,7月の参議院の選挙
って,これはもうはっきり決まっているわけですから,選挙資金に使われ
るかもしれないと,そういう疑いは持たなかったですか。
ええ。私どもは,自由民主党に政治献金しているのは,あくまで政策
立案,またその実行活動に協力してほしいという気持ちでしておりま
して,選挙と具体的な関係とは思っておりません。
あなたは思っていない。
はい。
そうすると,ただ十日会ではやはり献金する時期というのは,選挙期はまず
いでしょうけど・選挙へちょうど向けた時期だとか,いろんな時期を濯んで
献金しているんじゃないですか。
私は類推ではわかりませんが,十日会も十分注意して,選挙には使わ
れないということでやっていると思っております。
選挙に使われないというのは,自民党に行った金は,じゃ十日会の金は別に
置いておいて,参議院選挙の方には使わないと,こういう形で置いてあると,
こういうふうに理解していたんですか,あなたは。
私は,政策活動等に使われるものと信じておりました。
あなたは,じゃ自民党の政策活動にこの金は使われると,こういう理解をし
ていたんですか。
はい。
それ以外の目的に使われるかどうかとかいうのは,あなたは一たん寄附をし
た以上は何に使うかということについては自民党に任せているんじゃない
んですか。
はい。
任せていますね。
ちょっとお待ちください。私は,あくまで政策活動に使われるものと
信じておりますので。
あなたとしては,じゃ政策活動に使っていただけると,こういう理解で,だか
ら選挙活動に使わないと,こういう意味で献金したと,こういうことですね。
はい,直接選挙活動には使われないと,こういうように考えておりま
した。
自民党に行った金が各国会議員に,一人一人に政策活動費として配られてい
るということは御存じではなかったですか。知らなかったですか。
そういう考えは持っておりませんでした。
だけど,あなたが社長になったときからあなたも3回決裁をしているんです
けれども,これは国会議員一人一人に配られているんじゃないかと,そうい
うことについての疑問なり疑いというものは抱かなかったんですか。
抱かなかったです。
あなたは,政策活動に使っていただける金だと,こういうふうに思って,3
回とも決裁したと,こういうふうに聞いてよろしいですか。
はい。
後出の甲第46号証の28を示す
ところで,また平成10年3月30日の献金の話ですけれども,これは建設
通信新聞のインターネットから検索したんですけれど,3月24日,1998年
ですから,平成10年ですね。
平成10年です。
このとき日建連が政府自民党に予算の要求をしているということは,あなた
は御存じでしたですか。
具体的には覚えておりません。
ただ,日建連は必ず毎年毎年予算の中で公共工事量をふやしていただきたい,
または補正予算についてもぜひ組んでいただきたい。要望はしていますね。
はい。
それは御存じですね。
要望していることは知っております。
ちょうど1998年やから平成10年3月24日,日建連では予算が通った
ので,この際公共工事についてはもう一つ予算が必要だと,減税措置ではい
けないんだというようなことを書いて要望書を出そうということを議論し
ているんですよ。それは,あなたはそのことは覚えていらっしゃいませんか。
具体的に一つ一つのことは覚えておりませんが,日建連が自民党,立
法,また行政の方にいろいろな要望をしておることは知っております。
後出の甲第46号証の29を示す
これは,4月21日に10兆円以上の真水をと日建連が自民党などに要請し
ているんですけれども,3月23日の日に要するに真水の補正予算を要求し
ようと,こういうことを決めて,やはり真水を10兆円という大きな要請す
る以上は,自民党に対しても献金一斉にしておこうと,そういうようなこと
が十日会で議論されたんじゃないんですか。
先ほども申し上げましたけど,十日会でどのような議論して決めてい
るかということは,私は存じておりません。
あなたは知らないから,あなたが献金するに当たって,そのことは考慮はし
なかったということですね。.’…
はい。
じゃ,十日会でなぜこの時期に全体として約3億円とか5億円を献金すると
いうことを相談した内容というのは,少なくとも決裁段階ではあなたのとこ
ろには報告が上がっていないんですね。
はい。
あなたは,じゃそのことを考慮しないで献金しているわけですね。
はい。
甲第40号証の2を示す
甲第40号証の2の3月20日のときに日建連加盟企業は一斉に献金してい
るんですけれども,その前に,なぜじゃ日建連全体としては合計見ますと3
億8000万円だけ。この日に献金したのは3億8800万円になっていま
すけども,恐らく若干日にちのずれもありますから,4億円から5億円の金
を献金しようとして十日会で議論したということに思われるんですけども,
そんなことは一切上がってこないわけですね,あなたには。
はい。
十日会の窓口というのはどこがやっているんですか。日建連全体。
十日会の事務局があると思います。
社会活動貢献委員会ですか,日建連のホームページに一切載っていないです
ね。
私は知りません。
ほかの委員会は,こんな活動したとかっていろいろ載せているんですけど,
社会貢献活動,いわゆる十日会については一切ホームページを見てもないん
ですよ。何でこれはホームページに載せないんだというようなことをあなた
は疑問には思わなかったですか,そうすると知らないというんだったら。
全く思いませんでした。
十日会というのは,寄附一般というのもまさに自民党に対してどれだけの政
治献金をするかというのが基本的な役割の協議会じゃないんですか。
私は,そう思っておりません。先ほども申し上げましたように,社会
貢献活動協議会ということで,いろんな寄附金要請についてしている
と考えております。
日建連がいろいろ政府なり要望するのは一つの表現の自由でしょうけど,な
ぜ自民党に具体的な補正予算だとか,要望案を持っていくんですか,じゃそ
うすると。
やはり一つは政権党であり,政策立案能力,またその実行力があるか
ら,政策提案,また要望というよりも問題点等について提案をしてい
るのではないでしょうか。
じゃ,そうすると野党には持っていかないんですね。
それは,野党というよりも別の党から依頼があったら考えることで・・
いや,献金ではないです。私の聞いているのは,要望書を野党には持ってい
かないんですね。
私の範囲では,記憶になかったと思います。
していないですね。
はい。
やはり政権党に対して要望書を持っていく。そして,政権党に対して金も配
っていると,こういうことですね。金の意味は,あなたは違うとおっしゃっ
ているけどね。
はい。金を配るという意味は,何か汚く聞こえますけれど。
献金をしていると。
ええ,そうです。政策立案に対して協力の資金として。
自由党にもあなたの熊谷組は献金していましたですね。
はい,したことがあったと聞いております。
ちょうど政権に入ったときですね。
ちょっとそこらの日時等はわかりません。
政権から外れると,金額ががたっと減っていますね。
そこらの趣旨はどういうことかわかりませんけれど,依頼がなかった
ものと…。
いやいや・50万円ぐらいしているんですよ,調べたら。以前政権党のとき
は500万円余りをしているんです。政権党だから,やはりあなた方の日建
連の要望を聞いてくれると,こういうことだからじゃないんですか。
いろいろな提案の内容を見ていただけるとわかると思いますが,政権
党の出している一つの政策に対しての考え方を言っておると思いま
す。
あなた方は政治献金は,じゃ一切見返りを求めていないわけですね。
直接的,具体的なものは一切求めておりません。
だけれども,自民党に対してはもう何回となく予算の問題だとか,いろいろ
法案をつくってくれとか,これはもう要望されているでしょう。
はい。
だけれども,献金はそんな要望を実現するためではないんだと,こういうこ
とですか。やっぱりそれもあるんでしょう。
私どもの献金の一番の趣旨は,あくまでこの日本の経済政策,特に私
の時代ですが,この長い不況をともかく脱するよい政策を出して実行
してほしいと,これが国民全般の願いでもあったし,企業全体の願い
でもあったと思っております。
甲第40号証の2を示す
3月19日に200万円献金をしているんですけれども,これは日建連とは
別なんですね。
はい。
それは,どういう要請があったんですか。
これは,国民政治協会から直接秘書部にあったと聞いております。
何と言って。
寄附の要請としてです。
寄附の要請としてって,寄附をしてくださいと,こういうことなんですか。
はい,そのとおりです。
金額は。
これは200万円だと思います。
