政治資金オンブズマン

森山裕・西川公也・宮腰光寛、江藤拓議員らを刑事告発しました!

告発理由

「週刊朝日」(2016年7月8日号)がスクープした「森山農水相、西川元農水相ら自民党3議員 TPP交渉の裏で現金授受」に関して、鹿児島5区選出の森山裕衆議院議員、栃木2区選出の西川公也衆議院議員、富山2区の宮腰光寛衆議院議員、宮崎2区の江藤拓衆議院議員を落選対象衆議院議員の第16・17・18・19号として7月5日付で東京地方検察庁に政治資金規正法違反で告発しました。

 

告  発  状

 

                                                2016年7月5日

東京地方検察庁 御 中

                                     告発人上脇博之ら11名代理人                     弁 護 士    阪  口  徳  雄

(別紙代理人目録記載の弁護士30名代表)

 

森山裕大臣ら5名の政治資金規正法違反告発等事件

 

当事者の表示 - 別紙当事者目録記載のとおり

 

告発の趣旨

被告発人栗木鋭三、同森山裕、同西川公也、同宮腰光寛、同江籐拓の各行為は、以下の告発事実記載の法条にそれぞれ違反するので早急に捜査の上、厳重に処罰していただきたく告発する。

 

第1 告発事実

1 告発事実1(「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」違反)

被告発人栗木鋭三は、日本養鶏協会の会長であった者であるが、その会長であった時の自民党の環太平洋経済連携協定(TPP)議員団は、2015年7月のハワイでのTPP会合のとき(もしくはアトランタでの会合に行く前日の2015年9月28日頃に議員会館で)、「公職の候補者」である被告発人森山裕、同西川公也、同宮腰光寛、同江籐拓の計4名の自民党国会議員に対し(議員会館の各事務所で)、TPP交渉で「お世話になります」と言って各議員のTPP交渉についての政治活動に関する寄付をそれぞれ20万円ずつ、合計80万円を渡し、

もって、政治資金規正法第26条第1号(第21条の2第1項。公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)に違反したものである。

 

2 告発事実2(公職の候補者の寄附の受領の禁止違反)

被告発人森山裕、同西川公也、同宮腰光寛、同江籐拓は、「公職の候補者」であるが、2015年7月のハワイでのTPP会合のとき(もしくはアトランタでの会合に行く前日の2015年9月28日頃に議員会館で)、当時日本養鶏協会の会長であった被告発人栗木鋭三から、TPP交渉で「お世話になります」と言われ、同人らのTPP交渉についての「政治活動」に関してそれぞれ「政治活動」に関して金20万円の寄付を受領し、

もって政治資金規正法第26条第3号(第22条の2)に違反したものである。

 

第2 罪名及び罰条

告発事実1 被告発人栗木鋭三の行為は、政治資金規正法第26条第1号(第21条の2第1項。公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)

告発事実2 被告発人森山裕、同西川公也、同宮腰光寛、同江籐拓の行為は、政治資金規正法第26条第3号(第22条の2)公職の候補者の政治活動に関する寄附の受領の禁止)

 

告発の理由

 

1 政治資金規正法の定め

政治資金規正法は、第21条の2第1項で、「何人も、公職の候補者の政治活動に関して寄附をしてはならない。」として「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」を定めている。

同法は、第22条の2で、「何人も、第21条の2第1項……に違反してされる寄附を受けてはならない。」として「公職の候補者の政治活動に関しての寄附の受領の禁止」を定めている。

同法は、第26条で、「第21条の2第1項……の規定に違反して寄附をした者」(第1号)も、「第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者」(第3号)も、「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と定めている。

 

2 告発事実について

(1)被告発人について

「日本養鶏協会」は、1948年に設立され日本の鶏卵産業の発展を支えてきた歴史である一般社団法人である。

被告発人栗木鋭三は、大手畜産食品メーカーである「クレストグループ」の代表取締役会長であり、2015年6月に「日本養鶏協会」の2度目の会長に就任していたが、今年6月16日、東京・大手町のビルで開かれた同協会の定時総会で、本件事件の責任を取り、突然辞任を申し出た人物である。

森山裕は、自民党所属で鹿児島県5区選出の衆議院議員であり、2015年の本件事件当時、自民党の環太平洋経済連携協定(TPP)対策委員会の委員長(2014年9月29日から2015年10月7日まで)で、2015年10月7日に任命された農林水産大臣である(森山裕HP)。

西川公也は、自民党所属で、2012年12月の総選挙では栃木県第2区選出で、2014年12月の総選挙では比例代表選出の衆議院議員であり、2013年には自民党のTPP対策委員会長を務め、本件事件当時、農林水産大臣であった(西川公也HP)。

宮腰光寛は、自民党所属で富山県2区選出の衆議院議員であり、農林水産副大臣(第3次小泉内閣、第3次小泉改造内閣)と衆議院農林水産常任委員長(第168~169国会)を務めた経験もあり、本件事件当時、自民党のTPP対策委員会の委員長代理兼事務総長だった(宮腰光寛HP)。