200万円してくださいと。
はい。
これは,このときに献金しているのは熊谷組が200万円,あと200万円
という数字を拾うと,若干ほかにもあるんですけれども,これは何か意味が
あったんですか。一斉に献金していないから。日建連加盟の企業がこの前後
に200万円をしていないんですよ。何かこれは国民政治協会が特別熊谷組
に対して要望があったんですか。
私は,十日会を通して以外,国民政治協会から個々に政治献金も要請
されるものと聞いておりました。
あなた,じゃその認識で決裁したんでしょうけど,これは何でうちだけに来
るんだと。
いや,これ見ますと,いろんな会社に個々に行っているようですが,
いっぱいありますね。
そうすると,熊谷組以外に数社,ここで200万円した企業とか若干ありま
すから,この前後のところに。A社,B社,C社及び熊谷組に対しての献金
を今国民政治協会は要請していますと,ぜひ御協力をお願いしますと,こう
いう要請があったんですかと聞いている。
今のおっしゃった意味は,他の会社の名前もあったかということです
か。
そう。
それはなかったと思います。
そうすると,あなたの会社自体の判断では,国民政治協会が直接あなたの会
社に要請に来たら,何でうちだけだということになるんじゃないんですか。
私は,特別にそこに疑間を感じませんでした。
感じなかったので,国民政治協会から言われるままに,まあいいだろうとい
うことで決裁をしたと,こういうことですか。
はい。
それ以外の理由はないんですか。
はい。
甲第40号証の4を示す
4月27日に20万円をしていますね。
はい。
これは,だれから要請があったんですか。
これも国民政治協会と聞いております。
どういう要請があったんですか。
一般的に寄附の要請があったと。
あなたの会社は,じゃ国民政治協会からあれば,みんな言われたままに寄附
しているんですか。
国民政治協会につきましては,先ほど言ったように趣旨に協賛してお
りますので,特に金額的にも大きくなかったんで,していると思いま
す。
20万円ですからね。
はい。
ただ,4月20日にあなたの方が1209万円しているんですよ。ぞの後何
でまた追加来るねんと,普通やったらだれでも疑問に思いますけどね。4月
20日の1週間後ですよ,これ。あなたは疑問に思わなかったの,それは。
疑問に思いませんでした。
決裁したときのあなたの判断事項をお伺いしますけれども,じゃ十日会で総
額幾らの金をいつ寄附するから,こうこうこういう理由で積極的に献金した
んだということはないわけですね,あなたの今の話聞いていると。
はい。十日会からの依頼があったものについて,先ほど述べましたよ
うに,秘書部の審査等が通ったものについては,既に私どもは…。
十日会で議論したことをあなたは聞いてないんでしょう。
はい。
総額幾らをするということもあなたは聞いていないんですね。
はい。
いつ献金するかということについてもあなたは聞いていないんですね。
あったかもしれませんけど,今は覚えておりません。
それは日にちだけですね。
はい。
そうすると,もう一つの考え方は,こういうゼネコン業界が日建連が4億円
とか5億円を自民党に金を一斉に献金すると,金で政策を買収する危険性が
あるから,やめろという意見があるのは御存じですね。知りませんか。
意見として一部に新聞紙上等であるのは知っております。
新聞の社説なんかにもいろいろ書かれていますね。
はい。
あなたは,新聞の社説読んだときに,そういう批判の意見はどう思いました
か。
これは,私の個人的考えですが,私たちはあくまで自民党に献金しま
して,結局その政策実行力,それを国民が判断するものと考えており
ました。
それも何回も聞いていますから,いいです。もう一つ,献金したことによっ
て,恐らく自民党に対立する保守党であったり,民主党であったり,社会党
とか公明党とかいろいろ政党があるのは,これは御存じですね。
はい。
自民党に献金することによって,反対党はマイナスというんか、財政的には
やっぱり自民党よりも劣位に置かれることは,これはわかるでしょう,常識
で。
はい。
劣位というのは,マイナスを各民主党などが帯びるというのは,これはわか
るでしょう。
たしか政策活動は,必ずしもお金の多寡によって評価されるものでは
ないと思いますが,政策活動に予算があれば,より勉強,調査ができ
ると思います。
献金を受けた側の政党が有利に立つということは,これはわかりますわね。
はい。
政党というのは,必ず反対党があるのをあなたは知っていますね。
はい。
一方に献金すると,財政的に一方が有利になるから,一方は相対的に不利に
なると。そういう政治献金の持つ特性というんですか,マイナス性というと
いうのはあなたは考慮しなかったですか。
ともかく日本の経済が早く不況から脱出して…。
わかりました。それで,献金したんやね。
いい経済基盤ができれば,これは国民全部,また企業にとってもプラ
スだと。ただし,その政策がもしよくないものならば,それは国民が
判断するものと私は思っておりました。
あなたは,今私の質問に対する答えはしていない。先ほどから同じことを繰
り返している。もうそれはいいです。もう一つ,政党助成金が政党に対して
配られているということは,これは御存じですね。
はい。
企業献金もすると,二重取りになるじゃないかという批判がマスコミの社説
などに出ているのは御存じですか。
はい。
その点はどう考慮されますか。
現在政治献金が法律上認められている以上,また先ほどから申し上げ
ています政策活動,よりよいものをつくっていくのに経費がかかれば,
それは必要であるということで,私は政治献金は必要と認めてまいり
ました。
河野代理人
献金を断った場合の話についてなんですけれども,要するに献金断ったら,
建設業界内外における会社の信用や評判が損なわれて受注機会を失うと,そ
ういうふうに陳述書に書いてあるんですけれど,これは結局のところ建設業
界という業界では,自民党からの献金要請を断ると,受注機会が減少すると
いう,そう考えたわけですか。
受注とは,直接結びついておりません。
いや,ただこれ「評判が損なわれて,受注機会を失うことが懸念されました。」
とはっきり書いているし,先ほどもそうおっしゃったでしょう。
はい,業界団体でたくさんの恩恵を企業として受けております。その
かわり業界団体としてのやはり役割分担があります。その役割分担を,
先ほども申し上げましたように,売り上げ受注等全く問題ない会社が
それを断ることは,建設会社としての地位,信用に大きな傷がつきま
す。そういうことで言っております。
何回も聞いたからいいんですけれども,要するに献金要請断ったら受注機会
が減ると,そう考えたんでしょう。その間何かいろんな理屈あるんだけれど
も。
受注機会が減るという直接的な結びつきはありません。
じゃ,建設業界の中で収益を上げようと思ったら,自民党に献金しないとい
けないんですか。
そんなことはありません。
信用云々という話をされていましたけれども,建設業界の中での信用が決ま
る要素というのはどういうふうに考えていますか。何で信用が決まるんです
か。
やっぱり技術,経営.,またいろいろな共同作業があります。共同作業
できっちり役割分担をすることが重要であります。
一般的に公共工事を受注するためには,受注資格というものの審査を受けな
いといけないですね。
はい。
その審査対象の中身は,経営規模や経営状況という客観的事項と,あと工事
成績,安全成績という主観的事項によって今の資格は決められるんですよね。
はい。
それらの事項が点数化されて,建設業者のランクづけがなされているという
のが実態ですね。
はい。
要するに今の受注資格審査で何でそんなことするのかというと,またそれで
ランクづけがなぜなされているのかというと,要するに建設業者の施工能力
に応じた発注,それとあと良質の工事の施工,それと工事の適正な配分とい
う,そういう目的のためにランクづけされているんでしたね。
はい。
先ほど日建連の中でのグループ分けという話をされていましたけれども,そ
のグループ分けの基準も今の話で,結局施工能力云々,その辺で決まるんじ
ゃないですか。
必ずしもそれはリンクしておりません。結果的にはそういうようにな
っておりますけれど,経審の点でランクづけが決まるということでは
全くありません。
業界内での信用が決まる基準として,一番大きいのは何だとお考えなんです
か。
日建連の場合は詳細はわかりませんが,やはり売上高,それ以外の資
本金とか,またその他のいろいろな条件を加味して決めておるんじゃ
ないかと思います。
だから,自民党に対する献金の金額の多寡でグループ分けが決まったりする
んですか。
しません。
ところで,今までに自民党や国民政治協会から献金要請があったときに,熊
谷組が断ったことはあるんですか。
ありません。
今までに献金を断ったという理由で,日建連の中での主要ポストから外され
たということがあるんですか。
献金を断った会社は,債務免除を受けていない限り,また会社更生法
等,法的清算された会社以外,そういう断ったことはありませんので,
仮定の話は答えれません。
だから,外された企業はないんでしょう,要するに。
はい。
献金を断ったという理由で,業界団体の主要ポストから外された企業がある
のかないのか。
献金を断った企業はありませんから,その前提条件でどうだこうだと
いうことは答えれません。
じゃ,献金額が多いからといって主要ポストについた企業はあるんですか。
献金額とは結びついておりません。
ちなみに,献金要請断ったら,日建連の中で何らかの制裁を受けるというの
はあるんですか。
そういうことをした会社はありませんので,わかりませんが,直接は
結びついておりませんが,献金を払える力を持っているのに,払わな
いということは,業界内では大変信用失墜…。
わかりました。それも先ほど同じ話聞いていますので。
そのとおりです。
ただ,間題はそういう実際献金断った企業もないのに,なぜ断ったら信用が
低下するなんて,そういう判断ができるんですか。
やはりその2000万円,例えば1200万円も払えない会社という
ことで,これは大変ネガティブ情報になります。例えばその話が発注
者に伝われば,1200万円が払えない会社に仕事を継続させれるか。
また,納入業者からいえば…。
それは,あなたのお考えなわけですね。
はい。
なぜそういう考えになったかということについての客観的な事実というのは
ないんですな。
ええ,ありません。ありませんけれど,私が社長時代,非常に厳しい
受注競争の中で,それは強く感じました。
それを強く感じたというのがよくわからないんですけど,要するに客観的に
献金断ったからこういう目に遭ったというような,そういう歴史的事実はな
いと,そういうことでよろしいですな。
はい。
それで,陳述書によると,結局のところ献金する目的というのは,不況から
の脱出のために自民党に献金するということと,あと献金断ったら信用がな
くなるんじゃないかという,そういう二つのことなわけですね。
もう一度その二つちょっと言っていただけますか。
一つが自由主義経済体制云々と言っていたんですけれども,それを具体的に
言うと,不況から脱出するためには自民党の政策が必要なんだという話でし
ょう,一つは。
はい。
献金断ったら,業界内での信用が低下するということがもう一つですね。
はい。
そういう二つが献金目的ということですか。
強いて言えば,その不況から脱出だけじゃなしに,もっと安定した長
期にわたる経済体制をつくってほしいという気持ちがありました。
そういう位置づけというのは,熊谷組の中ではいつからされているんですか。
私が社長になる前は,社長はどのようにそのときの経済状況を考えな
がらしていたかわかりませんが,ともかく私のときの経済環境は,そ
ういう状況で,その点を強く感じました。
献金目的については,熊谷組の中ではどこのレベルでだれがその協議に参加
するんですか。
私,そして副社長であります。
先ほど副社長さんは2人とおっしゃいましたかね。
はい。
そうしたら,その3人で献金目的についての議論をしたという,そういうこ
とですか。
はい。
第1審のときには,秘書部長さんが裁判所に出られて,私は実務責任者です
というふうな証言したんですけれども,その実務責任者には献金目的につい
ての話は一切しなかったということですか。
秘書部長は,あくまで一次審査ということで,先ほど申し上げました
ように,適正であるか,法律的に問題ないかと,そういうことを審査
しております。
第1審のところでは,献金目的について裁判になっているときに実務責任者
として一番事情がわかるということで秘書部長さんが出てこられましたよ
ね。それは御存じですか。
・・・・。
今の話だと,秘書部長はそういう献金目的のことをよく知らないという話で
すな。
秘書部長は,国民政治協会への寄附は会社が必要であるから,やって
いるということは理解しております。
今先ほど言いました,もし献金断った場合にどうなるかということについて,
秘書部長さんは第1審段階で何も考えていなかったと言っていたんですよ。
それは御存じですか。
秘書部長は,献金を断ったらどうなるかということは,それほど考え
ていなかったと思います。
あなたは,考えていたわけなんですね。
はい。
第1審であなたは被告だったんですけれども,そういう主張を第1審でされ
ていなかったですよね。していないでしょう。今の献金断ったら業界内での
信用云々なんていう主張は第1審では一切しなかったんですけれども,それ
はなぜなんですか。
私どもは,第1審に関しては第1審での説明で十分御理解いただける
ものと思いました。
何のために献金なのかということが第1審裁判では争点の大きな一つとして
なっていたのに,先ほどの献金目的のことをよく知らない薩岳秘書部長を証
言に出させたということですな。
・・・・・。
第1審判決では,自由主義経済体制の維持発展ということだけでは,献金の
合理的理由にはならないと判断しましたね。それは御存じですね。
はい。
それについては,あなたが先ほどちょっとおっしゃったように,よくわから
なかったんですけれども,それは第1審判決のそういう判断は間違いだとい
う,そういう趣旨ですか。
1審でも同じような意味で言ったつもりですが,そこまで私の真意が
伝わらなかったので,再度細かく話しております。
じゃ,第1審段階では,あなたの真意は裁判所にあなたの方から積極的に伝
えようと,そういうことはしなかったですね。
自由主義経済の維持発展ということで御理解いただけると思いまし
た。
今もそうですか。自由主義経済の維持発展で,それでいいんですか。
自由主義経済の維持発展ということを先ほど私が言ったように解釈
していただければ,それで結構でございます。
それで,献金額の話なんですけれども,熊谷組ではあなたが社長をされてい
たときに,自民党に関する献金なんですけれども,国民政治協会を通じるも
のもあれば,通じないものもあるとおっしゃいましたね,先ほど。それで,
それ以外にも支部…。
先程言ったのは、十日会を通すものと直接のものとが国民政治協会の
方であると言ったつもりですが。
自民党の各支部に対する献金というのもされていますよね。
そういうものもあったかと思います。
自民党の議員のパーティー券なんかは出しているんですか。
パーティー券を購入したこともあります。
そしたら,熊谷組としては国民政治協会の献金と支部への献金と,あとパー
ティー券と,すべてひっくるめて年間幾らのお金を自民党に渡しているんで
すか。
自民党に渡した覚えはありません。
今支部に渡したっておっしゃいました。
裁判長
いやいや,全部ひっくるめるから。自民党というふうにひっくるめちゃうわ
けにはいかないという返事でしょう。
はい。
河野代理人
そしたら,先ほど年間2000万円から3000万円政治献金をするという
ことを協議したわけなんですね。
はい,予算としてそのぐらいを考えました。
そこの中には,パーティー券も入っているんですか。
ちょっと記憶にありません。
入っているか,入っていないかわからないということですね。
はい。
それで,何か先ほど2000万円程度のお金であれば,どうせあっても配当
を回せないんだからというような,そういう趣旨で答えられたんですか。
はい。
要するに配当の有無との関連では,2000万円程度のお金はあってもなく
てもどっちでもいいという,そういう話ですかな。
いや,決してそうではありません。やっぱり一つの企業活動として,
社会的責任を果たすために2000万円払うことによって,企業が長
期にわたって,また間接的に利益が出れば,またそれがネガティブ情
報にもならなければ,受注にも大きな効果を上げまして,2000万
円以上の効果がはるかにあると考えました。
2000万円献金したからといって,経済がよくなるんですか。
その2000万円が直接的に,具体的にということは私はわかりませ
ん。政治献金である以上,具体的なつながりはないと思います。
いや,先ほど2000万円程度は配当と何か関係ないかのようなことを言う
んで,それでしたら2000万円程度は経済がよくなる,悪くなるって関係
ないんじゃないんですか。
はい。
松丸代理人
もちろん熊谷組では,毎年度会社の資産について,時価であったらどの程度
かということの評価はされていますね。.