江籐拓は、自民党所属で宮崎県2区選出の衆議院議員で、農林水産副大臣(2012年12~2014年9月)や衆議院農林水産委員長(2014年9月~12月)を経験し、「TPP交渉における国益を守り抜く会」会長(2014年10月~)、一般社団法人「日本家畜商協会」会長(2015年6月~)、「自民党農林水産戦略調査会」筆頭副会長(2015年10月~)も務めている(江藤拓HP)。

 

(2)告発事実1(「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」違反)について

栗木鋭三は、2015年7月に開かれたTPP交渉のハワイ会合に、自民党TPP交渉派遣議員団に随行した際に(もしくはアトランタでの会合に行く前日の2015年9月28日頃に議員会館で)、森山裕、西川公也、宮腰光寛、同江籐拓の計4名の自民党国会議員に、TPP交渉で「お世話になります」と言って、20万円ずつ、合計80万円を渡し、

もって、政治資金規正法第26条第1号(第21条の2第1項。公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)に違反したものである。

なお、本件事件をスクープ報道した「週刊朝日」(2016年7月8日号)によると、各20万円を渡した時期は、2015年7月に開かれたTPP交渉のハワイ会合のときと報じられているが、受け取った議員側は、アトランタでの会合に行く前日の2015年9月28日頃と説明している。また、上記計80万円について栗木鋭三は、今年2月に開かれた「日本養鶏協会」理事会において、「昨年7月に開かれたTPP交渉のハワイ会合へ、自民党TPP交渉派遣議員団に随行しました。それで、『自民党の先生方に、協会としてお世話になるので合計で80万円を渡しました』」と述べるとともに、「議員に渡したカネを自腹で立て替えている」と説明し、「80万円のうち、20万円は私が出します。残りの60万円を理事のみなさんでご負担をしてもらえませんか」と発言したところ、「養鶏協が政治家に現金を手渡したら、下手をしたら贈収賄ですよ。相談もなく栗木会長の独断ですが、ヤバいんじゃないか」と危惧する声が次々とあがり、激しい反発をかったものの、それらを無視し、「自民党の国会議員にはお世話になるから」と、政界工作としての資金の提供を重ねて要請したという。同理事会には、理事などの役員が15~20人、事務方も10人ほど出席していたという。

鶏卵をめぐっては、TPP合意で安価な外国産の輸入が進み、国内業界が打撃を受けるとされていたので、被告発人栗木鋭三は、TPP交渉において日本が関税撤廃の対象外とするよう求めた「重要5項目など」に含めるよう、政界に働きかけていたものであろう。

 

(3)告発事実2(「公職の候補者の政治活動に関する寄附の受領の禁止」違反)について

森山裕、西川公也、宮腰光寛、江籐拓は、アトランタでのTPP会合に行く前日の2015年9月28日頃に議員会館で、栗木鋭三から、TPP交渉で「お世話になります」と言われ、それぞれ20万円の寄付を渡され、それを受領し、

もって政治資金規正法第26条第3号(第22条の2)に違反したものである。

なお、森山裕、西川公也、宮腰光寛、江籐拓の4名は、いずれも、昨2015年9月末の各20万円の受領を認めるとともに、「すでに返金した」旨、マスコミの取材に回答しているが、返金は、その説明を信用したとしても、早くても今年1月または2月であり、これは決して「預り金」とは評しえない。

森山裕は、「餞別のようなものだ」と認識した旨、マスコミの取材に回答しているので、20万円の寄付が政党支部または政治団体への寄附ではなく、同人個人への寄附であったと認識していたものであると認められる。

上記4名が、いずれも「返金した」旨、回答しているのは、各自の政党支部または政治団体の2015年分政治資金収支報告書に記載してなかった違法な裏金だったからであろうと思われるが、「返金」しても、本件犯罪の成立の有無に関係ないことは言うまでもない。

 

最後に

西川公也は事件当時の農水大臣であり、大臣が外国との鶏卵問題に関する交渉に関する職務権限を有しているは明らかであるので、収賄罪の可能性がある。その他の3名の国会議員も各20万円の受領は、TPP交渉における外国との交渉の職務権限がなかったとしても、当時、関税が即時に撤廃されるなど鶏卵業界にとって厳しい大筋妥結内容になったあかつきには、業界の救済のための補助金の交付を更に拡大の要請の趣旨を含んでいる可能性が高いので、その場合は贈収賄事件へと発展する可能性がある。

御庁におかれましては、本件事件の重大性を認識して、厳正な捜査を尽くし、本件を立件していただきたく告発する次第である。

 

証  拠  目  録

甲第1号証   「週刊朝日」(2016年7月8日号)の記事    1通

甲第2号証   「週刊朝日」(2016年7月15日号)の記事   1通

甲第3号証2号証TPP交渉 農林水産分野の大筋合意の概要(農林水産省) 

甲第4号証   2016年2月5日付「鶏鳴新聞」電子版

 

添  付  書  類

1 甲各号証写し                               各1通

2 委任状                         11

 

 

 

 

Pocket