毎年度といいましても,それぞれ決算時期が違いますし,時価の査定
等にいろいろな基準があったりして,必ずしも毎年度と…。
何年に1回やっているんですか。
それぞれの考え方があって,それぞれの会計基準において決算として
時価等を決めております。
ですから,時価は毎年度評価しているということで考えていいですね。
はい。
時価と簿価がどの程度乖離しているか,それはもう毎年度ちゃんと評価して,
それは判断しているということになりますね。一
はい,それぞれの会計基準にのっとってです。
いやいや,だから時価は会計基準とは関係ないでしょう。時価は,あくまで
も時価ですから。
はい。ただ,時価の定義がいろいろありまして,どの定義かというこ
とがやっぱりあるんで,はっきりしておいた方がいいかと思って。
いずれにせよ,時価と簿価の乖離があったとしても,どの程度乖離している
かどうか,そこの判断はちゃんと会社の方でやっている。そういう表はつく
っていますね。簿価と時価がどの程度乖離しているかについての一覧表みた
いなものは。
はい。時価を,たびたび言いますけれど,その時々の会計基準にのっ
とった形で評価をしております。
いやいや,時価はあくまでも時価でしょう。会計基準は,簿価を決めるとき
の会計基準でしょう。
時価といいましても,私たちの開発事業に時価という言葉を当てはめ
ると,それぞれの会計基準によって違ってきます。
だけども,開発事業でもそれぞれの開発事業が抱えている不動産,土地や何
かの評価はちゃんとやっているわけでしょう,時価に基づいて。
開発事業につきましては,私たちは素地,例えば土地,建物,またあ
るいは開発権というものを取得して,その上にかなり大きな額で事業
を構成しております。そういうことで,我々は評価としてはその事業
全体の価値ということで,ゴーイング・コンサーン・バリューという
ものをしておりまして,必ずしも土地代そのものの評価はしておりま
せん。
どの部署でそういう評価はやっていますか。
財務本部が主だったと思います。
財務管理部というのは平成5年に設置していますね。
はい。
そちらの方で主にやっていたわけですか。
財務本部全体がいろいろ考えたと思います。
そこの財務管理部というか,財務部というのか,そこで評価された簿価と時
価についての評価,それは取締役会でも上程されて,取締役もみんな認識し
ていると考えてよろしいですね。
必ずしも全部が全部取締役会かけて,それを認定しているということ
はないと思います。
だけど,主なものは上程されていますね。
はい。例えば平成10年度とか平成12年度とか,そういうときのも
のについてはかかっていると思います。
だけども,先ほどのあなたの証言ですと,毎年度そういう評価はやられてい
るわけでしょう,それ以前においても。
はい。
バブルの当時も当然やられているわけでしょう。
はい。
それ以後もずっとされているわけですね6
はい。
あなたの会社の特別損害の計上額は,平成10年3月に2426億円,平成
13年3月に5771億円,平成15年3月には3000億円,合計1兆2
000億円ですかね。そうですね。
はい。
あなたの会社の売り上げ,いい方で見ますと,有価証券報告書を見ますと,
平成10年3月は約1兆円ですね,売り上げが。
はい。
最近の平成15年3月ですと,4400億円ですね。
はい。
そうすると,結果的に1兆2000億円という売り上げを大幅に上回る特別
損害は,平成10年から平成15年に計上された。それは,もちろん御存じ
ですね。
はい。
乙第16号証の2ページ目を示す
第64期資産の再評価についてですけども,これの2ページ目,5の欄に試
査範囲総括とありますね。
はい。
試査範囲の欄を示しますけれども,海外事業の場合ですと,平成12年3月
簿価4479億円ですね。
はい。
それに対して,評価損が2815億円ということになれば,この時点の時価
としては1664億円ということになりますね。
はい。
約3分の1ぐらいですね。
はい。
簿価と時価との乖離がこの調査ではそれだけあったわけですね。
はい。
それから,販売用不動産見ますと,簿価が376億円,評価損が244億円
ですから,時価で132億円ですね,引き算ですけど。これも同じく3分の
1ですね。あるいは国内問題債権について言えば,3772億円が簿価です
けれども,評価損が1954億円ですから,時価が1818億円で,これも
2分の1くらいになっちゃっていますね。平成12年度ごろに,突如として
こういう評価損は生じたんですか。
これにつきましては,これまで平成12年度までは,先ほどもちょっ
と言いましたように,我々はほとんどの事業が海外におきましては開
発事業という格好でやっておりました。これは国内と違いまして,素
地に付加価値をつけて販売物件とする,また事業をするということで,
その中にテナントさんを入れて,そしてテナントさんの収入を収益還
元法で割って,売却価格を出すのが海外の事業でありました。そうい
う意味で,我々とすると平成12年度までそこで損失処理する必要は
ない,事業としては継続事業としてやっておりました。
ですから,私が言っているのは簿価に評価損を反映するかどうかは別にして,
こういう時価が2分の1なり3分の1に下がっている,そういう認識はそれ
以前からあったわけでしょう,会社として。
私たちは,特にこの事業に関してはほとんどがですが,保有コストが
均衡していました。ですから,事業を持っていても,会社に大きな障
害は与えない。ですから,特に海外の場合は,好況,不況が周期的に
参ります。そういうことで,必ず資産価値が回復するというように考
えておりましたので,その間は事業期間でありまして,企業努力をし
ておりました。
海外開発事業,その当時均衡していたんですか。
保有コストは均衡しておりました。
コストがどんどん,どんどんかかって,利益が出ていなかったんじゃないで
すか。
その部分は,平成9年計画で思い切って処分いたしまして,保有コス
トが均衡するものを継続事業として残したわけであります。
海外事業の保有コスト,収支の均衡していないということは前々からの課題
でしたね。
ええ。課題ですから,保有コストを均衡さす努力をずっとやっており
ました。
平成5年当時の計画でも,それは大きな問題になっていましたね。
はい。
海外事業の保有コストの問題は。
はい。ですから,それを問題提起して,会社としてはその保有コスト
が均衡するように全世界で営業活動,事業の改善活動をやってきまし
た。
今言ったような時価が2分の1になっている,あるいは3分の1になってい
る,簿価と比べて。そういうふうな認識というのは平成12年突如として会
社に生じた認識なんですか。
これは,新会計基準でどちらか…。
いや,簿価のお話しされると思うんですけれども,私聞いているのは時価の
お話です。時価が2分の1,3分の1になっているという認識の問題です。
それを簿価に反映するかの問題じゃありません。
森脇代理人
だから,回答しかかっているんだから,回答させてください。
松丸代理人
だから,それをお答えください。
あくまで我々とすると,事業全体をコストとして考えていたわけです
が,そのとき新しい会計制度では,売却処分価格,事業を途中で処分
するという価格での評価に近いものになりました。そういうことで,
まだ事業,例えばテナントさんが50パーセント,70パーセントし
か入っていないもの,またテナント料が非常に安いもの,これをもそ
のまま認定して売却にしておりますので,収益還元率法でやると非常
に安い価格になってしまいます。
でも,それ以前の年度においても,例えば海外事業だったら関連会社の株式
って形になりますよね。
はい。
会社の帳簿上はね。
はい。
それについての評価をして,全然簿価に比べて低くなっていなかったんです
か,評価は。
ちょっとお答えさせていただきますと,あくまで当社が持っていた株
式は事業会社の株であります。事業会社というのは,先ほどの開発事
業をやっております。そういう意味で,その開発事業を処分しない限
り,投資証券の方に反映されない格好になります。
だから,会社の方で海外事業についても時価評価しても,簿価のまんまで評
価それまではしてきたということですか。
はい,そうです。
平成12年度になって,突如として会社認識として海外事業については,簿
価と比べて3分の1になっていると,初めて認識したということですか。
はい。海外の開発事業の場合は,テナントさんが十分入っていない事
業の途中のものについては,不動産鑑定士といえども売却価格を決め
るのは大変困難があります。理由は,開発事業にはたくさんのパート
ナーが絡んでおります。売却するときは,その個々の契約関係を全部
クリアにしてから売却しなければなりません。そういうことで,不動
産鑑定士で簡単にとれるものではありませんし,費用も非常に多額に
かかります。そういう意味で,我々としては不動産鑑定等をしており
ません。また,事業を継続するつもりでありましたから,その必要も
ありませんでした。
そうすると,それまでは簿価どおりにずっと海外事業も含めて評価してきて,
平成12年度において時価の認識として3分の1まで下がっちゃったんだと
いうことを初めて知って驚いたということですか。
・・・・・。
驚いたでしょうね,3分の1となったら。もっと前から驚いたんじゃないで
すか。
そういう意味より,こういう会計制度になると事業の継続が非常に難
しくなるという印象は持ちました。
だけども、会社の資産の認識としては,その時々の時価をちやんと考えなが
ら,簿価がそうなっているからということじゃなくて,実際の時価がどれだ
けになっているかということを考えながら資産を評価するのが当たり前
じゃないですか,経営判断に当たって。
私のときは,あくまで事業継続価値ということが評価する妥当な線と
認識されておりましたので,そのように進めて…。
事業継続価値といっても,その海外事業がどういう状況に立ち至っているか
どうかは,そういう観点からの評価は全くしなかったということですね。簿
価のままで評価したということですね。
私どもは,あくまで海外事業に関しては,景気さえ回復すればテナン
ト料は大幅にアップできるし,投資者もそのころは投資者が全くいな
い状況でありましたけれど,収益還元率で投資利回りがよければ,た
くさん集まってくるものと思っておりました。
だけども,平成12年厳格に評価してみたら,3分の1に下がっていた,初
めてそのときわかったということですね。
はい。
甲第15号証を示す
株主の皆様へ,あなたが平成12年9月に株主あてに会社の取締役社長とし
て出した文書ですね。
はい。
この中で上から4段落目の2行目の後ろの方ですけども,さらに,昭和50年
代後半から一層の発展を目指して国内外で数多くの大規模開発事業に参画
し,投資やプロジェクトの保証を行うことで飛躍的に受注を拡大しましたが,
その後の経済情勢の激変もあって,この投資や保証が有利子負債に転化し,
今日の苦境を招く結果となったわけでございますということですね。
はい。
そうすると,平成12年当時の会社の方が一番抱えていた間題というのは,
昭和50年代後半からの国内外での数多くの大規模開発事業に参画したとい
う点が問題になるわけですね。
はい。
もうあなた言われているわけやから当たり前のことやね。
はい。
これが言った海外の開発事業とか国内での開発事業ですね。
はい。
今回特別損失が出てきている原因というのは,みんなここにありますね,ほ
とんどは。
はい。
全部とは言いませんけど,そのほとんどは1兆2000億円の。
はい。
その後の経済情勢の激変で有利子負債に転嫁したというんですけども,この
経済情勢の激変というのは具体的には何を指しているんですか。その後の経
済情勢の激変もあってと書いてあるんですけども。
これは,バブル以後の経済変化だと…。
具体的には。土地の価格が下落するとか。
国内外のやはり土地の下落そのものよりも経済情勢の悪化により,テ
ナントさんが入らなくなったり,テナント料が安くなったりと,そう
いうことが地価の下落等よりも逆に我々の事業は先ほども申じ上げ
ましたように,テナントさんが入って,高いテナント料でないとでき
ないもんですから,そういう意味で事業が厳しい闘いをした次第でご
ざいます。
だから,そういう事態というのは,バブル期から徐々に進行していったわけ
ですね。ある日突然生じたわけじゃないですね。バブル期のときはぼんと起
きたかもしれませんけども,バブルの崩壊と同時に急に激変が生じて,その
後もずっとそれが持続したということですね。
違います。国内と海外では,全く不動産というか,開発事業関係は違
っておりまして,白本においてはバブルの破綻が1992年ぐらいか
ら起きて,現在までなかなか回復しておりません。海外においては,
先ほど述べましたように,かなり不動産市況,また経済環境は周期的
であります。過去のバブルにおいても,必ず周期的に回復してきてお
ります。そういう意味で,私はバブルのとき一瞬下がってきましたけ
れど,回復基調になっていると。ですから,そこらに合わせれば,事
業の改善努力を続けていて,保有コストを最小限にしておれば,また
回復するものと…。
回復するかは別にして,不況に陥った過程というのは海外においても同じで
すね。
いや,違います。海外においては,日本のようにずるずるいつになっ
ても回復しないということになっておりません。現在もアメリカ,イ
ギリスでは大きく回復しております。
バブルの当時から平成12年9月,もっと正確に言うならば,ここに書いて
ある昭和50年代後半から平成12年9月の間では,海外においても徐々に
徐々に景気が冷え込んでいったんじゃないですか。例えばオーストラリアの
賃貸事業なんていうのはすごかったでしょう。
はい。オーストラリアは厳しい事情でしたけれど,平成10年ぐらい
に関しては,先ほど主尋問でお話ししましたけれど,我々が思い切っ
て平成9年計画をしましたのは,海外の市況も回復し始めているとい
うことで,平成12年9月までずるずるいったわけではありません。
し始めているけれども,海外事業その時点で評価してみたら,平成12年当
時,3分の1までに下落したわけでしょう。
いや,そうではありません。先ほど言ったように,開発事業を単なる
地価と土地の売買と同じような評価をして,買い手もいないところで
投げ売った場合というような評価になっていると思います。
現に投げ売りをせざるを得ない状況になっていたわけでしょう,平成12年
当時。
平成12年当時は…。
投げ売りましたね。
はい。会社の方の経営方針が変わりまして,選択と集中ということで,
長期にわたる開発事業への参加を絞ったわけでございます。また,地
域での事業も思い切って処理してやったわけであります。
当時の熊谷組が抱えていた問題というのは,ほかのゼネコンもみんな同じよ
うに抱えていましたね。昭和50年代の後半からの国内外での過剰投資で,
非常に経営が苦境に陥っているというのは。
確かに全体的に見るとそうですが,各社それぞれ個性がありまして,
国内事業に集中して,国内の一般不動産を集中した会社もあれば,当
社みたいに海外が相当大きな事業を持っていた会社もあります。
乙第11号証の8を示す
日本経済新聞の記事ですけれども,一番最初の本文のところの「ゼネコンの
多くはバブル期の積極的な不動産投資で膨らんだ過剰債務の圧縮を経営の
最重要課題にしている。」,これはもう各ゼネコンのみんな同じ共通に抱えた
問題ですね。平成12年6月30日の記事ですけども。
はい。
これは,もうゼネコン共通の状況ですね,その当時は。
はい,おっしゃるとおりです。
もう熊谷組が特別に何か別な要因を抱えていたわけじゃないし,ゼネコンは
みんな共通の要因として,バブル期の積極的な不動産投資等で膨らんだ過剰
債務の問題ですね。御社の場合もそうでしょうが。
いや,誤解があってはあれですけれど,バブル期の投資というよりも,
それまでの長期にわたる,ある期間にわたる開発事業の投資です。
昭和50年代後半以降ということですね。
はい。
平成9年7月から8月には,東海興業,多田建設,大都工業,会社更生やっ
ていますよね。
はい。
あなたの陳述書に書かれていることなんですけども,飛島さんも6400億
円の債務免除をそのころ受けていますよね。
はい。
平成10年の末から平成11年の初めごろは,青木建設,日本国土開発,長
谷工,フジタ,佐藤工業,これもみんな経済的に苦況に陥っていますよね。
はい。
ゼネコンが共通に苦況に陥った原因というのは,先ほど言ったような過剰な
投資によって何が生じちゃったんでしょう。
当社の場合ですが,過剰な投資というよりも多くの開発事業をやった
ことによって資金需要が多くなったということは言えると思います。
だから,当時の御社も含めたゼネコンの経営課題としては,たくさん含み損
を抱えていますよね,当時。これの解消というのが一番大きな経営…。
森脇代理人
先ほどから他社のことをいろいろお聞きになっていますけども,証人の認識
していることをちょっとお尋ねしてください。
松丸代理人
あなたの会社の場合だったら,会社にとって平成12年あるいは平成10年
当時からでも結構です。あるいは,それ以前でも,平成5年計画も含めて何
が一番大きな課題でしたか。
当社の場合は,先ほど申し上げましたように,多くの事業を継続事業
としてしておりました。一方,そこに有利子負債の大きさがありま
した。ですから,有利子負債の削減というのが大きな課題でありまし
た。特に売り上げ受注量が減っていく中で,有利子負債をどのように
削減していくかというのが大きな課題でありました。
あなたの会社の平成5年6月に体質改善計画つくりましたね。
はい。
この中で一番大きな課題になっていたのが,もう既に固定化債権,資産の整
理,回収,海外資産の圧縮という問題ですね。
はい。
おわかりになりますね。
そのとおりです。
それから,さらに平成9年では経営革新中期計画,その中でのこれも中心の
課題は不良資産の一括処理による財務体質の抜本的な改革ということです
ね。
はい。
甲第13号証の1ページ目を示す
さらに,平成12年の新経営革新計画,これでも不良債権の一括処理に財務
体質の抜本的改革,これが一番重要な柱でしたね。
はい。
あなたの会社で,要するに不良債権の処理,不良資産の処理,それによる財
務体質の改善,これが平成5年以降ずっと大きな課題になっていましたよね。
はい。
平成5年以降から当然この特損1兆2000億円という,そういうものは抱
え込んでいるという認識はなかったんですか。
ありませんでした。
じゃ,それを認識するようになったのはいつなんですか。
やはり平成13年3月計画,平成12年9月につくった計画の時点か
らであります。
それ以前から御社も含めて各ゼネコンの危機というのは,もう新聞等で報道
されていたのは御存じですよね。
はい。
もうあんなのでたらめの話だというふうにお考えになっていたわけですか。
いや,そうではないんですが,当社の場合で,よその会社の経営方針
はわかりません。
いや,あなたの会社を聞いているんです。
私のところで言わせていただきますと,先ほど申し上げましたように,
当社の開発事業は金融機関等からも海外においても御支援をいただ
いておりまして,継続事業として皆さんから評価をいただいておりま
した。そういう意味で我々とすると,平成12年の新会計制度までは,
金融機関からの御支援をいただきながら開発事業を完成させていく
という気持ちでやっておりました。
平成12年の計画に基づいて,海外事業を一括もう全部やめるということに
なりましたね,海外開発事業については。
はい。
要するにたたき売ったということですね。
はい。
端的に言いまして。
はい。
だから,そういう事態というのは,もう一度聞きますけど,平成12年でな
るまで全然わかんなかったというふうにお聞きしてよろしいんですね。
私たちは,あくまで先ほど申し上げたように保有コストを均衡させ
て,その間経営努力して,さらに保有コストを少なくして…。
乙第13号証を示す
平成12年度で会計基準が変わったというのは,この乙第13号証のことを
言っているわけですね。
はい。
わかりますね。販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の
取扱い,ここを見ますと,一番最初の段落の真ん中あたり,「調査の結果,
総合建設会社,不動産業に属する会社や商社等に共通する問題として,これ
らの会社及びその関係会社が,会社の事業又はその付帯事業に関連して取得
した販売用不動産及び開発事業等支出金については,著しい価格の下落に対
応して評価減を適時に実施する必要があるにもかかわらず,資産の時価の算
定が一般に困難であるとの理由等から,強制評価減が適時に実施されず,資
産の処分時まで損失計上が先送りされる傾向にあることが見受けられた。」。
だから,この基準を,取り扱いという通知を出した。それはわかっています
ね。
はい。
御社の場合もやはり強制評価減するべきにもかかわらず,していないという
ことだったんじゃないんですか。
いや,先ほどからの…。
そうすると,平成13年3月期に出した特損で,もう非常に厳格に新しい基
準に基づいて資産を査定して,もうこれ以上損失は出ないというふうな判断
をされたということですか。
その時点ではそうだと思います。
もうこれ以上ぞうきん絞っても,水は出ないというふうに思っていたんです
ね。
あとはその後の時代環境,開発事業を取り巻く環境によっては,また
違うそれ以上のものが出る場合もあるかと思いました。
過去の負の遺産としては,もうすべて解消したというふうに考えたわけです
か。
できるだけその時点で想定できるものとしては解消したと思ってお
ります。
思っていたけども,平成15年3月の経営構造改革3ヵ年計画,あなたはもう
社長やめたわけですけども,そこでは3000億円さらにまた特損が出た。
海外開発事業については930億円の特損が計上された。それは御存じです
ね。
私は,平成15年度でどのような処理をしたのかは全く知る立場にあ
りませんでした。
平成13年度の処理に携わった社長さんとして,平成15年3月にまた乾い
たぞうきんから水が出たというような話ですけども,これはどういうふうに
受けとめましたか。
私はよくわかりませんが,平成13年から平成15年の間に損失が発
生したものもあれば,また平成15年のとき移行した会社等にできる
だけ負担のないような格好で清算したのではないかとも,よくわかり
ません。そういう,ただ私の推察を聞かれれば,そのような勝手な推
察をさせていただきます。
甲第36号証の2ページ目を示す
あなたは,もう退任された後の話ですけども,平成15年の計画ですけども,
その中に「「過去・現在・未来」の3つの不安要素から脱却」とありますね。
過去ということについては,その次の文章で,「多額の有利子負債と資産の
含み損について,いわば「過去に対する不安」,」というふうに書いてありま
すね,この計画が立てられた目的として。そうすると,あなたの平成13年
の計画のときに,過去に対する不安はもう解消したわけじゃないんですか。
・・・・・。
御存じでしょう,この計画は。
いや,見ておりません。私は,退任した時点から一切経営は参画して
おりませんし,意見を申し入れることもしておりません。
全然もう熊谷組とは縁を切ったということですか。
縁は切っておりません。それぞれいろんな依頼についてはこたえてお
りますが,経営に関しては一切退いております。
乙第9号証を示す
乙第9号証は,もちろんあなたの方が中心になって立てられた計画ですね。
はい。
経営革新中期計画。
はい。
計画革新中期計画に基づいて,これは9ページ目に経営革新中期計画(業績
計画)載っていますね。
はい。
これは実現したんですか,この計画というのは。
平成10年度,平成11年度は,まあまあの堅調なあれでしたけれど
・・・。
いや,計画と比べて実績はどうでしたか。ここに載った計画と比べて。
あるものは達成し,あるものは達成していない。
そうしたら,具体的に聞いていきます。これは経営革新中期計画,平成9年
9月につくられましたね。
はい。
そうすると,平成10年3月の営業利益は損益計画によりますと340億円
の予定していますね。
はい。
これは実現しましたか。実績は244億円なんです。もうこの時点で発生し
ていますよね。
営業利益は達成していないです。
だから,計画立てて半年後の平成10年3月の計画からもう実現していない
ですね,営業利益は。
はい,営業利益は未達だったです。
そして,経常利益についても300億円を予定していますけれども,実際は
155億円だったんです。これも未達ですね,当たり前の話ですけども。
はい。
その後の計画も全部未達でしょう。どこか達成したところありますか,あな
たの御記憶でこの計画は。もともと絵に書いたもちだったら,そんなことは
余り認識されていないかもしれませんけれども,当然この計画と照らし合わ
せながら,毎年の少なくともあなたが退任されるまでの間は確認していった
と思うんですけども。この計画が実際に営業利益,経常利益あるいは当期利
益の関係で達成した期がありますか。
一般管理費の削減等は成果…。
いや,そんなこと聞いていない。今言っているの私は営業利益と…。
いや,これも重要な経緯…。
いや,私が聞いているのは,そちらで先生の方がまた聞くと思います。営業
利益と経常利益と当期利益で,そういうレベルで考えた場合どうですか。
未達の部分があったと。
みんな未達ですね。
はい。
しかも,計画が立てられて6か月後の平成10年3月期でも全く未達でした
ね。
はい。
乙第9号証を示す
それと,あと経営革新の中期計画,この計画を見ますと,特別損失について
寸は国内,国外とも61期の計画以降は全くゼロですね。ないものとして見込
んでいますね。
はい。
これは,全然もうこの計画を立てた時点で,平成12年9月の時点では,も
う海外でも国内でも特別損失,海外事業の損失とか,国内の債権の貸し倒れ
とか,そういうものは,あるいはたな卸不動産の評価減とか,そういうこと
はもう生じないものと考えてこの計画立てられたわけですか。
はい,この時点ではそうですけれど,我々とすると積極的に悪いもの
が出たものはどんどん処理していっております。
だけども,あなたの会社にとっては,この特別損失,要するに含み損がどれ
だけあるかどうかというのは現実の問題ではなかったんですか。もう脳天気
に,これはゼロということで,そんなことを考えたわけ。
計画では,先ほど申し上げたように,この時点では開発事業計画を継
続するということで,特損をとる必要もありませんでしたし…。
もう特損は,将来全然生ずる可能性はないというふうに,もう10年計画で
も考えていたんですか。
これは,あくまで計画でありまして,ある程度のバッファーというも
のは持っております。このとおりぴったり数値を出すということが経
営ではありません。
だから,ある程度のバッファーって,その後出た特損だけでも1兆円近いで
しょう。
はい。
そんなことは,もう夢にも思っていなかったわけですか,この計画を立てた
当時は。
61期,62期,この経営革新中期計画においては,先ほど申し上げ
ましたように,事業を継続していくと,新しい会計制度ではなかった
ですから,大きな特損をとる必要は全くなく,通年で出てくる事業損
失をとっていけばいいという考えでした。
じゃ,過去に対する不安というのは,この時点ではもう全然ないと。バブル
当時の先ほど言っているような過剰投資による損失が生ずるということは
ないというふうにお考えだったわけですね。
大変失礼なんですけれど,やはり経営やっている者として,これだけ
厳しい状況で,全く不安がないということに関しては一言,常に経営
はあらゆる不安を持ちながらやっております。
としたら,その当時の海外事業でどういう状況になっているか,国内事業で
どうなっているか,そういうことを調べれば,当時の状況はわかるでしょう。
それにどのぐらい生ずるかもしれないというのは。
いや,特損については,先ほど申し上げましたように,全社員各事業
の経営改善に当たっておりまして,その成果も出ておりますので,特
損を平成12年時点までは大きくとる必要はありませんでした。
大きくって,ゼロですね。
計画ではそうですけれど,実質は出てきた利益によって積極的に特損
処理はしております。
甲第42号証を示す
これらの書類は,枝番がありますけれども,これは取締役会で議案として上
げた議案内容ですね。
はい。
取締役会の議事録に添付された書類であることは御存じですね。
はい。
それぞれの右上に記載された日に開催された取締役会の議案として上程さ
れた議案内容ということですね,海外事業についての。
はい。
甲第42号証の4を示す
それぞれの事業がいつから始まった事業かというのは,みんな書いていない
部分も多いんですけれども,例えばこれを見ますと,開発概要の欄に営業開
始日が1990年と書いてありますね。
はい。
1990年4月から始まったこの事業については,最終的には清算して,そ
れを関係会社償却損という形で計上したんでしょうね,これ。
はい。
その損失額が一番下から5行目の235.7億円の損失という形ですね。
はい。
そういうふうに考えてよろしいですね。
はい。
そうすると,1990年から営業したけれども,どんどん,どんどん事業と
してうまくいかなくて,最終的に平成9年の段階でもう清算したと。それに
よって損失が235億円生じたということですね,この事業によって。
はい,これ説明させていただけますか。
いや,いいです。この文章から読める限りで説明すると,そういうことにな
りますね。
はい。
甲第42号証の6を示す
それから,例えばこのアデレードの駅の再開発事業,これはいつぐらいから
事業は開始したんですか。事業を開始した時期は,あなたの御記憶ではわか
りませんか。
はい,ちょっとわかりません。
甲第42号証の7を示す
そうすると,これは開発概要のところで1991年3月から営業を開始した
ということですね。
はい。
事業名称は,「25ベッドフォード」開発事業。
はい。
これも今言ったように,結果的に言えば85億円の清算によって損失が出た
ということですね。
はい。
大体これはほかのもあるんですけど,全部一々聞きませんけれども,皆時期
的には営業が開始した時期というのは昭和50年代後半以降の物件ですか,
みんな。オーストラリアですから。
いろいろあると思うんですけれど…。
あるけれど,全体として。
はい。ちょっと言わせていただきますと,この開発事業というのはあ
くまで国内と異なっておりまして,まず土地,権利の取得をして,そ
れから事業計画で,できるだけ採算の大きいような事業計画をつくっ
て,そして事業資金を入れて建設し,そしてテナントを入れて,テナ
ント料を最大限にして…。
だから,その事業を開始したのはいっごろの時期かといったら・・・。
事業開始いろいろあります。
違いますけども,おおよそ。ここに上がっているオーストラリアを中心とし
た開発事業ということで見た場合は,皆昭和50年代の後半以降に始まって
いる分ですね。
千九百九十三,四年ごろまでですか。
1993年とか1994年ぐらいが一番最後に営業を開始した。
はい。事業というのは,ですから平成12年も事業としてはやってお
ります。
そうですけど,営業が開始することになったら,要するにちょうどバブルの
時期前後ですね。
はい。営業開始というのは,どういうお言葉でお使いになっています
か。
ここであなたの議案の内容で書いている営業開始というのはどういうふう
にお使いになっているんですか。
私が使っておりますのは,ほぼ工事完了して,それからテナントを集
める努力,コスト削減努力…。
裁判長
営業開始の時期の定義を聞いているだけです。
松丸代理人
だから,完成して入居を始めた時期というふうに考えてよろしいですね,そ
ういうテナントや何かの物件でしたら。
テナント募集もその営業開始時期に入っています。
そうすると,その数年前に建設が始まっているということでよろしいですね。
はい。
阪口代理人
ちょっと先ほどあなたの質問の中で答えてくれなかった部分があったんで
すけど,日建連から,いわゆる十日会からどういう内容でだれが要請してき
ているというのは,あなたは全くわからないわけですね。
わかりません。
じゃ,日建連全体が何億円を国民政治協会にすると,その総額もあなたの方
は聞いていないわけですね。
具体的には聞いておりません。後で大体このぐらいの額で,このぐら
いしたという話は…。
いや,献金する前に,あなたが決裁する前の話を聞いているんです。
それはありません。
献金する時期ですけれど,時期についても,これはもうあなたは日建連は9
月なら9月にするよと言われてきたとおりオーケーと,こういうふうにして
いるわけでしょう。
はい。
献金する時期については,これは日建連が選択しているんですか。日建連が
決めているもんなんですか。それとも,国民政治協会が決めてきているもん
なんですか。
私は,確実な答えは持っておりませんけれど,要請があったものを受
けてやっているから,国民政治協会からの要請に基づいてということ
だと思います。
いや,それはいいですけれど,例えば甲第40号証の3のところで,これは
平成11年の献金を9月13日にしていますけど,国民政治協会から日建連
に対する要請というのは,毎年年の初めにあるんじゃないんですか。
その質問に定かには答えれませんが,別に定期的にこの日というよう
な…。
日にちは別にして。
私には,余り認識はありませんでした。‘…
この平成11年度は何も選挙がないんです。選挙がないから,いつしてもい
いわけですけれども,何で9月にしたかということを私が聞いているんです。
それは,国民政治協会か日建連で決めてきたから,あなたの方が9月13日
にしたと,こういうことだけなんですね。十日会が。
国民政治協会から十日会あって…。
そうすると,何かこのときに日建連は,自民党に対して補正予算を出すから,
やはり早目にこの日建連分として献金しようと,そんな話が出ているんじゃ
ないんですか。
いや,それはないと思います。
ないと,あなたはどないして言えるんですか。十日会の話,あなたは知らな
いとおっしゃっているんだから。
私たちの献金は,具体的な対象を求めて政治献金しておりません。
それは,あなたの説はいいけど,じゃ十日会で9月13日,この9月の日に
やろうと。その後に,9月の末に日建連が補正予算の要求を自民党に対して
やっているんですよ。だから,早目に日建連の要求を聞いてもらおうという
ことで時期を選定したんじゃないんですか。
それは,先生の方の憶測であって,私はわかりません。
じゃ,そうすると毎年毎年しているんだったら,1月であったり,5月であ
ったり,定期的にやったり,別の月,普通はそうしていいはずでしょう。何
でこのときは9月になったり,その前の年は4月であったり,これはだれが
決めているんですか,この選択の時期は。
わかりません。国民政治協会からあくまで十日会に要請にあったもの
について当社は応じております。
そうすると,あなたはその時期などについては考慮しないで,要請があった
から献金したと,こういうことだけなんですね。
はい,それが選挙に関係しなければということでしております。
先ほどあなたが平成10年のときの献金の200万円についても決裁されて
いましたね。
はい。
平成10年3月19日,甲第40号証,3月200万円。これは,何かある
グループだけ,自民党に対して国民政治協会を通して,ある企業だけが何社
か集まって献金しているんじゃないんですか。何か国民政治協会要請を受け
て。
いや,全くそういう話は聞いておりません。
わからない。
はい。
迂回献金じゃないんですか,実際は。
全くそういうことはないと思います。
甲第40号証の1を示す
平成8年1月22日に,熊谷組は275万8000円というのをしているん
です。同じように,2月1日に鹿島建設も275万8000円。そして,青
木建設が3月28日,275万8000円と,こんな3者がぴたっと一致す
る数字を献金しているというのは,JVか何か組んでいて,だれかに対する
献金としてやったんじゃないんですか。いわゆる政治で言われている迂回献
金じゃないんですか。
全くそういうことはないと思います。ただし,これは平成8年度で,
私は詳細は知りません。
それから,日建連からの要求で,平成8年と平成9年について2回に分けて
献金もしていますけれども,同じ日と翌日に。これは,ある一つの部分は自
民党の建設族に対する献金じゃないんですか,族に対する。
いや,全く私はそう思っておりません。
橋本代理人
乙第29号証を示す
乙第29号証で,証人は無配の配当をしない会社でやっても政治献金をする
ということについて,仮に1株につき3円の配当を実施したとしても20億
円以上かかると。2000万円程度の政治献金の支払いが復配をおくらせる
という関係にはないと,こう書いておられるんですが,この件について,こ
ういう考えは取締役会など開いて,そこで決められたという方針なんですか。
違います。
あなたのお考えでおっしゃってください。
私と副社長とでいろいろ協議しておりますが,建設業としてこれは取
締役の総意と私は考えております。
だから,それは一般的な話ですよね。
はい。
こういうことであれば,3年,4年無配が続いても政治献金続けていくとい
うことの理屈になりますわな。そうでしょう。無配当が3年,4年続いても,
政治献金続けていくという理屈にもなりますわね,この考え方なら。わかり
ますか。
・・・・・。
政治資金規正法が赤字決算の会社が3年以上続いたら,政治献金してはなら
ないと決めていることを御存じですか。
仮定の話では答えれませんけれど,経営状況がさらに悪化したりとか,
いろんな場合,経営者としていろんな判断をしなければなりません。
今の判断…。
具体的にあなたが書かれたことを聞いているの。だから,無配の会社が株主
の配当よりも優先して自民党などに政治献金するということについて,企業
のモラルなり社会的責任なりがどうかということについて,きちっと取締役
会を開いて議論するというようなことで検討したことはありませんね。確認
だけです。
そういう特別な一つの案件については議論しておりません。
高木代理人
献金の稟議書があなたに上がってきたときの話で,1審原告代理人の質間で
は,その献金の要請が国民政治協会からの要請か,十日会の要請か,日建連
の要請か,質問の中で混乱していたように思うんですけども,その稟議書の
中ではどこからの要請というふうになっているんですか。
国民政治協会です。
その要請の中で,献金の時期の特定はあるんですか,ないんですか。
献金の時期の特定は,私は記憶に定かでありません。あったかどうか,
ちょっと定かでありません。
裁判長
強制評価減というのが平成13年3月期から実施されましたでしょう。
はい。
それで,そういうことを見込んで,平成12年9月に計画を立てましたでし
ょう。
はい。
これは仮定の話だけども,強制評価減をしなさいという監査の取り扱い,あ
の方針に従って,あなたが社長になられた平成10年のときに評価をし直し
たら,あなたの会社の状況はどうだったのかなということはお考えになった
ことありますか。
ありません。
あなたのずっと説明だと,この強制評価減ということだった監査の扱いの方
針によると,継続的な事業というのも全部解体して,個々の不動産は不動産
ということで,いわゆる時価ということで個別の不動産をそのときの価格で
評価し直すんだと。
はい。
そうすると,平成12年のときには3分の1だとかいう数字になったりした
ということもあったわけでしょう。
はい。
あなたの9月の計画立てたときにです。
はい。
もう2年ぐらい前の,あなたが社長になられたときというのは,そういうふ
うな個別の不動産に解体したら,価格はどのぐらいだったのかなということ
などは全然あなた自身はお考えにならなかった。
はい。私どもは,あくまで開発事業を継続して,その後…。
それは,さっきの説明のとおりね。
はい。それをいかにして長期に所有できるかということで,最大の努
力を保有コストの削減ということで展開しておりました。
あなたがされなかったことはいいんだけども,会社全体で今これ解体して処
分することになったら幾らになるかというふうなことなどは検討する機会
はなかったんですか。あなたが杜長に就任されてすぐのころです。
平成12年9月で処分したものについては…。
平成12年までじゃなくて,平成12年の前の話。あなたが社長になられて
からすぐのころ。
ですから,平成9年のとき処分した先ほどのホワイトフライヤーズと
か,ああいうものについては処分したらどうなるか,またこれをもう
ちょっと継続したらどうなるか,そしていっごろロンドンのマーケッ
トは回復するかとか,そういう検討は大いにしました。
そういう検討の結果,もう処分してしまった方がいいというものは平成9年
の時点で処分の対象にしたわけね。
はい,そうです。
残すというものも,じゃそのときには残せるか残せないかという観点からで
は検討しているわけね。
はい。
一応残すことにしたものは,将来の先行きの関係などもあって,やっていけ
るだろうということで残したと,こういうふうに聞けばよろしいの。
そのとおりです。あくまでその対象として,先ほど申し上げました保
有コストがかからないということを対象にしました。
もう一つ,日建連が政府とか自民党とかに補正予算の関係だとか,あるいは
予算自体の内容などに関連していろいろ要請行動をすると,あるいはあなた
の言葉で言うと政策提案をすると,こういう活動をしておることはよく御存
じですよね。
はい。
日建連がそういう要請行動をしたり,政策提案をしたりするということにつ
いては,熊谷組も構成員だから何らかの形で関与しているわけでしょう。
はい。
あなたの先ほどの説明からすると,第1グループに属するわけだから,かな
りの影響力が日建連の中でおありになったんじゃないかなと思いますけど,
熊谷組としては。
はい。
そういうことですよね。
はい。
ということは,だから日建連が要請行動をする,政策提案をするということ
に関しては,熊谷組の意向も反映しているわけでしょう。
結果的に賛成しているということは,そういうことになります。
そうですよね。
はい。
何かあなたの方のさっきずっと話聞いていると,何かよそごとみたいな話さ
れるから,そうじゃなくて,熊谷組もやっぱり構成員の一人として,そうい
う要請行動をするについては,積極的か消極的かはともかくとして,意見形
成に役割を担っておられて,その立場も踏まえて意見をつくっていらっしゃ
るわけですよね。
はい。
そういうことですよね。
はい。
熊谷組としては反対だけども,日建連としてはこういう政策提案したんだと
いうふうなことなどは過去にはあったんですか。そういうことはなかったで
すか。
ないと思います。賛成していたと思います。
それで,これはちょっと際どい話だけど,結局日建連の一員として,そうい
う政策提案したり,要請行動をしたりしますでしょう。
はい。
その時期は,離れていたり接着したりいろいろあると思うけども,政治献
金もしていますよね。
はい。
そういうこととの関連で外から見ると,そういう政策提案とか要請に係る内
容を実現するための一助として,そういう政治献金をしているんじゃないだ
ろうかと,こういうふうに受け取られている向きがあるかどうかという,新
聞なんかの関係で,さっき質問されましたよね。
はい。
そういうふうな向きがあることは知っていますと。
新聞等でそういうことを議論されているという。
そういうお答えでしたよね。
はい。
その点はどうですか。あなたが熊谷組の立場であれば別として,熊谷組から
離れて外から見ていると,そんなふうに見えるのかなと思ったことはないで
すか。
今回の裁判で,そういうことは感じました。ですから,そこらをやは
りもっともっと国民に説明していかなければいけないんじゃないか
と思っています。
政治上の圧力団体というか,政治活動に対して,政策の形成に関していろい
ろ働きかけをして,自分の方の団体としての提案に沿うような形の政策を実
現をしてほしいということをロビイストの活動,ロビー活動というふうに言
いますよね。
はい。
そういうのは御存じですね。
はい。
日建連というのは,そういう活動をされているんだということにはならない
んですか。
そうではないと思います。いろんな提案等,例えば新しい法律が決ま
る。それに対して十分建設産業のことが考えられていない。そういう
問題に対して,こういう点を考えなければいけないんじゃないか。そ
れとか,例えば経済が非常に不況が続いている場合,たしかIT産業
をもっと充実すれば,余り従来の土木,公共工事は効果がないとかい
うような話もありますけれど,やはりすぐの対策としては,特に国民
にとって必要不可欠な社会インフラをやったら効果がもっと高くな
るんじゃないかというようなことで提案していることであって,それ
を受け入れるかどうかということは役所の方,また政党の方で…。
最終的には,要請を受けた方が決めることだけども,でも要請する以上は,
あるいは政策提案する以上は,自分たちの政策提案なり要請に係る内容とい
うのは正しいと,いいことだと思っていらっしゃるわけでしょう。
はい。
だから,ぜひ取り入れてほしいと思って,要請なり政策提案するわけでしょ
う。
はい,それはそうです。
そういう活動をどういうふうに定義するかは別にして,日建連としてはそう
いう活動をされているということは,それでいいですね。
はい。
乙第9号証の1ページ目及び乙第23号証を示す
それから,ちょっとこれは記録の関係で,乙第9号証の1ページ目をちょっ
とごらんいただけますか。ここに「平成5年6月に「体質改善計画」」とい
うふうに出ているでしょう。
はい。
これで平成5年6月となっているんですけど,乙第23号証,これには平成
5年7月となっているでしょう,1ページ目。
はい。
これは,同じものを指していらっしゃるの。
同じものです。
6月と7月だから,別の計画というのはないですよね。
はい。
そうすると,この乙第9号証の1ページ目に6月とあるのは,正確には7月
なんですか。それとも,6月につくって,印刷したのが7月という意味なん
ですかね。そこはよくわからない。
一緒のものであることは間違いありません。
6月と7月に別の計画があるということはないですよね。
ないです。
甲第41号証の5の23ページを示す
そこにも平成5年6月というのが出てきませんか。
そうですね。
それも一緒ですね。
一緒です。
同じことですね。乙第23号証のことを指しているわけですね。
はい。
以上